報道発表資料

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2000年12月10日

第5回POPs(残留性有機汚染物質)条約化交渉会議の概要

残留性有機汚染物質(POPs)条約政府間交渉委員会第5回会合は、ヨハネスブルグ(南アフリカ共和国)において、12月4日より開催されていたが、10日早朝(日本時間10日15時頃)に閉会し、本件条約案について合意に達した。会議には約120ヶ国から約350名の政府関係者の他、国際機関の代表、NGO等が参加した。
 環境中での残留性が高いPCB、DDT等の有害化学物質については、地球規模の環境汚染が報告されており、国際的な枠組みでの対策が求められていた。本条約案は、当面12種類の化学物質を対象に製造・使用の禁止、排出の削減等により地球環境汚染を防止することを目指すものである。
 今回合意された条約案は2001年5月21日~23日、ストックホルム(スウェーデン)にて開催される外交会議において正式に採択される予定である。

1.POPs(Persistent Organic Pollutants:残留性有機汚染物質)の性質

[1]環境中で分解しにくい(難分解性)
[2]食物連鎖などで生物の体内に濃縮しやすい(高蓄積性)
[3]長距離を移動して、極地などに蓄積しやすい(長距離移動性)
[4]人の健康や生態系に対し有害性がある(毒性)

地球的規模でのPOPsによる汚染(例えばイヌイットの人々、アザラシ、クジラ等への蓄積)が報告されている。

2.条約案の概要

[1]製造・使用を原則禁止する物質(PCB、クロルデン等9物質。PCB含有機器の継続使用等、一部の例外は認める)と、限定的に使用を認める物質(DDT・マラリア対策用)に分けた規制
[2]非意図的生成物質(ダイオキシン等)の排出の削減
[3]POPsを含む廃棄物・ストックパイルの適正処理

 等について各国が実施計画を策定して実施。(当初12物質が対象)

3.条約化交渉への我が国の対応状況と交渉結果

 環境庁からは環境保健部、水質保全局、大気保全局から担当官が交渉会議に参加しており、他に、通産省、農水省及び外務省からも参加している。
我が国としては、JUSSCANNZ諸国と連携を取りつつ柔軟性を持って協議に臨み、発展途上国を含め、多くの国で実施可能であり、かつPOPsの廃絶・削減に向けて実効が上がる条約が、今回の会合で合意されるよう全力を尽くした。
交渉は困難を極めたものの、日程を一日延長して現地時間10日(日)午前8時、全体会合において条約案について合意に達した。なお、現地時間10日(日)午前11時30分から議長とUNEP事務局による記者会見が予定されている。

4.合意に達した条約案の概要

(1)附属書A,B,Cに規定される物質と義務規定
附属書A:製造・使用の禁止
 アルドリン、ディルドリン、エンドリン、クロルデン、ヘプタクロル、トキサフェン、マイレックス、ヘキサクロロベンゼン、PCB
附属書B:製造・使用の制限
 DDT
附属書C:非意図的生成物質。排出量の削減
 ダイオキシン類、フラン類、ヘキサクロロベンゼン、PCB

(2)適用除外規定
 本条約においては、国ごとに適用除外の規定がおかれている。DDTについては、附属書Bにより一部地域でマラリア対策のための使用のみ認められている。そのほか、附属書Aについても一部の国についての除外規定が設けられている。

(3)PCBの使用及び処理についての目標年次の設定について
 PCBについては、製造・使用を原則禁止する附属書Aに記載され、一定の目標年次を設定して、PCB含有機器の使用の停止、処理の推進等が明記された。
 なお使用停止の目標年次としては2025年、処理については2028年と暫定的に設定されたが、今後締約国会議で見直しが行われることとされた。

(4)途上国への支援について
 GEF(地球環境ファシリティ)を中心とした既存のメカニズムを効果的に活用していく旨が規定された。

5.今後の予定

 今回の会合での条約案に係る合意を受けて、来年5月にストックホルムで開催される外交官会議で条約の採択が行われることになる。

連絡先
環境庁企画調整局環境保健部環境安全課
課 長 :上田 博三(6350)
 補 佐 :早水 輝好(6353)
(環境庁:03-3581-3351(代表))