報道発表資料

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2000年02月15日

上関原子力発電所他に係る環境庁長官意見の提出について

  本日、環境庁は、上関原子力発電所他計4件の発電所立地計画について、環境 影響評価法/電気事業法(注)に基づく環境庁長官意見を通産省に提出した。意見 の主な内容は、以下のとおり。

    I. 上関原子力発電所1,2号機(山口県上関町)
     新種の巻貝等の貝類・スナメリ・ハヤブサについて調査及び所要の対策等の 実施、温排水影響の適切な監視、海域工事中の濁り防止、事業着工に至るまで の環境の状況の把握等
    II. 福島第一原子力発電所7,8号機(福島県大熊町及び双葉町)
      オオタカについて調査及び所要の対策の実施、温排水影響の適切な監視、海 域工事中の濁り防止、事業着工に至るまでの環境の状況の把握等
    III. 東亜石油(株)エネルギー供給施設(神奈川県川崎市)
      発電用燃料の性状改善、既設製油所での設備投資及び関係会社との連携等に よるばい煙排出量の低減、二酸化炭素の排出抑制対策、冷却塔蒸気の白煙化の 監視等
    IV. コスモ石油(株)四日市霞発電所(三重県四日市市)
      発電所有効煙突高の上昇及びばい煙排出量の低減についてさらなる検討の実 施、窒素・燐の排出削減対策、二酸化炭素の排出抑制対策、冷却塔蒸気の白煙 化の監視等

今後、通産省は、環境庁長官意見を勘案して事業者に対し勧告を行い、事業者 は、これらを踏まえて環境影響評価書を作成することになる。

(注)環境影響評価法の対象事業の一つである発電所は、環境影響評価法の一般則に 従い環境影響評価が行われるとともに、電気事業法において手続の各段階で国が 関与する特例が設けられている。

対象発電所の概要と環境庁長官意見の内容

I.上関(かみのせき)原子力発電所1,2号機

〔概要〕

事業者 中国電力(株) 最大出力 137.3万kW×2基(274.6万kW)
計画位置

山口県熊毛郡上関町

発電方式 原子力(改良型沸騰水型軽水 炉)
用地 約137ha 運転開始 1号機:平成23年3月(予定)
2号機:平成26年4月(予定)
燃料 低濃縮ウラン約50t/年

〔環境庁長官意見の内容〕

1. 計画地及びその周辺においては、学術的に貴重とされているカクメイ科の貝類等の 野生動植物が確認されており、事業の実施に当たっては、以下に掲げる措置を講じ、 自然環境の保全に配慮する必要がある。
  (1) カクメイ科等の貝類やスナメリについては、既存の調査事例が少ないことに かんがみ、追加調査及び事後調査の実施に当たっては、専門家の指導・助言を 得ながら慎重に進めること。 また、自然環境への影響が確認された場合においては、専門家の意見を聴取すると ともに、関係機関と調整し、適切な対策を講じること。
    [1] 計画地及びその周辺において学術的に貴重とされているカクメイ科等に 属する貝類が確認されていることから、埋立予定地及びその近傍のタイド プールについては、引き続き調査を実施した上で予測及び評価を行い、 専門家の意見を踏まえ必要に応じて適切な対策を講じること。また、追加 調査の内容、その結果、評価及び対策を講じる場合にはその内容並びに 事後調査を行うに当たってはその計画を評価書に記載すること。
    [2] 計画地の周辺海域において遊泳が確認されているスナメリについては、 引き続き繁殖期を含め生息状況の調査を行い、専門家の意見を踏まえ必要に 応じて適切な措置を講じること。また、追加調査の内容、その結果、評価 及び対策を講じる場合にはその内容並びに事後調査を行うに当たっては その計画を評価書に記載すること。
    [3] 計画地周辺においてハヤブサの生息が確認されていることから、ハヤブサの 生息状況等の調査を継続するとともに、専門家の意見を聞き、ハヤブサの 生息環境の保全に配慮すること。また、追加調査の内容、その結果、評価 及び対策を講じる場合にはその内容並びに事後調査を行うに当たっては その計画を生息環境に支障を及ぼすおそれのない範囲で評価書に記載する こと。
  (2) 工事中において、新たに希少な動植物が確認された場合は、専門家の意見を 聴取し、現地調査を実施した上で、これらの種の生息、生育環境に対する影響が 最小限となるよう、適切な保全対策を講じること。また、その旨を評価書に記載 すること。
2. 計画地の周辺海域は、閉鎖性が高く一部で水質環境基準を超過している瀬戸内海で あることから、発電所の取放水による水質及び海生生物への影響について、慎重な 検討が必要である。このため、周辺海域の水温、水質及び海生生物の監視において、 発電設備の運転状況を考慮しつつ、取放水量、水温の変化と水質及び海生生物の状況 との関係について検討することにより、影響予測の妥当性を確認し、必要に応じて 適切な対策を講じること。また、その旨、評価書に記載すること。
3. 海域での工事により付加される濁りが10mg/l以上となる場合には、汚濁防止膜の 設置等所要の対策を講じること。また、その旨、評価書に記載すること。
4. 工事に伴い発生する残土について、具体的な処分方法を検討するとともに、その 結果を評価書に記載すること。
5. 本計画については、事業の着工時期が未定であることから、着工に至るまでの期間に おいて、事業実施区域及びその周囲の環境の状況について関係地方公共団体が有する 資料等により把握し、環境の状況が変化している等の場合においては、所要の検討を 行い、必要に応じて適切な対策を講じること。また、その旨、評価書に記載する こと。

