報道発表資料

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2000年10月25日

第6回自然環境保全基礎調査「巨樹・巨木林フォローアップ調査」中間発表について

環境庁自然保護局生物多様性センター(山梨県富士吉田市)は、第6回自然環境保全基礎調査(緑の国勢調査)の一環として実施している「巨樹・巨木林フォローアップ調査」の中間発表を10月27日(金)に第13回巨木を語ろう全国フォーラム(開催地:長崎県厳原町)で行う。
 この調査は、国内の巨木の現況を把握し、自然環境保全のための基礎資料を得るために実施するもの。昭和63年度に1回目の調査を実施しており、今回は前回調査のフォローアップとして2回目の調査となる。
 今回は、前回の調査で確認された巨木55,798本と前回の調査以降新たに確認された巨木の現況を把握するために、全国の市町村及び全国巨樹・巨木林の会の会員に調査協力を依頼して実施している。
 調査対象は、原則として地上から1.3mの高さでの幹周りが3m以上の木としているが、今回の調査では幹周り3m以上に育ちにくい樹種(ツバキ、マユミなど)については、3m未満でも調査対象としている。
 9月30日現在で1,419市町村(回答率44%)と全国巨樹・巨木林の会会員などの一般の方約50名から回答があり、前回の調査で確認された55,798本の内、約20,000本が再確認され、約8,800本が新たに確認された(特徴的な調査結果例については、下記4(7)参照。)。しかし、再確認された巨木の内、一部は枯死したという回答であった。
 なお、調査の最終結果は、平成13年春を目途に報告書にとりまとめ調査協力者に配布するとともに、生物多様性センターWebページにも掲載し、公開する予定である。
1.調査概要

 「巨樹・巨木林フォローアップ調査」は、国内の巨木(原則として地上から1.3mの高さでの幹周りが3m以上の木)の現況を把握し、自然環境保全施策に資することを目的に実施している。
 第4回自然環境保全基礎調査巨樹・巨木林調査として昭和63年度に初めて実施して以来、今回が前回調査のフォローアップとして2回目の調査となる。前回の調査では、全国で55,798本の巨木が確認された。

2.調査年度

 平成11、12年度

3.調査方法
(1) 実施方法
 調査は、全国の市町村及び全国巨樹・巨木林の会(会長:伊藤秀三長崎大学名誉教授)会員に調査票と調査マニュアルを送付し、調査協力を依頼した。

(2) 調査対象
[1] 基本的には、地上から約1.3mの高さでの幹周(囲)が3m以上の樹木。
[2] 幹周3m以上に生長しにくい樹種(ツバキ、マユミ等)については、幹周3m未満でも調査対象とした。

(3) 調査内容
[1] 追跡調査前回の調査で確認された巨木を対象に実施
[2] 新規調査前回の調査以降新たに確認された巨木を対象に実施

(4) 調査項目
[1] 追跡調査健全度(枯死情報含む)、幹周、巨木の所在地(住所)等
[2] 新規調査
○基礎的項目 ア.単木・並木・樹林の別、イ.独特の呼称・名称の有無
ウ.位置、エ.林内の巨木本数、オ.所有者(管理者)
カ.測定値(樹種名、幹周、樹高、枝張、株立状況)
キ.樹齢、ク.健全度、ケ.欠損の状況、コ.計測位置
○保護の項目 ア.保護制度指定状況、イ.解説板等の有無
○生態的項目 ア.周囲の状況、イ.根元の状況、
ウ.動物生息の有無、エ.着生植物等の状況、
○人文的項目 ア.信仰対象の有無、イ.故事・伝承の有無、
ウ.直接利用状況、エ.視認性、
○その他の項目 ア.特記事項(保護対策事例等)
4.中間集計結果(平成12年9月30日現在)

(1) 市町村回答状況

  調査協力依頼市町村回答市町村回答率
全体 3,252 1,419 44%
追跡調査 2,819 1,250 44%
新規調査 3,252   702  

(2)追跡調査で再確認された巨木本数
前回の調査で確認された巨木55,798本の内、約20,000本を再確認

(3)新規調査で報告された巨木本数  8,850本

(4)今回初めて巨木が確認された市町村数  52市町村

(5)全国巨樹・巨木林の会会員など個人からの回答  48名

(6)追跡調査で再確認された巨木の内、一部は枯死していた。

(7)特徴的な調査結果例(平成12年9月30日現在)

[1]前回の調査では、巨樹・巨木林が確認されなかった市町村から、今回新たに報告があった。今回初めて巨樹・巨木林が確認された市町村数の多い地域は、北海道(10市町村)、東北(12市町村)、中部(8市町村)、九州(9市町村)であった。

