報道発表資料

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1997年05月07日

ダイオキシン排出抑制対策検討会及びダイオキシンリスク評価検討会の報告書について

環境庁は、ダイオキシン対策の推進を図るため、平成8年5月、「ダイオキシン排出抑制対策検討会」及び「ダイオキシンリスク評価検討会」の2つの検討会を設置し、同検討会は、昨年12月、中間報告書を取りまとめた。その後各検討会は引き続き検討を行い、このたび各検討会の最終報告書を取りまとめた。

(1)ダイオキシン排出抑制対策検討会
 本報告書においては、1 環境中のダイオキシン濃度、2 発生源と排出実態、3 排出抑制技術、4 測定・分析方法についてとりまとめるとともに、ダイオキシンリスク評価検討会の結果を踏まえ、排出抑制の推進方策として以下のような提言を行った。
 ダイオキシン類の主要な発生源である大気系の発生源に対して規制的措置の導入が必要。具体的には、
 1 ダイオキシン類を大気汚染防止法の指定物質に指定し、排出抑制対策を推進することが適当。
 2 指定物質に係る措置の対象となる施設(指定物質排出施設)に一般廃棄物及び産業廃棄物の焼却施設(廃棄物焼却炉)等を指定することが適当。
 3 廃棄物焼却炉等に対するばいじんの排出規制の強化も、ダイオキシン類の低減に有効。
 環境庁としては、今後、この検討結果を踏まえ、中央環境審議会において具体的な排出抑制対策のあり方についてご審議いただいた上、所要の政令改正等を行うこととしている。

(2)ダイオキシンリスク評価検討会
 本報告書では、ダイオキシン類に関する最新の知見を踏まえ、「健康リスク評価指針値」が設定されるとともに、暴露評価の結果を踏まえ、我が国におけるダイオキシン類に係るリスク評価を行った。           
1.経 緯

 ダイオキシン排出抑制対策検討会(座長:平岡正勝 京都大学名誉教授)は、昨年5月に環境庁大気保全局と水質保全局が設置したものであり、ダイオキシン類の各種発生源からの排出実態や排出抑制技術の動向及びダイオキシン排出抑制対策のあり方について検討を進めてきた。同検討会は、昨年12月にダイオキシン排出抑制対策の基本的考え方について中間的にとりまとめており、今般、最終的な検討結果をとりまとめた。
 また、同時期に環境保健部に設置されたダイオキシンリスク評価検討会(座長:鈴木継美 前国立環境研究所所長)においては、人の健康影響の未然防止の観点からダイオキシンに係るリスク評価についての検討を進め、昨年12月に中間報告書をまとめており、今般、最終報告書をとりまとめた。

2.結果の概要

(1) ダイオキシン排出抑制対策検討会

-「6.排出抑制の推進方策」の要約- 

 {1} 基本的考え方
  ダイオキシン類の排出実態、大気、水、土壌等の環境中における挙動などの科学的知見は、現状では必ずしも十分な状況ではないが、長期暴露に伴う健康影響が顕在化してから対策に取り組むのでは手遅れになるため、科学的知見の充実を図りつつ、健康影響の未然防止の観点に立って、実施可能な対策から着実に推進することが重要。
  このため、規制的措置の導入、事業者等による自主的な取組の促進など、ダイオキシン類に関する総合的かつ計画的な排出抑制対策を推進することが必要。

 {2} 排出抑制のための施策  ダイオキシン類の環境中濃度を低減し、健康リスク評価指針値(人体摂取量5pg/kg/日)の確保を図るため、規制的措置、事業者等による自主的な取組の促進等様々な政策手法を適切に推進することが必要。

  規制的措置の導入に当たっては、健康影響の未然防止の観点から、多種多様な発生源や環境中の挙動等に関する科学的知見の充実を図りつつ、ダイオキシン類の発生源の排出実態や適用可能な排出抑制技術等を踏まえ、対象とすべき発生源や排出抑制レベルを検討することが必要。
  現時点の我が国における発生源の排出実態をみると、燃焼に伴う大気系の発生源が主要なものと判断され、これら発生源の排出実態に関する情報を集積しつつ、排出量の多い又は排出濃度の高い発生源を順次、規制的措置の対象とすることが適切。

  大気系の発生源に対する規制的措置の導入に際しては、施策の効果を評価できるよう、大気環境濃度低減のための目標を設定することが有効。ダイオキシン類は、呼吸器を主な暴露経路とする従来の大気汚染物質とは異なるものであることから、環境中の挙動等に関する情報を引き続き集積することが重要。
  具体的な措置としては、ダイオキシン類による健康影響の未然防止の観点から、大気汚染防止法に基づく指定物質として指定し、排出抑制対策を推進することが適当。
  ・指定物質排出施設としては、ダイオキシン類を排出する施設のうち、排出量が多いと考えられ、対策の早期導入が可能である施設を優先して指定することが適当。この対象施設として、廃棄物焼却炉等が考えられる。
  ・指定物質抑制基準は、現時点で実施可能な排出抑制対策を講じた場合に達成することが可能なものとすることが適当であり、対策技術の進展等に応じて見直していくことが重要。特に、新設施設については、施設の設計段階から排出抑制対策を検討できるため、実施可能な最善の対策技術も考慮して検討することが必要。

