報道発表資料

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2000年10月18日

マテリアルフローの国際比較に関する共同研究報告書の出版について

国立環境研究所では、経済活動に伴う資源消費量や廃棄物排出量を体系的に把握するマテリアルフロー勘定に関する国際比較研究を、米国、ドイツ、オランダ、オーストリアの調査研究機関と連携して実施してきたが、今般、その第2期の研究報告書を共同出版した。報告書は”The Weightof Nations”(国家の重さ)という表題で、”Material outflows from industriale conomies”という副題のとおり、これら5つの先進工業国の経済活動から環境への排出物フローの総量とその内訳、経年変化を比較している。1997年に先に出版した第1期の報告書とあわせ、先進工業国の資源の大量消費、大量廃棄の現状と推移を示し、持続可能な発展に向けて、大量のモノに依存した経済社会の転換の必要性を指摘している。わが国の一人当たりの直接排出物量は約11トン/年であり、他国よりやや小さいが、二酸化炭素排出量の伸びなどにより、この指標は1980年代半ばを底として微増傾向にある。
1.報告書の内容
 1997年春に出版したResource Flows(資源の流れ)と題する第1期の報告書では、環境から経済活動への資源のインプット(投入)の総量に関する指標を提案し、その数値の国際比較を行なった。これに対し、今回は経済活動から環境へのアウトプット(排出)の総量に関する指標、およびインプットとアウトプットとの差から、どれだけの物資が蓄積(ストック)されたかを表す指標を提案し、その国際比較を行なった。
報告書では、排出物の総量のほか、温室効果ガスとして知られる二酸化炭素や大気汚染物質など大気への排出物、埋立処分される廃棄物、散布される肥料や農薬など土地への排出物、水質汚濁物質など水域への排出物といった環境媒体別の内訳、農業、建設、エネルギー供給、鉱工業、家庭、運輸といった経済活動の種類別の内訳も示している。
 報告書は英文で、本文約40頁のほか、5カ国各々についての国別報告が数表とともに巻末資料として収録され、全125頁。

2.見出された主な結果
経済生産当りでみた資源消費量や排出物量、すなわち資源効率や環境効率は向上しているが、一人当りあるいは総量でみた資源消費量や排出物量は増加を続けており、経済成長と物質消費との「デ・カップリング(分離)」が進んでいるとは言えない。
経済活動に投入された資源のうち、半分から4分の3が、同じ年のうちに排出ガスや廃棄物として環境に戻されている。
一部の有害物質の排出は、規制による削減に成功したが、多くの潜在的に有害な物質の排出は増加を続けている。
化石燃料の採掘(石炭採掘時に発生するズリなど)や使用(燃焼による二酸化炭素の排出など)が、排出フローの大半を占めている。
資源の消費や廃棄物の排出に関する我々の知識は十分ではなく、経済活動を出入りするこれらの「モノ」の量を体系的に記帳した「物量勘定」と呼ばれる統計表を整備し、経済統計と並行して利用できるようにすることが緊急課題である。

3.備考
(1)関連研究予算
 本研究所においては、環境庁の地球環境研究総合推進費による研究課題「持続可能な国際社会に向けた環境経済統合分析手法の開発に関する研究」の一環として実施したもの。

(2)報告書の入手方法等
 国立環境研究所から無償配布(送料のみ要負担、先着順)。また、米国の世界資源研究所(WRI)のホームページで全文を閲覧、ダウンロード可能。(http://www.wri.org/materials/weightofnations.html

(3)関連する国際会議
 本報告書の内容に密接に関係する国際会議として、経済協力開発機構(OECD)環境政策委員会環境の状況ワーキンググループによる「マテリアルフロー勘定に関する特別セッション」の初会合が10月24日にパリで開催される。本共同研究の報告のほか、OECD諸国における調査研究への取り組み、政策決定への活用、基盤となる統計情報の整備などについて討議される予定であり、本研究の日本の担当者である国立環境研究所森口資源管理研究室長が同会合の議長を務める予定。

<報告書入手等の問合わせ先>
環境庁国立環境研究所 社会環境システム部 森口祐一
Tel 0298-50-2540  Fax 0298-50-2572  e-mail:moriguti@nies.go.jp

添付資料

連絡先
環境庁国立環境研究所
主任研究企画官        高木 宏明(0298-50-2302)
 (担当)社会環境システム部  森口 祐一(0298-50-2540)