報道発表資料

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2013年03月22日
  • 保健対策

平成23年度 大気中水銀バックグラウンド濃度等のモニタリング調査結果について(お知らせ)

 環境省では、国際的な水銀対策の立案に資するため、平成19年度より、国内の発生源による影響を直接受けない地点(バックグラウンド地点)において、水銀の大気中濃度等のモニタリングを試行してきました。平成24年3月には、それまでの測定データの蓄積によりデータの信頼性が確保されたと判断されたことから、平成22年度までに実施した調査結果を公表したところです。
 今般、平成23年度の調査結果を過年度の調査結果と併せてとりまとめましたので、公表いたします。
 平成23年度の測定結果は、平成19~22年度の測定結果と比較して、概ね横ばいの推移を示しました。なお、測定結果を大気中水銀濃度の指針値と比較したところ、過年度の測定結果も含め、常に指針値以下でした。

1.背景

 国連環境計画(UNEP)においては、平成13年より地球規模での水銀汚染に関連する活動を開始し、水銀による環境汚染への国際的な対応を進めています。平成17年には、第23回UNEP管理理事会における決議を受け、水銀の排出削減に向けて各国政府、NGO、企業等による自主的な取組としてUNEP世界水銀パートナーシップが開始され、また、平成25年1月には水銀条約に関する政府間交渉委員会第5回会合において「水銀に関する水俣条約」の条文案が合意されました。
 こうした国際動向を踏まえ、環境省では、国際的な水銀対策の立案に資することを目的として、平成19年度より、水銀について、国内の発生源による影響を直接受けない地点(バックグラウンド地点)における大気中濃度(バックグラウンド濃度)等について、モニタリング調査を試行してきました。平成24年3月には、それまでの測定データの蓄積によりデータの信頼性が確保されたと判断されたことから、平成22年度までに実施した調査結果を公表したところです。
 今般、平成23年度の調査結果を過年度の調査結果と併せてとりまとめましたので、公表いたします。
 (詳細は別添参照)。

2.調査概要

(1)水銀の形態別測定について
 大気中の水銀には多くの種類(形態)が存在し、その大部分を占める元素状水銀(金属水銀)のほか、酸化態水銀、浮遊粒子状物質における水銀(粒子状水銀)等の形態があります。こうした様々な形態の水銀は、大気中において異なる挙動を示すことが知られています。
 本調査では、国内のバックグラウンド地点において形態別水銀濃度のモニタリングを行うことにより、国際的な水銀の排出状況及び濃度レベルの推移、それらが我が国の環境に及ぼす影響の把握等に資することを目的に、大気にガス状で存在する金属水銀及び酸化態水銀、並びに粒子状水銀の濃度をそれぞれ測定し、それらを合計しました。また、降水中の水銀濃度の測定(全ての形態の合計について測定)を行いました(表1参照)。
(2)測定地点
 独立行政法人 国立環境研究所 辺戸岬 大気・エアロゾル観測ステーション
 (沖縄県国頭郡国頭村字宜名真)
(3)測定方法、調査項目及び測定頻度
 大気成分については、形態別水銀連続測定装置を用いて測定を行いました。また、降水成分については、降水捕集装置により試料を採取し、米国環境保護庁(EPA)が定めるMethod 1631に準じた方法で濃度分析を行いました。(いずれも詳細は別添参照)
表1 調査項目及び測定頻度
区分 調査項目 測定頻度
大気成分 ガス状 金属水銀 連続測定(16回/日)
酸化態水銀 連続測定(8回/日)
粒子状水銀
降水成分 降水中の水銀濃度 週1回測定(7日間連続サンプリング)
本調査における「金属水銀」とは、大気中にガス状で存在する水銀元素(Hg0)のことを指します。また、「酸化態水銀」は、大気中にガス状で存在する酸化された水銀(Hg2+)を、「粒子状水銀」は、大気中の浮遊粒子状物質に含まれる又は吸着している水銀を、それぞれ表しています。
酸化態水銀及び粒子状水銀については、大気中濃度は小さいものの、地上への水銀の沈着においては大きな割合を占めることが知られているため、測定対象としています。
大気汚染防止法に基づいて行われている有害大気汚染物質モニタリング調査における水銀濃度のモニタリングと本調査では測定方法が異なります(別添参照)。

