報道発表資料

この記事を印刷
2000年10月24日

タイヤ単体騒音実態調査検討会中間報告について

環境庁では、大気保全局に学識経験者からなる「タイヤ単体騒音実態調査検討会」(座長:黒田道雄成蹊大学工学部教授)を平成10年5月に設置し、タイヤ単体騒音規制の有効性等について検討するための基礎調査を行い、この度「中間報告書」をとりまとめた。
 この報告書では、タイヤ区分別に新車用タイヤと市販用タイヤの販売数量調査結果、タイヤ単体騒音レベル調査結果及びタイヤ騒音規制を導入した場合等の道路交通騒音の低減効果の推定例等が示されている。
 同検討会では、引き続きタイヤ騒音規制の有効性等について検討することとしている。

1.経緯等

   自動車交通騒音は、幹線道路の沿道地域を中心に依然として厳しい状況が続いており、その一層の低減が必要となっている。このため、自動車単体に対する騒音規制が逐次強化されている。
 自動車騒音規制の強化によりエンジン等から発生する騒音がさらに低減されると、タイヤと路面との接触により発生するタイヤ騒音の影響が相対的に大きくなることから、自動車騒音の一層の低減のためには、タイヤ騒音の抑制について検討する必要がある。
 また、国連/ECE(欧州経済委員会)等ではタイヤ単体の騒音規制が検討されており、さらに平成7年2月の中央環境審議会自動車騒音専門委員会報告において
  1.  仕様の異なるタイヤへの変更による使用過程車の騒音増加を抑制する手法としては、欧州で検討中のタイヤ単体騒音規制について検討する必要がある。
2.  騒音対策を進めるに当たっては、今後、タイヤ単体騒音規制の有効性と実施の可能性について検討する必要がある。
等の指摘を受けている。
 このため、平成10年5月、環境庁大気保全局に「タイヤ単体騒音実態調査検討会」を設置し、タイヤ騒音規制の有効性等について検討するための基礎調査を行ってきたところであり、今般、この中間報告をとりまとめた。

 

2.中間報告書の概要

(1) タイヤ区分別の販売数量調査結果
   平成9年におけるタイヤ区分別の新車用タイヤ及び市販用タイヤの販売数量調査結果は以下のとおり
  1. 全体では、新車用タイヤが33%、市販用タイヤが67%の割合である。
2. 各区分の販売数量比率は、乗用車用タイヤ69%、小型トラック用タイヤ23%、トラック・バス用タイヤ8%である。
3. 乗用車用タイヤでは、タイヤ呼び幅「165超え215以下」が販売数量の60%以上を占めている。
4. 小型トラック用タイヤ及びトラック・バス用タイヤでは、バイアスタイヤも使用されているがラジアルタイヤの販売比率が80%を超えている。
 
(2) タイヤ単体騒音等の実測調査結果
   販売されている各種タイヤの騒音レベルを把握する等のため、各種の試験法にて実測した結果は、以下のとおり
  1. ECE法タイヤ単体騒音試験
(試験速度は80km/h(中型車及び大型車は70km/h))
  ・乗用車用タイヤ :67.9~74.8dB
・オフロード車用タイヤ :72.2~76.4dB
・小型車用タイヤ :70.7~78.2dB
・中型車用タイヤ :68.8~79.8dB
・大型車用タイヤ :72.3~81.7dB
 各種タイヤとも騒音値は広い範囲で分布しており、乗用車用タイヤは、全般的にタイヤの呼び幅が大きくなるほど騒音レベルが高くなる傾向である。
また、小型車、中型車、大型車用タイヤともバイアスラグタイヤは他のタイヤに比べ騒音レベルが高い傾向にある。
 なお、平成9年に販売された国内タイヤの内、ECEの規制値案を超えている割合は全タイヤの5.2%であった。(内訳は、乗用車用タイヤ(オフロード車用タイヤを含む)は2.8%、小型車用タイヤは9.9%、中型車用・大型車用タイヤは、12.7%)
 
