報道発表資料
ナホトカ号油流出事故に関して、水質及び底質環境への影響を調査したが、全体的にみると、今回の油流出事故に伴う広範な油汚染は認められなかった。
水質調査では、船首部漂着点付近の汀線部等一部地点で重油含有成分等が微量検出されたが、1月に国立環境研究所が実施した緊急調査結果と比較するとその程度はさらに軽微であり、油の拡散・分解が進んでいることが伺えた。
今後とも、これら局所的な油の存在や漂着した油の水質への影響にも留意した上で、漂着海岸付近を中心に水質等の監視が引き続き重要と考えられる。
水質調査では、船首部漂着点付近の汀線部等一部地点で重油含有成分等が微量検出されたが、1月に国立環境研究所が実施した緊急調査結果と比較するとその程度はさらに軽微であり、油の拡散・分解が進んでいることが伺えた。
今後とも、これら局所的な油の存在や漂着した油の水質への影響にも留意した上で、漂着海岸付近を中心に水質等の監視が引き続き重要と考えられる。
- 1.調査目的
- タンカーナホトカ号事故に関し、流出した重油が山形県から島根県に及ぶ広範囲にわたる海岸に漂着しており、重油による関連海域の水質及び底質環境への影響が懸念される。このため、同海域における水質及び底質の調査を行い、重油による水質及び底質環境への影響を把握する。
- 2.調査地点
- 山形県から島根県にかけての9府県の海域における主な環境基準点及び重油の漂着した海岸付近 計80地点(別添地図参照)
- 3.調査(採水)時期
- 平成9年3月6日~3月17日
- 4.調査項目
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(1)水質(海面下0.5m)
【油関連項目】 ○ 油分:n-ヘキサン抽出物質(重量法)、四塩化炭素抽出物質(赤外吸光法) ○ 重油含有成分:ベンゾ(a)ピレン等多環芳香族炭化水素、ジベンゾチオフェン等有機硫黄化合物 ○ 油処理剤(非イオン系界面活性剤) ○ 浮遊タール(海面上の四塩化炭素抽出物質) ○ 浮遊タール又は漂着油中の重油含有成分等(8地点のみ):n-パラフィン、ニッケル、バナジウム 【環境基準項目】 ○ 健康項目:農薬を除くベンゼン等19項目 ○ 生活環境項目:pH、溶存酸素、COD、(n-ヘキサン抽出物質:上述) 【その他】 ○ 浮遊物質量、水温、塩分等 (2)底質
【油関連項目】 ○ 含有油分:n-ヘキサン抽出物質(重量法)、四塩化炭素抽出物質(赤外吸光法) ○ 溶出油分:四塩化炭素抽出物質(赤外吸光法) ○ 重油含有成分:ベンゾ(a)ピレン等多環芳香族炭化水素、ジベンゾチオフェン等有機硫黄化合物 ○ 油処理剤(非イオン系界面活性剤) 【その他】 ○ pH、含水率等 - 5.調査結果
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(1)水質
ア.油分等 ○ 油分の指標となる項目のうち、水質環境基準生活環境項目であるn-ヘキサン抽出物質(基準値:検出されないこと)については、いずれの地点からも検出されなかった(定量下限:0.5mg/L)。 ○ また、油分について別の指標である四塩化炭素抽出物質でみても、1地点を除いて検出されなかった(定量下限:OCB混合標準物質換算0.02mg/L)。
なお、検出された地点は港湾内のコンクリート壁で囲まれている閉鎖的な箇所であり、海水交換性が悪く漂着した油の一部が残っていたことによると考えられるが、近傍の他地点のデータをみても港湾外への影響はほとんどなく、極めて局所的な汚染と考えられる。○ 海面上の浮遊タールについては一部海域を除き検出されたが、目視可能な大きさのものは少なかった(最大径約3mm)。
また、検出値もほとんどが0.1mg/m2以下で通常の日本海における値と同程度であったが、船首部漂着点付近の汀線部等では他と比較して高い値が認められた。(参考表-1参照)イ.重油含有成分 ○ 重油含有成分のうち、多環芳香族炭化水素については、従来の環境庁の調査(「化学物質環境汚染実態調査」)における測定レベル(定量下限:0.1μg/L)を超えるような検出はいずれの地点からもなかったが、国立環境研究所が行った緊急環境影響調査の中間結果と比較する観点から感度を上げてみた場合には、船首部漂着点付近の汀線部(陸上からの採水地点)等で微量ながら確認された。
検出値についてベンゾ(a)ピレン濃度でみると、最大で0.0037μg/Lであり、緊急環境影響調査(1月15~17日)時の最大値(0.036μg/L)の約1/10になっており、流出油の拡散・分解が促進していることが示唆された。(参考表-2参照)
[参考:WHO飲料水ガイドライン値 ベンゾ(a)ピレン 0.7μg/L]○ また、有機硫黄化合物(ジベンゾチオフェン)については上述の港湾内以外では検出されなかった。 ウ.環境基準項目その他 ○ 環境基準健康項目については、重油含油成分の一つであるベンゼンがいずれの地点からも検出されなかったなど、今回の事故による影響は認められなかった。 ○ 生活環境項目についても、上述のようにn-ヘキサン抽出物質(油分)が検出されなかったほか、その他の項目においても特段の影響は認められなかった。 ○ また、油処理剤(非イオン界面活性剤)はいずれの地点からも検出されなかった。 (2)底質
○ 一部海域の底質で油関連項目(多環芳香族炭化水素等)が検出されたが、その分布は油の漂着状況や水質調査結果とは明確な関係がなく、また濃度も過去の調査結果(「化学物質環境汚染実態調査」)の範囲内であるなど、今回の事故による特段の影響は認められなかった。 (参考)
表-1:海面上の浮遊タール量分布<0.001 mg/m2 0.001~
0.01未満0.01~
0.1未満0.1以上 全体(地点数) 15 40 18 7 うち
環境基準点13 34 13 0 注: 海洋バックグランド汚染観測報告(気象庁:1990~1994)によると、日本近海の浮遊タールは<0.001~5.5mg/m2の範囲内。 表-2:水質のベンゾ(a)ピレン濃度分布
<0.0005 μg/L 0.0005~
0.001未満0.001~
0.01未満0.01以上 全体(地点数) 75 2 3 0 うち
環境基準点59 1 0 0 [参考:WHO飲料水ガイドライン値 ベンゾ(a)ピレン 0.7μg/L]
注: 環境基準点でベンゾ(a)ピレンが検出された地点は、他の検出地点と多環芳香族炭化水素(6物質)の組成が異なることから、今回の油流出事故との関連は低いと考えられる。
添付資料
- 連絡先
- 環境庁水質保全局水質規制課
課長 畑野 浩 (内線6640)
補佐 牛谷 勝則(内線6643)