報道発表資料

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1998年01月29日

未規制自動車騒音実態調査報告書について

 環境庁大気保全局に設置された「未規制自動車騒音実態調査検討会」(座長:黒田道雄成蹊大学工学部教授)において、騒音規制法に基づく騒音の大きさの許容限度が定められていない特殊自動車(ホイールクレーン、フォークリフト等)から発生する騒音や自動車の付属装置(冷蔵冷凍装置等)から発生する騒音(以下「未規制自動車騒音」という。)の実態等を調査してきたところであるが、今般「未規制自動車騒音実態調査報告書」をとりまとめた。
 この報告書では、

特殊自動車は、トラック等に比べて公道走行時間はかなり少ないが、自動車単体騒音レベルは、車種により差があるものの全般的に高い傾向にあった。
トラック等の規制対象自動車が平成4年及び7年の中央環境審議会等の答申に基づく許容限度設定目標値を達成した場合、ホイールクレーンの道路交通騒音に対する寄与度(騒音エネルギーの比率)は、2車線道路で6.8%から10.2%(+3.4%)と現状よりも大きくなる。
観光バス(サブエンジン式冷房装置付)と冷蔵冷凍車(サブエンジン式冷蔵冷凍装置付)の付属装置の作動による騒音レベルの上昇分を実測したところ、定常走行騒音及び加速走行騒音とも冷蔵冷凍車の方が大きかった。
エアブレーキ式の大型車の圧縮空気騒音を実測したところ、最大レベルは94.3デシベルであった。
こと等が示されている。
 環境庁では、これを受けて、今後、これら未規制自動車騒音に係る規制の必要性等について検討を行うこととしている。

1. 経緯等
 平成7年2月、中央環境審議会騒音振動部会自動車騒音専門委員会において、「今後の自動車騒音低減対策のあり方について(自動車単体対策関係)」がとりまとめられた。
 本報告では、トラック等の規制対象自動車が加速走行騒音、定常走行騒音及び近接排気騒音について、それぞれ許容限度設定目標値を達成することにより、騒音の低減が図られると、現在、騒音規制法に基づく騒音についての許容限度が設定されていない特殊自動車からの騒音や空調装置、冷蔵冷凍装置等から発生する騒音の影響が相対的に増大してくることが考えられることから、今後、これらについての騒音の実態等の調査を行う必要があるとされている。この報告を受け、平成7年度から「未規制自動車騒音実態調査検討会」を開催し、検討を行ってきたところであり、今般、この調査結果をとりまとめた。

【未規制自動車騒音実態調査報告書の概要】

{1} 特殊自動車の公道走行実態調査結果
1) 特殊自動車が、公道を走行するのは作業現場間の移動が主であり、走行時間、頻度は一般の自動車に比べてかなり少ない。しかしながら特殊自動車の公道走行時の騒音が問題となる時間帯は、主に早朝や夜間の時間帯に住宅地を走行する場合などである。
2) 特殊自動車の最高速度は50km/h未満であり、公道走行時における平均走行速度は、ホイールクレーンでは30~40km/h、その他の車種では、10~35km/hと一般の自動車に比べて低速である。

{2} 特殊自動車の騒音実測調査結果
 特殊自動車の中で、公道走行の機会が比較的多いホイールクレーン及びフォークリフト各1台の騒音試験を実施し、その試験結果を他の車種(乗用車等)の騒音実測値と比較した。また、特殊自動車メーカーから入手した騒音諸元値(諸元表に記載された騒音値又は社内測定値)データの分析を行った。
1) 定常走行騒音レベル(一定の速度で走行する際の騒音)(図1参照)
ホイールクレーンの騒音試験値は、規制対象の中型車(トラック、バス)、大型車の騒音試験値の最大値よりも3dB~4dB(A)程度高い。また、フォークリフトの騒音試験値は、小型車の騒音試験値と同レベルである。一方、騒音諸元値データでは、全般的に中型車、大型車の騒音試験値よりも騒音レベルが高い車種が多い。
2) 加速走行騒音レベル(一定の速度から急加速した際の騒音)(図2参照)
ホイールクレーンの騒音試験値は、中型車、大型車の騒音試験値の中間程度の騒音レベルであり、フォークリフトの騒音試験値は、乗用車の騒音試験値の最大値又は小型車の騒音試験値の中間程度と同レベルである。一方、騒音諸元値データでは、ホイールクレーンは、大型車の現行規制値を上回るものが見られる。
3) 近接排気騒音レベル(停車時に一定回転数の原動機から発生する騒音)(図3参照)
ホイールクレーンとフォークリフトの騒音試験値は同レベルで、乗用車の騒音試験値より9dB(A)高く、大型車の騒音試験値よりも1dB(A)低い。また、定常走行騒音と同様に、建設省において「低騒音型」の型式指定を受けた建設機械は、標準型に比べて騒音レベルが低い傾向が見られる。