II.福島第一原子力発電所7,8号機

〔概要〕

事業者 東京電力(株) 最大出力 138万kW×2基(276万kW)
計画位置

福島県双葉郡大熊町

発電方式 原子力(改良型沸騰水型軽水 及び双葉町炉)
用地 発電所全体で約351ha 運転開始 7号機:平成17年10月(予定)
8号機:平成18年10月(予定)
燃料 低濃縮ウラン約50t/年

 

〔環境庁長官意見の内容〕

1. 計画地近傍において、オオタカの営巣が確認されていることから、事業の実施に 当たっては、専門家の意見を聞き、オオタカの生息状況等について十分な調査期間を 確保しつつ、適切な方法により調査を実施するとともに、オオタカの生息に支障を きたすおそれがある場合には、専門家の意見を聞き、十分な保護対策を講じること。 また、追加調査の内容、その結果、評価及び対策を講じる場合にはその内容並びに 事後調査を行うに当たってはその計画を生息環境に支障を及ぼすおそれのない範囲で 評価書に記載すること。
2. 計画地周辺海域は、本発電所の他に広野火力発電所及び福島第二原子力発電所からも 温排水の影響を重複して受ける海域であることから、発電所の取放水による水質及び 海生生物への影響について、慎重な検討が必要である。このため、周辺海域の水温、 水質及び海生生物の監視において、発電設備の運転状況を考慮しつつ、取放水量、 水温の変化と水質及び海生生物の状況との関係について検討することにより、影響 予測の妥当性を確認し、必要に応じて適切な対策を講じること。また、その旨、 評価書に記載すること。
3. 海域での工事により付加される濁りが10mg/l以上となる場合には、汚濁防止膜の 設置等所要の対策を講じること。また、その旨、評価書に記載すること。
4. 本計画については、事業の着工時期が未定であることから、着工に至るまでの期間に おいて、事業実施区域及びその周囲の環境の状況について関係地方公共団体が有する 資料等により把握し、環境の状況が変化している等の場合においては、所要の検討を 行い、必要に応じて適切な対策を講じること。また、その旨、評価書に記載する こと。

III.東亜石油エネルギー供給施設

〔概要〕

事業者 東亜石油(株) 最大出力 27.36万kW
計画位置

神奈川県川崎市

発電方式 ガスタービン/廃熱回収ボイラー系及 び発電用ボイラー系
用地 約2.9ha 運転開始 平成15年6月(予定)
燃料 副生ガス約31万kl/年 (重油換算)
LPG約2万kl/年 (重油換算)
減圧残渣油約19万kl/年