  また、排煙中のダイオキシン類は、科学的知見は少ないものの、その多くがばいじんに吸着されていると考えられるため、主要な発生源である廃棄物焼却施設等に対するばいじんの排出規制の強化も、ダイオキシン類の低減に有効。

  規制的措置と併せて、ダイオキン類の排出に関係するすべての者が自らの役割に応じて的確に排出抑制に努める自主的取組を併せて推進することも極めて重要。
  ・特に、事業者は、その事業活動に伴うダイオキシン類の発生・排出状況を把握するとともに、排出抑制のための自主的・積極的な取組を行うことが必要。
  ・国及び地方公共団体は、事業者に対して排出抑制技術に関する情報等の提供を行うことが必要。

  排水の排出に伴う排出抑制対策については、紙パルプ製造工場から排出されるダイオキシン類はこれまでの対策により排出量が大幅に削減されており、引き続き各種対策、モニタリングを継続するとともに、その他の発生源における排水経由の排出実態に関する知見を集積し、その結果を踏まえて排出抑制対策に反映させることが重要。

  農薬については、代替剤への移行等により、現在ではダイオキシン類を含むものはほとんどないが、今後とも、ダイオキシン類による全体のリスク削減を図る観点から、これらの取組を継続することが必要。

 {3} 環境モニタリング  排出抑制対策を長期にわたり着実に推進していくためには、各種発生源の排出実態、大気、水、土壌等の環境中の濃度、暴露量や摂取量、さらに健康リスクに関する情報を体系的、継続的に収集し、対策の効果を評価することが重要。このため、ダイオキシン類に関する環境モニタリングの充実を図ることが必要。

(2)ダイオキシンリスク評価検討会
 {1}ダイオキシン類の毒性に関して評価を行い、人の健康を保護する上で維持されることが望ましいレベルとして「健康リスク評価指針値」を設定することとし、その値を体重1kg当たり一日の摂取量で5ピコグラム(5pg/kg/日)とした。

 {2}我が国におけるダイオキシン類の暴露の状況に関して評価を行い、一般的な生活環
境での暴露を0.3~3.5pg/kg/日、一般的な生活環境よりも高い暴露を受ける条件での暴露を5pg/kg/日程度と推定した。

 {3}以上の結果から、我が国におけるダイオキシン類に係るリスク評価として以下のようにまとめられた。
  ア.一般的な生活環境においては、現時点で人の健康に影響を及ぼしている可能性は小さいと考えられるが、現在の暴露レベルは健康リスク評価指針値に比べて十分低いとは言えない状況にあるので、長期的により高い安全性を確保する観点から、今後、ダイオキシン類の環境中濃度の低減を図ることが望ましいと考えられる。
  イ.一般的な生活環境よりも特に高い暴露を受ける条件においては、暴露量の推定値が健康リスク評価指針値と同程度以上となることがあり得ることから、今後、健康リスクをより小さくするため、ダイオキシン類の環境中濃度の低減を図る必要があると考えられる。

 {4}その他
  ア.中間報告書に関する質問、意見に対する回答
   昨年12月にとりまとめられた中間報告書に関する質問、意見をFAX、電子メールで受け付けたが、寄せられた質問等に対して検討会において回答が作成され、報告書の巻末に添付された。
  イ.国際がん研究機関(IARC)の評価結果について 本年2月にWHOの国際がん研究機関(IARC)の作業部会において、ダイオキシン類の発がん性についての評価が行われ、2,3,7,8-TCDDについては、人に発がん性がある等とする評価結果が発表された。
 ダイオキシンリスク評価検討会では、12月の中間報告後、IARCの作業部会に提出された既存の疫学調査等のデータ等も考慮し、検討が行われたが、2,3,7,8-TCDDが人に対して発がん性があるということについては、中間報告に既に織り込まれており、健康リスク評価指針値(体重1キログラム1日当たり5ピコグラム)については、変更の必要はないものと判断された。


 ※なお、これらの報告書の概要については、環境庁のホームページにも掲載されている。
 (環境庁ホームページのアドレス http://www.eic.or.jp)

3.今後の予定
 環境庁としては、ダイオキシン排出抑制対策検討会の検討報告を踏まえ、中央環境審議会大気部会において排出抑制基準の設定方法等の具体的な排出抑制対策のあり方についてご審議いただいた上、できる限り速やかに所要の政令改正等を行うこととしている。

*「(参考)検討会委員及び検討状況」については、添付ファイル参照。
連絡先
環境庁大気保全局大気規制課
課長    飯島 孝  (6530)
 大気調査官 山口 泰正 (6533)

環境庁水質保全局水質規制課
課長    畑野 浩  (6640)
 課長補佐  牛谷 勝則 (6643)

環境庁企画調整局環境保健部環境安全課環境リスク評価室
室長    鈴木 英明 (6340)
 室長補佐  牧谷 邦昭 (6341)