報道発表資料

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1997年01月16日

第4回自然環境保全基礎調査・河川調査の結果

自然環境保全基礎調査(緑の国勢調査)は、全国的な視点から我が国における自然環境の現状及び改変状況を把握し、自然環境保全を推進するための基礎資料を整備するために、環境庁が昭和48年度より自然環境保全法第4条の規定に基づき概ね5年毎に実施している調査である。
 このたび、第4回自然環境保全基礎調査の一環として、「河川調査」を実施した。その結果、第2回及び第3回自然環境保全基礎調査で登録された原生流域のうち13流域の面積が減少し、そのうち3流域が原生流域から除外された。また、河岸の改変状況及び魚類の生息状況等について調査し集計・解析を行った。 

I 調査内容
 
 調査は平成4年度に都道府県に委託して実施した。
 
(1)原生流域調査
 第2回及び第3回調査において、全国の全ての河川の中から登録された101原生流域(面積1,000ha以上にわたり人工構築物及び森林伐採等人為の影響の見られない集水域)について、行政資料、空中写真等により前回調査以降の人為改変状況を調査した。
 
(2)河川改変状況調査等
 河川改変状況調査等は、第2回(昭和54年度)及び第3回調査(昭和60年度)においては全国の一級河川の幹川等113河川を対象にして実施したが、今回初めて全国の主要な二級河川の幹川及び一級河川の支川等の中から良好な自然域を通過する河川、流域面積が大きい河川または動植物相が豊かな河川として153河川を対象に以下の調査を実施した。
 
a.河川概要調査
 各種資料により、河川流路延長、降水量、水位、流量、水質等を調査し、河川の概要を把握した。
 
b.河川改変状況調査
 資料調査及び現地観察により、保全地域指定状況、水際線の改変状況、河原・河畔の土地利用状況等を把握した。
 
c.魚類調査
 既存資料、漁獲統計、漁協からの聞き取り及び漁獲試験等により、生息魚種、漁獲量、放流量等を把握した。
 
 
II 調査結果の概要
 
II-1 原生流域結果
 

 原生流域は全国で99流域、総面積で205,634haが登録された。これらを地域別に見ると、北海道が36流域、総面積で81,497ha、東北地方が30流域、61,953ha、関東甲信越地方が19流域、38,301ha、その他の地方が14流域、23,883haとなっており、東日本に偏在している。
 都道府県別で最も原生流域の面積が広いのは北海道、次いで新潟県、秋田県、山形県、福島県、青森県となっている。
 
 面積の減少した原生流域は以下の13流域であった。また、そのうち3流域が原生流域の要件を満たさなくなったため原生流域から除外された。
*tab1.gifを参照。
 
 新規に登録された原生流域
 仲間川(沖縄県)(1346.9ha)
 
 原生流域のうち保全地域に指定されている原生流域は79流域であった。
  また、原生流域面積の大きい保全地域は以下の10地域である。
*tab2.gif、fig1.gifを参照。
 


II-2 調査河川の土地利用状況と改変状況
 
(1)河川の種類(幹川・支川)
 *tab3.gifを参照。
 
(2)水際線の改変状況
 

 調査対象とした153河川(総延長6,249.0km)の水際線を改変状況区分別にみると、自然地は4,585.6km(73.4%)であった。そのうち、がけ地は1,656.1km(26.5%)であった。
*fig2.gifを参照。
 
 水際線の自然地率100%の河川
 別寒辺牛川(北海道)、長棟川(富山県)、小鹿川(鳥取県)、仲良川(沖縄県)
 
 水際線の自然地率と水系群の関係
 自然地率の高い水系群
  「沖縄-東シナ海」水系群(99,4%)
  「北海道-太平洋/北」水系群(98.1%)
  「四国-太平洋/中南」水系群(90.3%)
 
 自然地率の低い水系群
  「九州-日本海」水系群(38.0%)
  「北海道-オホーツク海」水系群(57,8%)
  「本州-瀬戸内海」(61,1%)水系群
 

(3)河原の土地利用状況
 

 調査対象河川の河原の総延長は1,680.3kmであった。
調査流路延長に対する河原の存在率は26.9%であった。河原の土地利用の内訳をみると、自然地1,379.3km(82.1%)、人工改変地301.0km(17.9%)であった。
*fig3.gifを参照。
 