[2]全国巨樹・巨木林の会その他の有志や市町村により、前回の調査以降に新発見された巨樹・巨木林について報告が寄せられた。

新発見の巨木本数が多かった市町村ベスト3
・八日市場市(千葉県、211本)
・世田谷区(208本)
・熊本市(198本)
和賀山塊(秋田県側)全国巨樹・巨木林の会会員等が集中的な調査を行い、数多くの巨木を新たに発見した。
・代表例1 呼称:日本一のブナ(角館町)
幹周:860cm
・代表例2 呼称:日本一のクリ(角館町)
幹周:813cm(写真[1])
最上地域(山形県)最上山岳会を中心に積極的に調査を行い、地域のシンボル化を目指している。
・今回新規報告本数 159本
・代表例 呼称:山の内杉・神代杉(樹種名:スギ)
幹周:1,854cm
一宇村(徳島県)巨木による地域おこしを展開している。
・今回新規報告本数 88本
・代表例1 呼称:桑平の大トチ(樹種名:トチノキ)
幹周:850cm
・代表例2 呼称:奥大野の赤松(樹種名:アカマツ)
幹周:561cm
御蔵島村(東京都)巨樹の会(主宰平岡忠夫氏)の精力的な調査により、数多くの巨木が発見された。
・今回新規報告本数 48本(追加報告がある予定)
・代表例 呼称:御蔵島の大ジイ(樹種名:スダジイ)
幹周:1,379cm(国内最大級)(写真[2])
対馬(長崎県)10月27日に厳原町において第13回巨木を語ろう全国フォーラムが開催される。
・代表例 呼称:多久頭魂神社のクスノキ(厳原町)幹周:669cm
二戸市巨木を地域の「宝」として捉えている。
・今回新規報告本数 49本
・代表例1 呼称:蛇沼のプラタナス(樹種名:アメリカスズカケノキ)
幹周:510cm
・代表例2 樹種名:ポプラ
幹周:650cm

[3]幹周3m以上に生長しにくい樹種(ツバキ、マユミなど)についても幹周3m以上のものを含め多数の報告があった。

代表例1 呼称:シャクジョウカタシ(高知県吾北村、樹種名:ヤブツバキ)
幹周:320cm(写真[3])
代表例2 呼称:舘の大マユミ(福島県郡山市、樹種名:マユミ)
幹周:330cm
5.中間発表

 上記4の内容を平成12年10月27日(金)に長崎県厳原町で開催される第13回巨木を語ろう全国フォーラムにて発表する。

6.調査結果の公表

 調査結果は、今後情報の追補、確認を行った上で、平成13年春を目途に報告書にまとめ、調査協力者等に配布するとともに、生物多様性センターWebページを用いて公表する。

7.問合せ先

 環境庁自然保護局生物多様性センター 自然保護専門員 堀内(TEL0555(72)6033)

8.参考

(1)前回調査の概要

[1] 調査目的
 我が国の巨樹・巨木林の現況を把握し、自然環境保全施策に資することを目的とする。
[2] 調査年度
全国調査:昭和63年度
情報処理業務:平成元年度
[3] 調査方法
実施方法
○全国調査:都道府県に委託して実施
○情報処理業務:民間団体に発注して実施
調査対象
地上から約1.3mの高さでの幹周(囲)が3m以上の樹木
調査項目
○基礎的項目 (ア)位置、(イ)単木・並木・樹林の区別、(ウ)所有者(管理者)
(エ)樹齢、(オ)林内の巨木本数
(カ)巨木測定値(樹種名、幹周、樹高、枝張、株立状況)
○生態的項目 (ア)周囲の状況、(イ)根元の状況、(ウ)欠損の状況
(エ)動物生息の有無、(オ)着生植物等の状況、(カ)健全度
○人文的項目 (ア)信仰対象の有無、(イ)独特の呼称・名称の有無
(ウ)故事・伝承の有無、(エ)視認性、(オ)直接利用状況
○保護の項目 (ア)保護制度指定状況、(イ)解説板等の有無
○その他の項目 (ア)特記事項(保護対策事例等)
[4] 調査結果
 全国で55,798本(測定本数)の巨木が確認され、巨木の生息環境として社叢林の果たしている役割が大きいなどの傾向が認められた。詳細については、下記[5]アの刊行物で公表している。
[5] 調査結果の公表
報告書での公表
 以下の報告書を発行した(いずれも編集:環境庁、発行:大蔵省印刷局、1991年)。
○日本の巨樹・巨木林全国版
○日本の巨樹・巨木林北海道・東北版
○日本の巨樹・巨木林関東版(I)
○日本の巨樹・巨木林関東版(II)
○日本の巨樹・巨木林甲信越・北陸版
○日本の巨樹・巨木林東海版
○日本の巨樹・巨木林近畿版
○日本の巨樹・巨木林中国・四国版
○日本の巨樹・巨木林九州・沖縄版
ホームページでの公表
 環境庁自然保護局生物多様性センターホームページ上の生物多様性情報システム(J-IBIS)で調査結果の概要を公表している。
→アドレス:http://www.biodic.go.jp/kiso/fnd_f.html

(2)巨樹・巨木林計測マニュアル  別紙参照

(3)写真([1]~[3])  別紙参照

(4)写真のコメント及び提供元

[1] 和賀山塊(秋田県側)のクリ全国巨樹・巨木林の会の調査で発見された国内最大級のクリ(写真提供:全国巨樹・巨木林の会)
[2] 御蔵島(東京都)の大ジイ巨樹の会の調査により発見されたスダジイ。幹周りは、国内最大級。島は巨木の宝庫である。(写真提供:全国巨樹・巨木林の会)
[3] 吾北村(高知県)のヤブツバキ地元ではシャクジョウカタシと呼ばれ愛されている。県指定天然記念物(写真提供:吾北村)
連絡先
環境庁自然保護局企画調整課生物多様性センター
センター長     笹岡 達男
 自然保護専門員  堀内 直
 〒403-0005
 山梨県富士吉田市上吉田剣丸尾5597-1
 Tel:0555-72-6033