報道発表資料
環境庁では、「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」(PRTR法)に基づくPRTR制度の円滑な導入に向けて、排出量算出のためのマニュアルの整備や各種支援施策等の準備に資するとともに、PRTRの試行を通して制度の普及啓発を行うため、平成9、10年度に引き続き、平成11年度PRTRパイロット事業を13都道県市(北海道、宮城県、東京都、神奈川県、新潟県、岐阜県、愛知県、兵庫県、広島県、山口県、仙台市、川崎市、北九州市)において実施し、その結果を「平成11年度パイロット事業報告書」としてこのほど取りまとめた。
平成11年度事業においては、対象地域の拡大と報告率の向上によってより多くの事業所から報告が得られる一方、制度の周知の必要性などの課題も明らかとなった。環境庁では、その成果をPRTR法に基づくPRTR制度の実施に向けた様々な検討や準備に役立てていく考えである。
なお、報告書は環境庁環境保健部環境安全課及びパイロット事業を実施した地方公共団体で配布するほか、環境庁のホームページに全文を掲載する予定である。
平成11年度事業においては、対象地域の拡大と報告率の向上によってより多くの事業所から報告が得られる一方、制度の周知の必要性などの課題も明らかとなった。環境庁では、その成果をPRTR法に基づくPRTR制度の実施に向けた様々な検討や準備に役立てていく考えである。
なお、報告書は環境庁環境保健部環境安全課及びパイロット事業を実施した地方公共団体で配布するほか、環境庁のホームページに全文を掲載する予定である。
1 背景 | |||||||||||||||||
(1) | PRTR(Pollutant Releaseand Transfer Register:環境汚染物質排出移動登録)について | ||||||||||||||||
PRTRは、人の健康や生態系に有害なおそれのある化学物質について、その環境中への排出量及び廃棄物に含まれて事業所の外に移動する量を事業者が自ら把握し、行政庁に報告し、行政庁は事業者からの報告や統計資料等を用いた推計に基づき、排出量・移動量を集計・公表する仕組みである。 PRTRには、以下のような多面的な意義が期待されている。 | |||||||||||||||||
1 | 環境保全上の基礎データ | ||||||||||||||||
2 | 行政による化学物質対策の優先度決定の際の判断材料 | ||||||||||||||||
3 | 事業者による化学物質の自主的な管理の改善の促進 | ||||||||||||||||
4 | 国民への情報提供を通じての、化学物質の排出状況・管理状況に係る理解の増進 | ||||||||||||||||
5 | 化学物質に係る環境保全対策の効果・進捗状況の把握 | ||||||||||||||||
(2) | 経緯 | ||||||||||||||||
PRTRは、既に、米国、オランダ等の欧米諸国において制度化されており、1996年(平成8年)2月には、OECD(経済協力開発機構)が加盟国に制度化を勧告した。 この勧告を受け、環境庁では、平成9年度より、神奈川県及び愛知県の一部の地域において、PRTRパイロット事業を実施し、平成10年度は対象地域を拡大して実施したところである。 平成11年7月には「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」(PRTR法)が公布され、PRTR制度が法制度化されたことから、環境庁では、同制度の円滑な施行に向けて、排出量算出のためのマニュアルの整備や各種支援施策等の準備に資するとともにPRTRの試行を通して制度の普及啓発を行うため、平成10年度事業から更に対象地域を拡大して、平成11年度PRTRパイロット事業を実施した。 | |||||||||||||||||
2 平成11年度PRTRパイロット事業の概要 | |||||||||||||||||
平成11年度パイロット事業の概要は以下のとおりである。
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パイロット事業では、事業者に排出・移動量の自主的な報告をお願いしたほか、実施の際の問題点などを把握するためのアンケートやヒアリング調査を行った。また、環境庁では、農薬の散布、自動車のような移動発生源、家庭からの排出などについて、「非点源」からの排出量として推計を行った。 | |||||||||||||||||
3 集計結果の概要 | |||||||||||||||||
(1) | デ-タの報告状況 | ||||||||||||||||
全体で8,425事業所に対して調査票を発送し、約60%の事業所から回答が寄せられ、そのうち約38%の事業所から「対象化学物質を取り扱っている」として、排出・移動量の報告があった。回答率は、平成10年度(約54%)と比較して上昇した。 | |||||||||||||||||
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(2) | 報告又は推計された化学物質 | ||||||||||||||||
176物質のうち、事業所(点源)から排出・移動について報告があった化学物質数は平成10年度の101から平成11年度は139と増加した。その他の発生源(非点源)について推計した化学物質と合わせて162物質(対象化学物質の約92%。10年度は138物質)について集計を行った。 | |||||||||||||||||
(3) | 排出量が多かった化学物質の例(平成10年度と比べて物質、順序に変化あり) | ||||||||||||||||
・トルエン(溶剤、工業原料等) ・キシレン類(溶剤、工業原料等) ・ジクロロメタン(溶剤、金属洗浄剤等) ・p-ジクロロベンゼン(防虫剤等) ・塩化水素(塩酸を除く)(工業原料等) ・ホルムアルデヒド(工業原料、接着剤、防腐剤等) ・ベンゼン(工業原料、ガソリンの成分等) | |||||||||||||||||
(4) | 環境媒体別の排出状況 | ||||||||||||||||
点源からの排出量を環境媒体別にみると、大気への排出が物質数、報告件数ともに多く、環境排出量のうち97%が大気への排出であった。次いで公共用水域への排出であり、土壌への排出は極めて少なかった。また、併せて廃棄物の処分やリサイクルのために事業所の外に移動する量も把握した。 | |||||||||||||||||
(5) | 業種別の排出状況 | ||||||||||||||||