 河原の自然地率100%の河川は全国で24河川であった。
 西別川(北海道)、風蓮川(北海道)、白石川(宮城県)、奈良井川(長野県)、銅山川(徳島・愛媛県)等
 
 河原の自然地率と水系群の関係
 河原の自然地率の高い水系群
  「沖縄-東シナ海」水系群(100%)
  「九州-東シナ海」水系群(100%)
  「北海道-太平洋/北」水系群(97.3%)
 
 河原の自然地率の低い水系群
  「北海道-日本海」水系群(47.3%)
  「四国-瀬戸内海」水系群(58.8%)
  「北海道-オホーツク海」水系群(61.8%)
 

(4)河畔の土地利用状況
 

 調査対象河川の河畔(両岸)のうち自然地5,664.2km(45.3%)農業地5,027.3km(40.2%)市街地・工業地1,806.5km(14.5%)であった。
*fig4.gifを参照。
 
 河畔の自然地率が100%の河川
 別寒辺牛川(北海道)、岩股川(秋田県)、長棟川(富山県)、河原樋川(奈良県)、 銅山川(徳島・愛媛県)、仲良川(沖縄県)
 
 河畔の自然地率と水系群の関係 
 河畔の自然地率の高い水系群
  「沖縄-東シナ海」水系群(96.9%)
  「北海道-太平洋/北」水系群(61.4%)
  「北海道-太平洋/中南」水系群(60.3%)
 
 河畔の自然地率の低い水系群
  「北海道-オホーツク海」水系群(19.7%)
  「九州-日本海」水系群(19.7%)
  「九州-瀬戸内海」水系群(20.3%)
 

(5)自然性の高い河川区間帯
 

{1} 「自然性の高い河川区間」率の高い河川の上位25河川は以下の通りであった。全区間が「自然性の高い区間」である河川は別寒辺牛川(北海道)、岩股川(秋田)、長棟川(富山)、仲良川(沖縄)の4河川である。
*tab4.gif、fig5.gifを参照。
 
以下の全ての要件に該当するものを「自然性の高い河川区間帯」とした。
1)  区間の水際線において、自然地が80%以上であること。
2)  区間に河原がある場合は、河原土地利用において自然地が80%以上であること。
3)  区間の河畔の土地利用において、両岸ともに最も卓越している土地利用が自然地であること。
4)  河川工作物が存在しないこと。
 
{2} 「自然性の高い河川区間」が連続10以上(10km以上)のものを「自然性の高い連続する 河川区間帯」とすると、26河川の33区間帯であった。北海道、東北、中部地方山岳地域 に多く見られた。
*tab5.gif、fig6.gifを参照。
 

(6)河川別の生息魚種数
 対象河川中生息魚種数の多い河川は以下の通りであった。魚種数が多い河川は西日本に多く分布している傾向が見られた。
 

有田川(和歌山県)   83種
揖斐川(三重・岐阜県) 65種
新荘川(高知県) 63種
室見川(福岡県) 58種
瀬戸川(静岡県) 56種
千種川(兵庫県)  56種

 
(7)河川の保全地域指定状況
 

 調査対象河川のうち、何らかの保全指定を受けている区間は15.9%であった。
 
 保全地域に指定されている河川区間のうち、水際線の自然地率が100%の区間は61.0%であった。また、保全地域に指定されていない河川区間では40.9%であった。
 
 保全地域に指定されている河川区間のうち、河原の自然地率が80%以上の区間は、96.1%であった。また、保全地域に指定されていない河川区間では71.1%であった。
 
 保全地域に指定されている河川区間のうち、河畔が自然地の区間の出現率をみると、75.7%であった。また、保全地域に指定されていない河川区間では39.9%であった。
 保全地域に指定されている区間は自然地率が高いことがわかった。
 

 *図表・参考部分は割愛。

連絡先
環境庁自然保護局
室長  黒田 大三郎 (内線6480)
 専門官 小荒井 衛  (内線6438)
 担当  中島 慶次  (内線6439)
 直通  3591-3228