報道発表資料

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1997年11月27日

ツシマヤマネコ第二次生息特別調査結果の概要について

絶滅のおそれのあるツシマヤマネコの保護増殖事業の一環として、平成6年度から平成8年度までの3年間にわたって環境庁が長崎県に委託して実施した「ツシマヤマネコ第二次生息特別調査」(調査とりまとめ:(財)自然環境研究センター)の結果が取りまとめられた。
 本調査は、生息状況、生息環境、行動圏等について調査を実施したものであり、結果の概要は次のとおり。

(1)生息状況調査
 痕跡調査やアンケートの生息情報等をもとに、ツシマヤマネコの1990年代の生息数をおよそ70~90頭と推定した。第一次生息特別調査(昭和60~62年度)による1980年代の推定数である100頭前後と比べると、この10年間でも減少傾向にあると考えられる。

(2)生息環境調査
 生息情報は標高50mから200mで耕作地が5%以上含まれる地域に多く、ツシマヤマネコは人間の生活域に近いところに生息していると考えられる。

(3)系統及び遺伝学的調査
 遺伝子の分析により、ツシマヤマネコがベンガルヤマネコやイリオモテヤマネコと極めて近縁であることや、遺伝的多様性が低く、環境変化や病原体に対する抵抗力が他のネコ科動物と比較して低い可能性があることが分かった。

(4)行動・生態調査
 ツシマヤマネコ3頭に電波発信機を装着し、行動圏等を調査した結果、オスの行動圏は季節的に変動が大きく平均すると約550haであったのに対し、メスの行動圏は年間を通して安定し、平均約70haであった。

(5)寄生虫・ウィルス検査
 ツシマヤマネコ1頭にネコ感染症ウィルスがみられ、このウィルスがノラネコ等から感染した可能性が高いこと等が分かった。

(6)飼育下繁殖の取組
 ツシマヤマネコを飼育下で人工増殖し生息地へ再導入することを目的として捕獲・飼育に取り組んでおり、これまでにオス3頭が捕獲(幼獣1頭の保護を含む)され、ウィルスに感染していた1頭を除く2頭が、福岡市動物園で飼育されている。

(7)今後の課題
 今後は、調査の充実、継続を始め、生息環境の保全、交通事故の防止、疾病対策、飼育下繁殖の推進等が重要な課題である。このため、本年7月に対馬北西部に設置された「環境庁対馬野生生物保護センター」等を中心として、国、長崎県、対馬各町、大学、動物園、地域住民等の関係者が協力して、保護活動を進めていくことが必要である。

連絡先
環境庁自然保護局野生生物課
課 長 :小林 光 (6460)
 担 当 :植田・長田(6465)