対象業種のうち製造業22業種、非製造業16業種から排出・移動量の報告があった。 業種別にみると、排出量の多いトルエン、キシレン類、ジクロロメタンは概ねどの業種からも排出されていた。排出量の合計で見ると、機械系製造業と化学系製造業で全体の約7割を占めている。 | |||||||||||||||||
(6) | 非点源からの排出状況 | ||||||||||||||||
農薬散布、自動車などの移動発生源からの排出ガス、パイロット事業の対象外の業種からの排出、家庭・オフィスからの塗料、接着剤、防虫剤などの排出について、環境庁において可能な範囲で推計を行った。対象規模未満の事業所からの排出量の推計も試みたが、さらに推計手法の検討が必要である。 | |||||||||||||||||
(7) | 地域別の排出状況 | ||||||||||||||||
調査実施自治体ごとに集計するとともに、いくつかの調査実施自治体については対象地域をさらに2~3地域に分けて集計した。 地域別に見ると、点源の報告物質数や排出量の多い物質について、地域差が見られたが、トルエン、キシレン類、p-ジクロロベンゼンはほとんどの地域で排出量が多かった。 | |||||||||||||||||
(8) | 平成9、10年度との比較 | ||||||||||||||||
平成9、10年度と平成11年度とは対象地域が異なることなどから一概に集計数値を比べることはできないため、3年間とも報告がなされた事業所のみを抽出し比較したところ、平成11年度に点源からの排出量が多かった20物質のうち、15物質については環境排出量が平成9年度より減少した。 | |||||||||||||||||
継続して回答している事業所からの環境排出量が多い物質の排出量の推移 | |||||||||||||||||
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4 事業者アンケート・ヒアリング結果の概要 | |||||||||||||||||
(1) | 実施方法 | ||||||||||||||||
PRTRの実施に当たっての課題を整理するため、パイロット調査対象事業所に対し事業所報告の調査票等を送付する際に併せてアンケート用紙を送付し、排出・移動量の報告と同時に回収する形でアンケート調査を実施した。また、並行して調査実施自治体環境部局による事業者ヒアリングも行われた。 | |||||||||||||||||
(2) | 調査結果 | ||||||||||||||||
アンケート調査は、パイロット事業の調査票の報告があった5,009事業所のうち62%に当たる3,098事業所から回答があった。調査の内容は、環境庁が示した排出量推計マニュアルの内容、排出量等の把握の困難な物質、排出量等の算出作業及び費用の負担、支援方策、情報提供、事業所における化学物質の管理、PRTR法などについてであり、以下のような点が明らかになった。 | |||||||||||||||||
・ | 推計マニュアルの内容がわかりやすいと回答した事業所は依然半数に達しておらず、さらに改善の余地があることを示している。また、業種別のマニュアルの作成や対象化学物質の検索を容易にしてほしいといった要望があった。 | ||||||||||||||||
・ | 最も時間を要した作業は、取り扱っている物に対象化学物質が含まれているかどうかの調査であるとの回答の割合が最も多く、その割合は昨年度よりも増加した。 | ||||||||||||||||
・ | 平成10年度と比較して作業の負担感は軽くなったと回答した事業所数が、重くなったと回答した事業所数を大きく上回っている。 | ||||||||||||||||
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・ | PRTR法について何も知らないと回答した事業所が約2割あった。また、PRTR法の営業秘密の定義を知らない事業所は約8割に上った。 | ||||||||||||||||
また、ヒアリング調査でも、使いやすいマニュアルの整備の要望が多い、PRTR法の内容を理解していない事業所が多いなどの点が明らかになった。 | |||||||||||||||||
5.今後の課題 | |||||||||||||||||
今回のパイロット事業で、PRTR法やPRTR制度に関する周知、中小規模事業所への周知及び支援、排出量等算出マニュアルの充実、非点源排出源からの排出量の推計のためのデータ収集の必要性などの課題が明らかになった。 | |||||||||||||||||
6.今後の予定 | |||||||||||||||||
平成12年度は法に基づくPRTR制度に可能な限り実施内容をあわせて、24都道府県・6政令指定都市においてパイロット事業を進めており、平成13年4月からの法に基づくPRTR制度の実施に向けて、課題の検討や必要な準備を進めていくこととしている。 | |||||||||||||||||
[環境庁連絡先] | |||||||||||||||||
環境庁環境保健部環境安全課〒100-8975東京都千代田区霞が関1-2-2 Tel:03(5521)8260 Fax:03(3580)3596 e-mail:ehs@eanet.go.jp ホームページ:https://www.env.go.jp/chemi/prtr/risk0.html | |||||||||||||||||
[平成11年度パイロット事業実施自治体連絡先] | |||||||||||||||||
北海道環境生活部環境室環境保全課 宮城県環境生活部環境対策課 東京都環境局環境改善部有害化学物質対策課 神奈川県環境部大気水質課 新潟県環境生活部環境対策課 岐阜県健康福祉環境部環境管理課 愛知県環境部環境政策課 兵庫県県民生活部環境局環境政策課環境情報センター 広島県環境生活部環境政策課環境対策室 山口県環境保全課 仙台市環境局環境部環境対策課 川崎市環境局公害部化学物質担当 北九州市環境局環境保全部環境管理課 | |||||||||||||||||
[本年度パイロット事業実施自治体] | |||||||||||||||||
北海道、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、茨城県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、富山県、石川県、長野県、岐阜県、愛知県、三重県、京都府、兵庫県、広島県、山口県、徳島県、香川県、熊本県、札幌市、仙台市、川崎市、京都市、神戸市、北九州市 (各自治体の一部地域あるいは全域を対象に調査を実施) |
- 連絡先
- 環境庁企画調整局環境保健部環境安全課
課 長: 上田 博三(6350)
補 佐: 早水 輝好(6353)
担 当: 新田 晃 (6358)