報道発表資料

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2011年03月22日
  • 再生循環

三重県桑名市五反田地内不法投棄事案に係る特定支障除去等事業実施計画(案)に対する特定産業廃棄物に起因する支障の除去等に関する特別措置法第4条第4項の規定に基づく環境大臣の同意について

 環境大臣は、総務大臣との協議を経て、特定産業廃棄物に起因する支障の除去等に関する特別措置法(産廃特措法)第4条第4項の規定に基づき、標記実施計画(案)に平成23年3月18日(金)付けで同意した。

1.事案の概要等

 本事案は、三重県桑名市において、産業廃棄物処理業者が山林に不法投棄を行い、揮発性有機化合物(VOC)等により汚染された地下水が周辺に拡散した事案。平成13年度から県が行政代執行に着手し、このうち平成17年度から平成19年度まで、産廃特措法に基づく特定支障除去等事業として原位置環境修復を実施してきた。これまでに、不法投棄地を鉛直遮水壁で囲い込み汚染地下水の拡散防止措置を講じ、遮水壁内外の汚染地下水を揚水浄化により環境修復を図った結果、平成19年度末までに不法投棄地及びその周辺の地下水は、目標としたレベルまでの浄化を達成した。
 しかし、平成21年11月30日付けで新たに地下水及び公共用水域の環境基準として1,4-ジオキサン等3項目が設定され、調査の結果、1,4-ジオキサンが当該地の周辺地下水で最大2.7mg/l(環境基準の54倍)、不法投棄地内(遮水壁内)の地下水で最大18mg/l(環境基準の360倍)が検出され、生活環境保全上の支障のおそれを除去する対策を実施する必要が生じたことから、支障除去等事業を実施するもの。

○投棄場所:
三重県桑名市大字五反田字多々星1701番
○投棄面積:
2,906m2
○投棄時期:
平成7年4月~平成8年3月頃
○原因者:
[1](株)七和工業
員弁郡東員町大字中上403番地の1
[2]許可の内容:
産業廃棄物処理業(収集運搬・最終処分)
[3]不法投棄に関与した役員等
代表取締役
元従業員(土地提供者)
○廃棄物の種類:
汚泥、燃え殻、廃油、鉱さい、がれき類等
○廃棄物の量:
約27,000m3(※ボーリング調査結果より推定)

○前回の大臣同意:
平成17年3月31日
○これまでの事業費:
約14億7千万円(平成13~平成19年度末時点)
うち、産廃特措法に基づく特定支障除去等事業に係る事業費は、約2億7千万円(平成17~平成19年度末)

2.生活環境保全上の支障

 1,4-ジオキサンで汚染された地下水等が嘉例川に流入することで農業用水の利水や、下流で合流する員弁川での内水面漁業、水道水源の利水に影響を及ぼすおそれ。

3.支障除去等事業の概要

(1)汚染地下水の拡散防止

 不法投棄地は周囲に遮水壁が設置されているものの、不法投棄地内(遮水壁内)及び不法投棄地周辺(遮水壁外)の地下水が1,4-ジオキサンによって高濃度に汚染されていることから、遮水壁内の地下水を揚水することにより、地下水位を低下させ、遮水壁外の地下水位より低く管理することで、遮水壁内の汚染地下水の遮水壁外への拡散を防止する。その上で、すでに拡散した遮水壁外の汚染地下水も揚水し、バリア井戸工法(※1)により汚染拡散防止を図る。

(2)揚水した汚染地下水の浄化

 揚水した汚染地下水は、1,4-ジオキサン以外に有機物等を含むことから、既設の水処理施設で有機物等を除去した上で、新たに整備する促進酸化施設で1,4-ジオキサンを含む汚染地下水を促進酸化法(※2)により分解・浄化し、放流する。

(※1)
バリア井戸工法…汚染地下水の揚水井戸を設置して揚水することにより、汚染地下水の拡散を抑制する工法。
(※2)
促進酸化法…オゾンと紫外線等を用いて有機化合物を酸化分解する工法。ダイオキシン含有排水の分解技術として既に実用化されている技術である。

(3)汚染地下水の拡散防止のためのモニタリング

 揚水井戸及び観測井において地下水の1,4-ジオキサン濃度を測定するとともに地下水位を調査する。また、処理水の放流による嘉例川への影響を把握するために放流水及び河川水の水質モニタリングを実施し、生活環境保全上の支障を生じさせるおそれがないことを確認する。

4.事業費

約352百万円

5.事業実施期間

平成23年度~平成24年度

6.責任追及の状況

(1)不法投棄行為者等に対する措置等

 1,4-ジオキサンによる地下水汚染の原因となる不法投棄を行った(株)七和工業、同社の代表取締役、元従業員(土地提供者)に対し、平成22年6月15日、廃棄物の撤去、地下水汚染の浄化等を内容とする措置命令を発出し、その履行を求めたが、1社2名ともに資産が全くないことから命令を履行できない旨の顛末書を提出した。
 排出事業者については、(株)七和工業の役員及び元役員に実施した事情聴取、掘削廃棄物の調査によっても排出事業者を特定する有力な情報を得ることはできていない。今後、新たに把握することは困難であるが、新たな排出事業者が判明した場合には、徹底した責任追及を行う。

(2)費用の求償

 平成21年度末までの間に行政代執行に要した費用は1,583,629,469円で、平成22年6月30日までの納入額(公売による換価等含む)は2,952,101円となっており、未納額は、1,580,677,368円(平成22年6月30日現在)である。
 被命令者には未納額を支払えるだけの資力がないが、粘り強く納付を要請し、平成21年8月から被命令者1名、平成22年5月からは被命令者1社2名から月々僅かであるが分納させている。
 今後とも、被命令者に対しては、厳しく求償を行うとともに、原因者や排出事業者など、不適正処分に関与した者の調査を継続して行い、違法な行為等が確認できた場合は、徹底した責任追及を行っていく。

7.行政対応の検証と再発防止策

 平成17年3月31日の大臣同意以前において、不法投棄の再発防止を目的とした行政対応検証(第1次検証)がなされ、監視指導体制が十分でないとの検証結果を受け、県は監視指導体制の強化や職員の人材育成等に取り組んできた。今回、1,4-ジオキサンによる新たな地下水汚染が発覚し、第1次検証以降の行政対応の検証(第2次検証)がなされた。
 その結果、[1]環境基準設定後の対応は迅速であり評価できるが、要監視項目に設定された時点で汚染を予見し、より早い段階で実態把握できたのではないかということ、[2]広く即時性を持った情報提供のためホームページの活用が望まれること、[3]原因者に対する費用求償に努め、確知できていない処分者や排出事業者に関する調査の努力を続けられたいとの検証がなされた。
 検証結果を踏まえ、[1]不法投棄された廃棄物の種類や検出される有害物質等、把握できた情報をもとに化学物質のリスクの把握に努め、より迅速な対応ができるようにするとともに、[2]現場周辺の住民の方々だけでなく、広く県民の方々に即時性を持って情報を提供するため、県のホームページの充実を図ることとした。
 また、[3]これまでの調査で、既に判明している以外の処分者や、排出事業者に関する供述や証拠書類は得られておらず、新たな情報を得ることは困難な状況だが、あらゆる機会を通じて、確知できていない処分者や排出事業者に関する情報の把握に努めることとした。

連絡先
環境省廃棄物・リサイクル対策部適正処理・不法投棄対策室
代表(03)3581-3351
直通(03)5501-3157
室長:吉田 一博(内線 6881)
室長補佐:大川 仁(内線 6884)
担当:日浦 憲太郎(内線 6883)
担当:近藤 淳史(内線 6883)