報道発表資料

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2012年04月16日
  • 地球環境

環境研究総合推進費戦略的研究プロジェクト『気候シナリオ「実感」プロジェクト』成果発表について~地球温暖化予測の解釈に関する総合的な研究成果を報告~

 環境省の運営する競争的研究資金である環境研究総合推進費の戦略的研究『気候シナリオ「実感」プロジェクト(リーダー:東京大学 教授 住 明正)』では、地球温暖化の将来予測シミュレーションを実際の社会における地球温暖化対策に役立てるために必要な予測結果の解釈に関する研究を総合的に推進してきました。このたび、5年間の研究期間が終了しましたので、全体の成果をとりまとめた報告書を発表します。
 成果として、日本の将来の身近な気象(春一番、モンスーン、夏、ヤマセ、台風など)がどのように変化するかを世界の気候モデルを用いて予測するなど、不確かさを含む予測結果に基づいて将来の日本および世界の気候変化とその影響について何がいえるかに関する最新の科学的知見をまとめました。

1.プロジェクトの概要

(1)
プロジェクト名:「地球温暖化に係る政策支援と普及啓発のための気候変動シナリオに関する総合的研究」(気候シナリオ「実感」プロジェクト)
(2)
研究期間 前期:2007~2009年度、後期:2010~2011年度
(3)
研究プロジェクトリーダー:東京大学 教授 住 明正
(4)
研究テーマおよびテーマリーダー
1.
「総合的気候変動シナリオの構築と伝達に関する研究」
テーマリーダー:(独)国立環境研究所 室長 江守 正多
人文社会グループリーダー:神奈川大学 教授 松本 安生
2.
「マルチ気候モデルにおける諸現象の再現性比較とその将来変化に関する研究」
テーマリーダー:東京大学 教授 高薮 縁
3.
「温暖化予測評価のためのマルチモデルアンサンブルとダウンスケーリングの研究」
テーマリーダー:気象庁気象研究所 室長 高薮 出
4.
「統合システム解析による空間詳細な排出・土地利用変化シナリオの開発」
テーマリーダー:(独)国立環境研究所 主席研究員 山形 与志樹
(5)
研究参加機関
東京大学、(独)国立環境研究所、(独)海洋研究開発機構、北海道大学、(独)農業環境技術研究所、(株)野村総合研究所、神奈川大学、東邦大学、気象研究所、筑波大学、名古屋大学、気象庁、京都大学、(独)防災科学技術研究所、東京工業大学から約70名の研究者が参画
(6)
研究予算 2011年度:約4.3億円 (2007~2011年度予算額累積:20.9億円)

2.研究の内容および主要成果

(テーマ1)
[1]水、食料、生態系、健康、沿岸域、その他の分野への温暖化の影響について、できる限り包括的で偏りのないように配慮して解説した。
[2]水文・水資源、海洋・水産、極域・氷床、農業・食料、陸域生態系、人間健康の分野への温暖化の影響を評価した結果、不確実性に関する知見や不確実性を考慮しても妥当と考えられる影響の知見が得られた。

図2:本テーマで予測された分野別の地球温暖化影響

(テーマ1コミュニケーショングループ)
[3]市民への調査の結果、マスメディアがどう伝えるかにより、環境問題に関する人々の認識が変化していることが確認された。そこで、研究者とメディア関係者の間の定期的な意見交換会を行い、研究者とメディア関係者の間での考え方の違いなどを把握した。
[4]環境教育やロールプレイングなどの普及啓発手法についての実験を行った。
[5]気候変動シナリオに対する企業のニーズについて、研究者と企業担当者による検討会を実施した。

図2:2005年から2009年までの新聞・テレビにおける温暖化報道状況と世論

(テーマ2)
[6]日本の気候に影響を与える現象を中心に42の気象・海洋現象について、IPCCレポートに貢献している複数の気候モデルそれぞれがどの程度よく再現できるか調べ、モデルの中での現象の再現メカニズムを調べた。その結果より信頼できるモデルの結果に基づき、温暖化の進行に伴う各現象の将来の変化に関する知見が得られた。また、成果の一部を中高生程度向けのわかりやすいパンフレットとして発表した。

図2:現在の20年間(1981-2000年)におけるヤマセの発生回数(20年間の合計)。水色線は観測、太い赤色線は再現性の良い9個のモデルの、細い赤色線は全ての平均回数を示す。

(テーマ3)
[7]格子間隔100km程度の地球規模の気候モデルによる計算結果を基にして、3つの異なる地域気候モデルを用いてダウンスケーリングを行い、格子間隔20kmの日本周辺域の気候変動予測データセットを作成した。
[8]日本の都市域について格子間隔2~4km程度の都市気候モデルを用いたダウンスケーリングを行い、将来の気候変化における都市化の影響を評価した。

図7:都市気候の将来予測の結果。左図は2050年代のある8月の地上高さ20mの気温分布。中央図と右図はそれぞれ、都市が集約型になること、分散型になることよって起こる気温上昇量(気象研究所モデルの結果)。

(テーマ4)
[9]IPCC第5次評価報告書に向けて国際的に進められている研究動向に対応する形で、「アジア太平洋統合評価モデル」(AIM)により作成された社会経済シナリオ(RCP6.0)のダウンスケーリングを行った。
[10]土地利用変化起源のCO2排出量の見積もりについて、統合評価モデルで計算された値と、空間的に詳細な生態系モデルで計算された値の間で大きな差があることを示した。

図1:地球を対象とした人口のダウンスケーリング結果(上段)、東京都市圏を対象とした土地利用変化シナリオによる人口変化(下段)
添付資料(外部HPリンク)
別添資料『地球温暖化に係る政策支援と普及啓発のための気候変動シナリオに関する総合的研究』成果報告書
概要(抜粋) (PDF:1.6MB)
全体版 (PDF:31.9MB)
参考資料(環境省HPリンク)
『暑いだけじゃない地球温暖化』パンフレット
関連情報
環境研究・技術 情報総合サイト
一般公開シンポジウムの結果報告「実感!地球温暖化~温暖化予測の「翻訳」研究は何を明らかにしたか~」
連絡先
環境省地球環境局総務課研究調査室
代表   :03-3581-3351
直通   :03-5521-8247
室長   :松澤 裕  (内:6730)
室長補佐:近藤 昌幸(内:6732)
担当   :房村 拓矢(内:6732)
独立行政法人国立環境研究所
気候変動リスク評価研究室 
室長   :江守 正多 (029-850-2724)

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