報道発表資料

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2000年08月21日

「平成11年度ヒートアイランド現象抑制のための対策手法報告書」について

都市においては、人間の活動によるエネルギー消費が増大するとともに、地表面を覆う人工物の増加により緑地や水面などが減っている。それらの現象は都市の気候にも影響を与えており、生活環境の質にも影響を与えている。都市の気候への影響でとりわけ実感されるのは、「ヒートアイランド現象」と呼ばれる都市域の高温化である。このヒートアイランド現象は、現在様々な都市で観測されており、特に気温の高い夏期における影響が指摘されている。
 本報告書では、ヒートアイランド現象の概要とその影響及び対策手法について整理を行っているほか、都市熱環境の調査手法や評価手法及び地方自治体における施策事例についての紹介も行っている。
 本報告書は、近日中に地方公共団体にヒートアイランド対策に取り組む際の参考となるように送付することとしている。

 環境庁では、ヒートアイランド現象の抑制のため、その対策手法等について内外の文献及び事例調査等の調査研究に着手しているところである。今回の報告書は、平成11年度に財団法人日本システム開発研究所に設けたヒートアイランド現象抑制対策手法検討委員会において検討した結果を取りまとめたものである。
 今後も良好な生活環境の質の向上の実現を目指して、ヒートアイランド対策の手法の確立に向けて取組を進める予定である。

 今回の報告書の構成は以下のとおりとなっている。

・第1章 ヒートアイランド現象に象徴される都市大気環境問題
・第2章 簡単な都市熱環境の調査手法
・第3章 都市熱環境の評価手法
・第4章 ヒートアイランド対策手法
・第5章 地方自治体における施策事例
・第6章 今後の検討課題


報告書要旨

1.「ヒートアイランド現象」とは

 都市部の地表面における熱収支が、都市化に伴う地表面の改変(地面の舗装、建築物)などにより変化し、都心域の気温が郊外に比べて高くなる現象をヒートアイランド現象という。
 以下で述べるように、都市化による人工物の増加、人工排熱の増加などにより、地表面の熱収支が崩れ、都市には熱が溜まるという現象が起きる。都市の気温が郊外に比べ高いことは19世紀から知られており、世界中の多くの都市でヒートアイランド現象が確認されている。ヒートアイランド現象は、都市及びその周辺の地上気温分布において、等温線が都心部を中心として島状に市街地を取り巻いている状態により、把握することができる。

2.都市化による都市気候への影響

 都市化が、都市気候にもたらす主な影響について整理すると以下のようなものがある。
地表面の熱収支への影響
  「人工排熱の増加」
  「地表面における人工物の増加」
人体の熱授受への影響
風への影響
湿度への影響
大気汚染への影響

3.ヒートアイランド現象による問題点

 前述のように、都市化による都市気候への影響がヒートアイランド現象の一因となっていると考えられるが、ヒートアイランド現象が引き起こす問題の主なものを以下に示す。
夏期の都市の不快さ(都市の快適性の問題)
夏期の冷房用電力消費の増大
都市の乾燥化(地表面の改変に伴う蒸発量の減少)
(埃、粉じんが舞うなどの不快さとともに、花粉が地面に固着しないで、舞い上がることで花粉症などの症状をひどくする状況を引き起こす)
冬期の大気汚染の助長

 この他、近年夏期の都市域において頻発している短時間に記録的な雨量を伴う夕立の現象との関連が指摘されている。

4.ヒートアイランド対策手法

 都市の熱収支の改変を抑制し、ヒートアイランド現象の抑制、さらに都市の生活環境の改善を行う対策の方向としては、以下のようなものが考えられる。
1.都市の人工排熱を削減する。
2.地表面被覆の改変による熱収支変化を少なくする。
3.都市の構成、あり方を変えていく。

 この他、施策上の対策については以下のようなものが考えられる。
1.地域環境計画等への反映
2.地球温暖化防止実行計画への反映
3.道路、施設整備における配慮

5.具体的なヒートアイランド対策

 具体的な対策を整理すると以下のようになる。

(1)人工排熱量の低減
[1]設備の省エネルギー
エネルギー消費機器の高効率化、エネルギー消費機器の最適利用、空調システムの高効率化、空調システムの適切な運転
[2]建物の改良
建物の断熱(材質、断熱材、窓ガラスの断熱)、建物の緑化、保水性建材の適用による熱負荷低減、屋根材・壁材の代替による反射率の改善(建物の熱負荷の低減)
[3]自然エネルギーの利用
太陽熱利用、太陽光発電、複数自然エネルギーの併用(ハイブリッド化)
[4]未利用エネルギーの利用
未利用用水の利用(海水、河川水、下水等)、都市排熱の利用(工場、地下鉄、ビル、発電所、変電所等)、廃棄物からのエネルギー回収(廃棄物発電、熱供給)
[5]地域対策
地域冷暖房システムの構築、交通需要マネジメントの実施、都市交通量の低減

(2)地表面被覆の改善
[1]舗装材改善
反射率の改善、保水性の改善
[2]反射率
建物の反射率改善(淡色化)、窓ガラスの反射率改善
[3]緑化
公園緑地、森林の保全・整備、河川の保全、建物緑化(壁面緑化、屋上緑化)、沿道緑化(街路空間の緑化)、庭の植樹
[4]水面
河川の開きょ化、公園における水面の設置

(3)都市形態等の改善
[1]風の道、水の道の積極的利用
建物配置等の改善、風系、水系、地形等地域特性の利用
[2]エコエネルギー都市の実現
エネルギーのカスケード利用、熱輸送ネットワークの構築
[3]循環型都市の形成
エネルギーの有効利用、物質のリサイクル・有効利用を総合的に実現した環境共生都市の構築

6.その他

 上記の他に、以下の事項についての紹介を行っている。
都市熱環境の視点から気象観測の方法について自治体担当者が知っておくべき事項
ドイツの都市計画における「風の道」の取組の紹介
地方自治体によるヒートアイランド対策の施策事例
連絡先
環境庁大気保全局企画課大気生活環境室
室    長 : 藤田 八暉(内線6540)
 室長補佐 : 平塚 勉  (内線6541)
 担    当 : 弥吉 元毅(内線6546)