〔環境庁長官意見の内容〕

1. 計画地周辺地域においては、二酸化窒素及び浮遊粒子状物質に係る環境基準を達成し ておらず、大気汚染防止法の窒素酸化物及び硫黄酸化物に係る総量規制地域及び 自動車NOx法の特定地域に指定されている。このような地域において行われる 本事業については、大気環境への負荷を可能な限り低減する必要があることから、 下記の対策を講じるとともに、当該措置について評価書へ記載すること。
  (1) 発電用燃料について、高カロリーガスに係る硫黄分除去技術の導入及び低カロリー ガスに係る脱硫装置の操業技術の改善等により、より一層の性状改善を図ること。 併せて、技術開発動向を踏まえつつ最新の燃焼技術を導入する等の対策により、 ばい煙排出量のさらなる低減を図ること。
  (2) 既設製油所について、ばい煙処理装置の適切な維持管理と更新等により、排出量の 低減を図ること。特に、窒素酸化物については、排出量が比較的高い水準で推移 していることから、脱硝装置の設置等設備投資を含めた総合的な対策により年間 排出量を低減すること。
  (3) 発電用燃料の供給元となる関係会社との連携により、ばい煙排出総量の低減を図る こと。
  (4) 発電所稼働時にばい煙排出状況を調査し、その結果に基づき、ばい煙に係る実行 可能な管理目標を厳格に設定して運用すること。その際、特にばいじん排出量に ついて現況を上回る場合には、浮遊粒子状物質の前駆物質対策として、発電所及び 既設製油所からの窒素酸化物等ガス状物質低減の総合対策を講じることとし、 さらに発電用燃料の供給元となる関係会社と連携を図りつつ、必要な追加対策を 推進すること。
  (5) 航空法の適用により他の発電所と比較して煙突高が低いことから、高濃度が出現 するおそれがある場合には、地方公共団体の要請に迅速に対応してばい煙の削減等 所要の措置を講じること。
  (6) 排出ガス中及び減圧残渣油中の重金属等微量物質について適切に監視を行うこと。
  (7) 発電所及び既設製油所関連車両の更新時に、低公害車への切替を推進すると ともに、協力会社にも同様の対策を要請すること。
  (8) 監視結果を含む発電所の運転情報について、住民への情報提供を適切に行うこと。
2. 地域環境の現況にかんがみ、運転開始後の浮遊粒子状物質濃度影響について予測、 評価を行うとともに、結果を評価書に記載すること。
3. 燃料及び原動力の選定根拠について、検討過程及び環境影響が実行可能な範囲で できる限り回避され、又は低減されているかに係る評価結果を含めて、評価書に 記載すること。
4. 道路交通騒音に関しては、昨年施行された騒音に係る環境基準を踏まえ、等価騒音 レベルによる調査、予測、評価を行うとともに、結果を評価書に記載すること。
5. 発電時に発生する二酸化炭素の影響をできる限り回避又は低減するため、ガス燃料の 優先的使用など発電所における対策に加えて、既設製油所及び周辺地域への蒸気の 供給や製油所内におけるエネルギー効率の改善等により、製油所全体から発生する 二酸化炭素排出量を抑制するとともに、その旨について環境影響評価書に記載すること。
6. 復水器の冷却に使用する冷却塔からの蒸気が白煙化し、視程障害の原因となることが ないよう、冷却塔の運転管理を適切に行うことにより白煙の抑制を図るとともに、 発電所の試運転時や運転開始後において、特に白煙の高度が低くなる条件下で、 適切な環境監視を行うこと。これにより、予測の不確実性を補い、必要に応じて 適切な対策を講じること。また、これらの措置について評価書に記載すること。

IV.コスモ石油四日市霞発電所

〔概要〕

事業者 コスモ石油(株) 最大出力 22.3万kW
計画位置

三重県四日市市

発電方式 汽力(ボイラー・タービン 方式)
用地 約15ha 運転開始 平成15年4月(予定)
燃料 減圧残油約34万kl/年

〔環境庁長官意見の内容〕

1. 計画地周辺地域においては、浮遊粒子状物質に係る環境基準を達成しておらず、 一部地域では二酸化窒素についても非達成である。また、当該地域は、大気汚染 防止法の硫黄酸化物に係る総量規制地域にも指定されている。さらに、周辺地域 沿道においては、道路交通騒音に係る環境基準を大幅に超過している。このため、 下記の大気汚染対策及び道路沿道環境対策等を講じるとともに、当該措置について 評価書へ記載すること。
  (1) 長期拡散予測の結果、将来の発電所近傍地域におけるばい煙着地濃度は現況を 上回ることから、発電所における有効煙突高の上昇及びばい煙排出量の低減に ついて、長期拡散影響についても比較しつつ検討を行い、結果を評価書に記載する こと。
  (2) 排出ガス中及び減圧残油中の重金属等微量物質について適切に監視を行うこと。
  (3) 発電所及び既設製油所関連交通量について、発電所定期点検時を含めて現況を 上回らないよう措置を講じること。
  (4) 監視結果を含む発電所の運転情報について、住民への情報提供を適切に行うこと。
2. 地域環境の現況にかんがみ、運転開始後の浮遊粒子状物質濃度影響について予測、 評価を行うとともに、結果を評価書に記載すること。
3. 道路交通騒音に関しては、昨年施行された騒音に係る環境基準を踏まえ、等価騒音 レベルによる調査、予測、評価を行うとともに、結果を評価書に記載すること。
4. 計画地の周辺海域は、閉鎖性が高く一部で窒素・燐の水質環境基準を超過している 伊勢湾水域であり、窒素・燐の排出についても慎重な配慮が望まれる。 本計画では、製油所全体において窒素・燐の総排出量が増加することから、製油所 全体での窒素・燐の削減に努めること。また、その旨、評価書に記載すること。
5. 発電時に発生する二酸化炭素の影響をできる限り回避又は低減するため、発電所に おける対策に加えて、輸送手段の大型化及び輸送効率の改善など輸送部門における 対策や既設製油所におけるエネルギー効率の改善等により、当該製油所関連地域 から発生する二酸化炭素排出量を抑制するとともに、その旨について環境影響評価書 に記載すること。
6. 復水器の冷却に使用する冷却塔からの蒸気が白煙化し、視程障害の原因となることが ないよう、白煙及び飛散水滴の抑制対策を講じるとともに、発電所の試運転時や運転 開始後において、特に白煙の高度が低くなる条件下で、適切な環境監視を行うこと。 これにより、予測の不確実性を補い、必要に応じて適切な対策を講じること。また、 これらの措置について評価書に記載すること。
連絡先
環境庁企画調整局環境影響審査室
室  長 小林正明 (内6231)
室長補佐 志々目友博(内6233)
審査官  神谷洋一 (内6232)