{3} 特殊自動車(ホイールクレーン)の道路交通騒音に対する影響
 ホイールクレーンの市街地走行パターン調査と車種別交通量実態調査結果(注)を基に、トラック等の規制対象自動車が平成4年及び平成7年の中央環境審議会等の答申に基づく許容限度設定目標値を達成した場合等におけるホイールクレーンの道路交通騒音に対する影響(寄与度等)をコンピュータシミュレーションにより推計した。
 ホイールクレーン単体の加速走行騒音レベルが騒音諸元値の平均値84.4dB(A)であって、ホイールクレーンの交通量が現状どおりである場合の道路交通騒音に対するホイールクレーンの寄与度(騒音エネルギーの比率)は、2車線道路で6.8%、4車線道路で2.4%となるが、同条件で規制対象自動車が平成4年及び7年の中環審答申による許容限度設定目標値を達成した場合、ホイールクレーンの寄与度は、2車線道路で10.2%(+3.4%)、4車線道路で3.7%(+1.3%)となり、ホイールクレーンの道路交通騒音に対する影響は大きくなる。(関連図あり。別添のとおり)
注) 車種別交通量実態調査:2車線道路(茨城県藤代町付近の国道6号線)と4車線道路(千葉県柏市付近の国道16号線)における14分間の車種別交通量及び騒音レベルを調査した。
  2車線道路総交通量:440台(うちホイールクレーン3台)
  4車線道路総交通量:894台(うちホイールクレーン2台)
{4} 自動車の付属装置の騒音実測調査結果等
 観光バス(サブエンジン式冷房装置付)と冷蔵冷凍車(サブエンジン式冷蔵冷凍装置付)の付属装置の作動による騒音レベルの上昇分は、冷蔵冷凍車の方が大きく、定常走行騒音で2.4dB(A)、加速走行騒音で1.1dB(A)であった。また、当該車両(エアブレーキ式)の圧縮空気騒音の最大レベルは、観光バスでフットブレーキ音(注1)が83.6dB(A)、冷蔵冷凍車でエアドライヤ音(注2)が94.3dB(A)であった。(図4・5参照)
注1) フットブレーキ音:主ブレーキ作動後にブレーキバルブ、リレーバルブ等から圧縮空気が大気中に排出されるときに発生する排出音
注2) エアドライヤ音:エアタンクの圧力が所定圧以上となりエアドライヤから圧縮空気が大気中に排出されるときに発生する排出音
{5} 騒音低減対策等に関する関係団体からのヒアリング結果
 特殊自動車及び自動車の付属装置に関係する業界団体から騒音低減対策の現状等についてヒアリングを行い、その結果をとりまとめた。

{6} }特殊自動車等の諸外国における騒音規制の動向
 諸外国における特殊自動車の騒音規制には、環境騒音に配慮する車外騒音規制(走行騒音・作業騒音)と、オペレータの聴力保護に配慮する車室内騒音規制がある。
 EU(欧州連合)加盟国であるイギリス、ドイツ、フランス等においては、EUの騒音関連指令を採用し、農林業用トラクタ及び土木機械は車外騒音と車室内騒音について騒音規制が実施されている。また、自動車の付属装置では車両総重量が2.8トンを超える車両について、圧縮空気騒音試験がEC指令で規定されている。さらに、ドイツ、スイスでは、エンジンブレーキ騒音の試験方法が規定されている。

{未規制自動車騒音実態調査検討会検討員名簿}
(順不同、敬称略)
  氏名 所属
座長 黒田 道雄 成蹊大学工学部教授
検討員 橘秀 樹 東京大学生産技術研究所教授
田中 丈晴 運輸省交通安全公害研究所
山本 貢平 社団法人日本騒音制御工学会
倉橋 雅義 社団法人日本自動車工業会
  (山本 辿) (平成7年12月まで)
高橋 浪夫 社団法人日本自動車車体工業会
吉田 雄彦 社団法人日本産業車両協会
福本 壽 社団法人日本建設機械工業会
  (中山 源弘) (平成8年3月まで)
中林 清 社団法人日本農業機械工業会
  (瀧澤 保男) (平成9年6月まで)

図1~図5は省略

添付資料

連絡先
環境庁大気保全局自動車環境対策第二課
課 長 :三宅 哲志(内線6550)
 補 佐 :野津 真生(内線6552)
 担 当 :上岡 一雄(内線6555)