報道発表資料

この記事を印刷
2000年06月30日

平成11年度環境協力事業評価手法調査結果について

環境庁では、環境基本計画の点検作業において「環境分野の政府開発援助により、環境対策上どのような効果が上がったかを把握すること」が課題とされたこと等を踏まえ、平成10年度より「環境協力事業評価手法検討調査」を(株)三菱総合研究所に委託し、専門家委員会を設置(参考参照)して検討を進めてきた。
  今回、平成11年度の調査結果をとりまとめたため、それを中間報告として公表する。今回調査では、被援助国の環境対策上の効果把握の着眼点について概念整理を行った。今後は、これをもとにケーススタディを行う等、さらに調査を進めていく予定。
1.調査の背景・目的

(1)  我が国の政府開発援助においては、環境分野も含め、その質的な充実を図る観点から、評価の重要性が高まっている。とりわけ、環境分野の政府開発援助においては、環境基本計画の点検作業のなかで、「環境分野の政府開発援助により、環境対策上どのような効果が上がったかを把握すること」が課題とされている。
 
(2)  以上を背景に、本調査は、環境対策上の効果把握を含む評価のための客観的な手法を開発することにより、環境分野の政府開発援助の評価の充実を図ることを目的とするものである。

2.今回の調査の位置付け

(1)  今回の調査は、既に実施された環境分野のプロジェクトの成果として、被援助国の環境対策上どのような効果が上がったかを明らかにする手法を開発することに焦点を当てた。こうした効果の把握は、以下の意義を持つものと考えられる。
1. プロジェクト経費が有効に活用されたかについての透明性を高める。
2. 被援助国のプロジェクトの成果活用の自助努力を促進する。
3. 新規プロジェクトの選定にあたって、教訓を提供する(フィードバック)。
 
(2)  一般に、政府開発援助の評価については、その対象について政策レベル、プログラムレベル、プロジェクトレベルの三段階があり、また評価の時期についても事前・中間・事後がある。こうした評価のなかでの今回の調査の位置付けは、環境分野の政府開発援助の個別プロジェクトについて事後評価を行う際の評価手法を開発することである。
 
(3)  なお、今回の調査が対象とする事後評価は、プロジェクト終了後一定期間を経た後に環境対策上どのような効果があったかを見るものであり、プロジェクトの実施主体が、その終了時に、プロジェクト自体の目標達成度を見るために行ういわゆる終了時評価とは異なるものである。

3.調査結果のポイント

(1)  今回の調査では、評価手法を検討する上で、その対象とするプロジェクトの例として、「環境管理センター(国によって多少異なるが環境モニタリング、研修、研究等の機能を持つ)への協力」、「水質改善システムの開発」の二つのタイプのもの(いずれもプロジェクト方式の技術協力)を想定した。
 
(2)  被援助国の環境対策上の効果については、今回は、定量的な把握よりもむしろ効果把握の着眼点を明らかにすることに重点を置いた。効果把握の着眼点としては、通常のプロジェクト評価手法であるPCM(プロジェクト・サイクル・マネージメント)における評価5項目(効率性、目標達成度、インパクト、計画の妥当性、持続性・自立発展性)のうち、インパクト及び持続性・自立発展性に注目することとした。
 
(3)  上記の対象事例における効果把握の着眼点の例は以下の通り。
 援助プロジェクト(例えば環境管理センターへの協力)終了後も、被援助国政府により、必要経費(機材の更新等)、スタッフ・組織等が安定的に確保されているか(持続性・自立発展性)。
 援助プロジェクトの成果(例えば環境モニタリングや水質改善の移転技術)について、被援助国において地方展開(例えば地方モニタリングへの技術浸透)や全国普及(例えば水質改善の移転技術の国産化)が行われているか(持続性・自立発展性)。
 援助プロジェクトの成果(例えば環境モニタリングの移転技術)が、被援助国政府の政策(例えば環境基準の設定や改定)に反映されているか(行政へのインパクト)。

4.今後の調査の課題

(1) 評価手法のケーススタディによる検証
  今回の調査は、二つのタイプのプロジェクトを想定して、被援助国の環境対策上の効果把握の着眼点について、概念的な整理を試みたもの。今後は、この二つのタイプを中心に既に終了した援助プロジェクトの実例等に基づくケーススタディを行うことにより、効果把握の着眼点の妥当性、定量的な効果把握の可能性等について、検討することが課題。
 
(2) 想定するプロジェクトタイプの拡大
  今回の調査では、「環境管理センターへの協力」と「水質改善システム開発」という二つのタイプのプロジェクトを想定した。しかし、環境分野の援助プロジェクトは、その分野や形態が多様かつ広範囲であるため、今後は評価手法の検討対象とするプロジェクトのタイプを拡大していくことが課題。
なお、将来的には効果把握事例の蓄積により事例集をとりまとめること等が考えられる。

 (参考)専門家委員会名簿(50音順)
石田 健一  (東京大学海洋研究所助手)
岡島 成行 (環境ジャーナリスト)
尾崎 隆夫 ((有)コンサルティングハウス ミネルヴァのふくろう代表)
神田 浩史 (地域自立発展研究所)
菰田 ((財)自然環境研究センター 研究主幹)
桜井 国俊 (沖縄大学教授)
   (座長) 広野 良吉 (成蹊大学名誉教授)
藤倉 (立命館大学経済学部教授)
連絡先
環境庁企画調整局地球環境部環境保全対策課環境協力室
室  長 :田口 博之(6742)
 専門官 :中澤 圭一(6756)