報道発表資料

この記事を印刷
2013年03月29日
  • 水・土壌

除染に関する米国専門家の受入れの成果について(お知らせ)

 除染に関する日米協力の一環として、米国から専門家2名が2月4日より、1名が2月25日より、日本に派遣され、環境省で受け入れました。3名の専門家は、除染現場や関係機関の訪問を行い、日本の除染の現状等について情報提供を受けるとともに、米国の経験・専門的知見や助言の提供等を行いました。日米間においては、今回の専門家受入れの実績を基に、日米の除染等に関する情報交換・交流を今後も継続的に行う予定です。

1.背景・目的

 除染に関する日米協力については、平成24年7月に民生用原子力協力に関する日米二国間委員会の下に「廃炉及び環境管理ワーキンググループ」が設置され、検討が進められています。今般、その具体的な活動の一環として、米国から専門家3名が日本に派遣され、本年2月から3月にかけて環境省で受け入れました。

2.米国専門家の概要

(1)米国専門家

[1]ロバート L.シンドラー博士

 米国エネルギー省のサバンナ・リバー研究所の科学者。除染技術、水の除染、放射線による環境の悪化、放射性廃棄物処理、これらに関連する法令、基準等の専門家。2月4日より3月29日まで滞在。

[2]マーク B.トリプレット氏

 米国エネルギー省太平洋北西部国立研究所(PNNL)の科学者。1990年以来、米国西海岸ワシントン州にある核兵器の製造拠点ハンフォード・サイトにおいて様々な除染活動の全体に関するアドバイスを提供。意思決定分析、システムエンジニアリング、データの可視化などの専門家。2月4日より3月29日まで滞在。

[3]サンドン リー博士

 米国環境保護庁国土安全保障研究センター(National Homeland Security Research Center)の研究者。放射性物質の環境汚染に関わる挙動や輸送研究プロジェクト、都市域での放射性物質の除染の評価プロジェクト等を担当。2月25日より3月22日まで滞在。

3.米国専門家の活動成果について

 米国専門家は、日本の除染の現状等について国内関係機関から情報提供を受けるとともに、米国の経験・専門的知見に基づき、以下の内容に関する関連情報の提供や助言等の活動を行いました。

(1)放射線からの防護

 米国では、放射性物質による汚染のため避難している人々が帰還する際に、除染をどこまで行うかの考え方と帰還のための基準を決めるに当たって、そのためのガイダンスを国が示し、専門家の助言機関が必要とされる情報を示す。それらを踏まえて、地元の関係者から成るワーキンググループが議論し、帰還について、地域の実情に合った結論を出す。両者は協力して、帰還後の被ばく量測定プログラムを策定し、恒常的に個人の被ばく量に関するデータを管理し、放射線からの防護に活用する。帰還についての基準と被ばく量測定プログラムは帰還の進捗に応じて見直す。
 日本における放射線防護についても、国内の現状を踏まえながら、このような米国の経験を参考にしてはどうか。

(2)除染の手法

 除染の各手法について、その効果を一定の手順に従って測定し、様々な除染対象に応じた除染効果を示すデータを収集してはどうか。これにより、各手法がどの程度線量の低減に効果的なのかを明確にし、各現場における除染手法の改善に向けた分析等が可能となる。
 森林、農地等のより難しい課題に取り組むために必要な技術を実証できる試験場所を確保してはどうか。先進的な除染技術を用いることが有利となる仕組みが契約の仕組みに確保されることが望ましい。

(3)除染実施戦略

 除染が一定程度進捗した段階で、効果、廃棄物発生量等のデータを含めた評価を行ってはどうか。これにより、将来的に必要とされる除染について、それを完結するためにかかる時間、作業員数等の投入資源や、線量低減、廃棄物の発生などの除染の効果・影響を自治体ごとに推計し、その後の除染作業をより効果的・効率的に行うための検討を行うことができる。
 除染作業について、進展、線量低減の効果、廃棄物発生量等の情報を集約する仕組みの構築は重要である。また、それらの情報をまとめた定期的な進捗報告の作成を検討してはどうか。
 高線量地域に関しては、モデルプロジェクトを行い、本格除染のあり方に関する検討をすることが重要である。

(4)廃棄物・土壌管理システム

 仮置場に関しては、地方自治体とのコミュニケーションをより密にし、成功事例を示していってはどうか。地域コミュニティや利害関係者から、各コミュニティにおける全体的な除染及び廃棄物処理のあり方について助言を得てはどうか。また、国や自治体が所有する土地の活用を一層検討してはどうか。
 廃棄物・土壌処理、保管、運搬等の計画や最適化を検討するために、各地方自治体より、除染から発生する廃棄物・土壌に関して、種類別の量、仮置き場等の保管施設の形式、容器表面における線量等を収集することが重要である。
 中間貯蔵施設を設置する際に、廃棄物・土壌の減容化等のための各種手法の評価も実施してはどうか。また、施設による環境への影響を最小化するとともに、設置に向けたスケジュールや必要な項目をアップデートしてはどうか。

(5)環境モニタリング

 全てのモニタリングデータに関して、基本的な品質管理ができる計画を立ててはどうか。また、データ収集の目的を明らかにして、データを収集する方法、詳細さ、頻度などをそれに適合させることが求められる。その上で、データを収集する複数の機関にその計画を実行するためのガイドラインを示してはどうか。
 放射線からの防護や除染に係る戦略の改善、セシウムの動態解明等のためにモニタリングデータの定期的なレビューや評価を行ってはどうか。

(6)環境におけるセシウムの動態

 除染、帰還した住民の保護、長期的なモニタリングのあり方を検討・評価していくために、環境中のセシウムの動態把握、モデル化等の調査・研究を継続して実施してはどうか。
連絡先
環境省水・大気環境局
(代表:03-3581-3351)
除染チーム
次長   :西山 英彦
次長補佐:大能 直哉(内線6566)
除染渉外広報室
室長   :関谷 毅史
室長補佐:木野 修宏(内線7512)
担当   :小森 清志(内線7514)