3.調査結果の概要

(1)平成23年度の調査結果の概要
 大気中の形態別水銀の合計の年平均値は2.1ngHg/m3、月平均値の範囲は1.6~2.8ngHg/m3、1時間毎の測定値の範囲は1.1~4.7ngHg/m3でした(表2)。また、大気汚染防止法に基づく大気中水銀濃度の指針値(年平均値40ngHg/m3)を常に下回っていました。
 なお、大気中の水銀は、そのほとんどが金属水銀で占められており、酸化態水銀及び粒子状水銀が占める割合は、平均で1%未満でした(詳細は表2及び別添参照)。
(2)平成23年度と過年度の傾向の比較
 形態別水銀の合計の濃度及び形態別の水銀濃度の年平均値は、平成19~22年度の調査結果と比較して、概ね横ばいで推移していました(詳細は別添参照)。
 なお、平成21年度までは試行期間であり、測定日数が限られる等の点に留意する必要があります。
表2 大気中水銀濃度の測定結果(平成23年度)
測定項目 項目 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 年間
金属水銀
(ngHg/m3
平均値 1.8 1.7 1.6 1.9 2.8 2.6 2.1 2.1 2.1 2.3 2.2 2.2 2.1
最小値 1.2 1.2 1.1 1.4 1.8 1.7 1.6 1.7 1.6 1.6 1.6 1.5 1.1
最大値 4.3 4.2 2.7 4.1 3.7 4.2 3.8 4.0 3.4 4.2 3.2 4.7 4.7
酸化態水銀
(pgHg/m3
平均値 0.002 0.001 <0.001 <0.001 0.006 0.005 0.003 0.001 <0.001 0.001 <0.001 0.002 0.002
最小値 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001
最大値 0.024 0.008 0.003 0.006 0.018 0.017 0.044 0.019 0.006 0.006 0.011 0.023 0.044
粒子状水銀
(pgHg/m3
平均値 0.003 0.002 <0.001 <0.001 0.003 0.003 0.003 0.002 0.004 0.003 0.001 0.002 0.002
最小値 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001
最大値 0.020 0.014 <0.001 0.003 0.007 0.009 0.021 0.021 0.041 0.017 0.012 0.021 0.041
合計
(ngHg/m3
平均値 1.8 1.7 1.6 1.9 2.8 2.6 2.1 2.1 2.1 2.3 2.2 2.3 2.1
最小値 1.2 1.2 1.1 1.4 1.8 1.7 1.6 1.7 1.6 1.6 1.6 1.5 1.1
最大値 4.3 4.2 2.7 4.1 3.7 4.2 3.8 4.0 3.4 4.2 3.2 4.7 4.7
水銀濃度(単位ngHg/m3)は大気1立方メートルあたりの水銀重量をng(10億分の1g(グラム))の単位で表している。測定の定量下限値は金属水銀0.1ngHg/m3、酸化態水銀及び粒子状水銀0.001ngHg/m3であり、「<」は定量下限値未満を示す。平均値の算出にあたり、定量下限値未満の数値については定量下限値の1/2として計算に用いた。
(3)降水中の水銀濃度
  • 降水中の水銀濃度の年平均値は3.0ng/L、測定値の範囲は0.6~10.9ng/Lであり、年平均値は、降水中水銀濃度の測定を開始した平成20年度以降の調査結果と比較して、概ね横ばいで推移していました。降水中の水銀については指針値等が設定されていませんが、参考として、水銀に関する水道水の水質基準値である0.0005mg/L(500ng/L)と比較すると、測定値は非常に低い値でした(詳細は別添参照)。なお、平成21年度までは試行期間であり、測定日数が限られる等の点に留意する必要があります。

4.今後の対応

 本モニタリング調査のデータは、アジア太平洋地域における大気中の水銀の状況についての基礎資料として国際的に重要であり、将来的には水銀に関する水俣条約の有効性評価にも資することから、今後も継続的にモニタリング調査を実施し、広く国内外へのデータの提供や結果報告を行う予定です。
 また、UNEP世界水銀パートナーシップ・プログラム等の国際的な取組に調査結果を提供すること等により、大気経由での水銀の広域輸送等に関する国際的な知見の収集や、それらに基づく国際的な取組に、積極的に貢献していきます。

添付資料

連絡先
環境省総合環境政策局環境保健部環境安全課
直通    : 03-5521-8260
代表    : 03-3581-3351
課長    : 上田 康治 (内線 6350)
課長補佐 : 水谷 好洋 (内線 6353)
担当    : 櫻井 希実 (内線 6356)

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