報道発表資料

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2000年06月14日

皇居外苑濠魚類フォローアップ調査の結果について

  平成10年9月の皇居外苑濠魚類及び生息環境調査(第4回)の結果、近年のブルーギル等外来種の急速な増加により、いくつかの濠においては在来種が圧迫され、希少な地域個体群であるジュズカケハゼを含む本来の魚類相の保全が難しい状況となっていることが明らかになった。
  このため、第4回調査から約1年を経過した平成11年10月時点での魚類相の変化を把握するとともに、種間関係の改善及び本来の魚類相の保全と回復の方向を探るためのフォローアップ調査を、(財)自然環境研究センターにより実施したものである。
  その調査結果では、ブルーギルの捕獲数比率は、4濠で増加し、3濠で減少した。また、モツゴの捕獲数比率は、2濠で増加し、4濠で減少した。
  今後の方向としては、[1]外来2種(ブルーギル、オオクチバス)の駆除に向けて、その捕獲を行うとともに、生態や捕獲の効果に関するデータを集積すること、[2]外来2種の侵入していない濠について、それらの遡上防止のための措置を強化すること、[3]外来2種の密放流防止のための措置及び市民意識の醸成を図っていくこと、[4]在来の生態系保全のための水循環の改善に関する調査検討を推進することの必要性が示された。

1.調査目的

  平成10年度に実施した第4回魚類調査では、13の濠のうち牛ヶ淵、凱旋濠より下流の8濠から放流記録のない外来種であるブルーギルとオオクチバスが確認された。そこで今回のフォローアップ調査では、この8濠で捕獲作業を実施し、第4回調査から約1年を経過した平成11年10月時点での魚類相の変化を把握するとともに、種間関係の改善及び本来の魚類相の保全と回復の方向を探ることを目的とした。

2.調査方法

(1)調査日程 : 平成11年10月25日~28日の4日間
 
(2)調査対象濠: 牛ヶ淵、清水濠、大手濠、桔梗濠、和田倉濠、馬場先濠、凱旋濠及び日比谷濠の8濠(皇居外苑濠魚類調査位置図
 
(3)調査手法  : 船上からの投網(濠により33投(凱旋濠)~100投(日比谷濠))による捕獲及び全長等の計測
特に多数を占めるブルーギルの未成魚の捕獲を重点に、濠の岸寄りで目合の細かい投網を多用(8濠投網総回数388投、第4回177投)
捕獲されたブルーギル、オオクチバスについては、水域外に除去

3.調査結果

(1)ブルーギル等の状況
 
[1] ブルーギル、オオクチバスが侵入している8濠について捕獲調査を行い、4目5科12種及び亜種の魚類(表1、表2)、31,552尾を捕獲した。
[2] ブルーギルは全8濠で出現し、和田倉濠及び馬場先濠を除く6濠からは最も多く捕獲され、また、全体の89%を超え(第4回83%)、寡占する日比谷濠では99%(第4回95%)にのぼった(表3)。それに次いで多かったのはモツゴで凱旋濠を除く7濠から8.3%(表4)、続いてオオクチバスが全8濠から0.9%捕獲された(表5)。
[3] ブルーギルは、同水位で連続する清水、大手、桔梗の3濠では、その比率が増加し(表3)、50mm以下の小形個体(当年魚)に偏った単峰型分布(図1)で、一方、和田倉、馬場先の2濠では、比率が減少し、中形個体まで広く出現する2峰型分布(図2)を示した。この差異は、侵入からの経過時間、水面の大きさ、オオクチバスの密度の違いなど種々の要素が関与していると推定されるが、再生産の評価については今後の調査に待たれる。
[4] オオクチバスは小形個体が少ない傾向が認められ(図3左)、コンスタントな再生産が行われているかどうか疑わしい。
[5] 外苑濠における主要在来魚のモツゴは、第4回の記録と比べて全体として捕獲数は4.5倍に増加したものの、捕獲数比率が若干減少している。その内訳としては、和田倉濠と馬場先濠では捕獲数比率が増加し、ブルーギルより高い比率となっている(表4)。また、ギンブナ、ゲンゴロウブナ、コイの3種類は小形魚が捕獲されておらず、再生産は成功していないと判断される。
[6] これまでに記録された全17種類(表6)のうち、モツゴ、キンブナ、ギンブナ、コイ、ナマズ、ヨシノボリ、ヌマチチブ、ジュズカケハゼ、ウキゴリの9種類は天然分布と考えられる。また、ソウギョ、ハクレン、カムルチー、オオクチバス、ブルーギルは、外国からの移植種であるが、前3種は濠においては再生産が行われていないと判断される。
[7]

 

関東地方のジュズカケハゼは「絶滅のおそれのある地域個体群」として環境庁レッドリストに登録されているが、皇居外苑濠の個体群は、河川中流域個体群より更に希少な集団であり、また、ヌマチチブ、ウキゴリ(淡水型)の両種も陸封個体群としては都内では希少な存在である。
 
(2)今後の方向
 
  外来2種、特にブルーギルは、その特性として一旦侵入すると爆発的に増加し、魚卵まで捕食して在来魚種の駆逐すなわち在来の生態系を壊滅させる恐れがあり、また、全国的な例からも駆除の困難性は明らかで既往の決定的方法もない。このため、当面、外来2種の侵入していない在来生態系を残す5濠と既に侵入している8濠との区分を意識し、今後次のような方向をとる必要がある。
 
[1] 外来2種の駆除に向けて、その捕獲を行うとともに、生態や捕獲の効果に関するデータを集積する。
[2] 外来2種が未侵入の外苑濠については、遡上侵入防止のための措置を強化する。
[3] 外来2種は意図的に放流されたことが推測され、今後の密放流防止のための措置及び市民意識の醸成を図っていく。
[4] 在来の残された生態系を保全・強化するために、皇居外苑周辺の地下滲出水等を濠に導水し水量を増加しつつ水循環を改善することに関し、調査検討を推進する。

添付資料

連絡先
環境庁自然保護局企画調整課
課          長 :堀之内 敬(内線6410)
 国民公園専門官 :木村 英雄(内線6425)

環境庁自然保護局企画調整課皇居外苑管理事務所
所          長 :城所 一男
 次          長 :市原 信男
 (Tel.3213-0095)