  2. JASO法タイヤ騒音試験
(試験速度は80km/h(中型車及び大型車は70km/h))
  ・乗用車用タイヤ :66.7~73.5dB
・オフロード車用タイヤ :70.6~75.9dB
・小型車用タイヤ :69.8~80.5dB
・中型車用タイヤ :71.4~85.8dB
・大型車用タイヤ :76.5~86.7dB
3. 定常走行騒音試験
(試験速度は80km/h(中型車及び大型車は70km/h))
  ・乗用車用タイヤ :68.4~73.7dB
・オフロード車用タイヤ :71.2~76.2dB
・小型車用タイヤ :69.9~82.1dB
・中型車用タイヤ :76.0~86.0dB
・大型車用タイヤ :77.9~88.0dB
(3) 定常走行騒音に対するタイヤ騒音の寄与率
   試験速度80km/h(中型車及び大型車は70km/h)時における各種試験車両と試験タイヤの組み合わせによる定常走行騒音に対するタイヤ騒音の寄与率は以下のとおり
 
  ・乗用車(軽自動車を除く) :79.4~100%
・軽乗用車 :53.7~72.4%
・オフロード車 :67.6~93.3%
・小型車 :37.2~97.7%
・中型車 :32.4~95.5%
・大型車 :44.7~97.7%
 乗用車のタイヤ騒音の寄与率は、全般的に大きい傾向であるが、小型車、中型車及び大型車のタイヤ騒音の寄与率は、いずれも広い範囲で分布している。
また、大型車の2軸6輪車と3軸10輪車のタイヤ騒音の寄与率は、タイヤ数の多い3軸10輪車の方が、全般的に大きくなる傾向。
 
(4) 各試験法間の相関
   各タイヤ区分におけるECE法タイヤ単体騒音試験(試験速度80km/h(中型車及び大型車は70km/h)時)、JASO法タイヤ騒音試験(試験速度35・50・80km/h(中型車及び大型車は70km/h)時)、定常走行騒音試験(試験速度80km/h(中型車及び大型車は70km/h)時)の相互の相関関係は、
  1. 乗用車用タイヤ及びオフロード車用タイヤに係る相関係数は、ECE法タイヤ単体騒音と定常走行騒音35km/h時の場合を除き0.9以上
2. 小型車用タイヤに係る相関係数は、ECEタイヤ単体騒音と定常走行騒音35・50km/h時の場合を除き0.8以上
3. 中型車・大型車用タイヤに係る相関係数は0.7以上
 全般的に各タイヤ区分とも試験速度が高くなるほど各試験法間の相関係数は高くなる傾向。
 
(5) 諸外国のタイヤ騒音規制の動向
   現在のところ、タイヤ騒音規制を導入している国はないが、高速走行時等の道路交通騒音の低減を目的としたタイヤ騒音規制の導入に向け、EU(欧州連合)や国連/欧州経済委員会(UN/ECE)等において、具体的な試験法や規制値についての検討が行われている。
 
(6) タイヤ騒音規制を導入した場合等の道路交通騒音低減効果(推定例)
   全ての車両が昭和57年~62年規制適合車である場合を基準として、ECEで検討されているタイヤ騒音規制を導入した場合等の道路交通騒音LAeqの低減効果等の推定結果は、
  1. タイヤ騒音規制を導入し、規制値にECE案を採用した場合、高速自動車道で0.1~0.3dB、一般国道で最大0.2dB低減
2. 全車が平成10~13年規制適合車に代替された場合、高速自動車道で1.1~1.3dB、一般国道で1.2~1.4dB低減
3. タイヤの交換が行われている場合は、新車用タイヤから交換が全く行われていないと仮定した場合よりも0.1~0.3dB増加

 

3.タイヤ単体騒音実態調査検討会検討員(順不同、敬称略)

所属 氏名 備考
成蹊大学工学部教授 黒田 道雄 座長
(社)日本自動車タイヤ協会タイヤ道路騒音委員会委員長 尾崎 敏夫
(坂本 雅彦)

(平成11年9月まで)
東京大学大学院工学系研究科助教授 金子 成彦  
(社)日本自動車工業会騒音部会長 倉橋 雅義  
運輸省交通安全公害研究所交通公害部音響研究室長 田中 丈晴  
(社)日本自動車工業会騒音部会小型車分科会長 野場 幹雄  

添付資料

連絡先
環境庁大気保全局自動車環境対策第二課
課    長   松本 和良(内線6550)
 課長補佐   酒井 雅彦(内線6552)
 

Adobe Readerのダウンロード

PDF形式のファイルをご覧いただくためには、Adobe Readerが必要です。Adobe Reader(無償)をダウンロードしてご利用ください。