報道発表資料

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1998年03月03日

平成9年度環境モニター・アンケート「湖沼環境について」の調査結果

 環境庁は、平成9年度環境モニター・アンケートとして、生態系・景観などの面で地域の重要な構成要素となっている湖沼についての意識調査を行った。
 調査結果の概要は、以下のとおりである。
1)湖沼に行く目的は、「観光」が最も多く、次いで「散歩」となっており、湖沼には「美しい景観」や「きれいな水」等の良好な水環境を大多数が求めている。
2)個人の取組に関しては、湖沼の水質維持・改善の必要性については9割の人が「必要」と考え、水を汚さない工夫を9割の人が実施していると答えている。
 また、工夫の内容については、生活排水対策として、「油は流さない」、「洗剤や石鹸を適量使用する」等を行っていることがわかった。
3)節水に対しては、8割が取り組んでいると回答し、「お風呂の残り水を洗濯に使っている」が多かった。
4)湖沼環境保全に取り組む市民団体を知っている人は2割程度にとどまった。
5)湖沼を良くするための仕組みとして「環境教育の推進」に強い関心が寄せられた
6)湖沼環境保全行政については、水質改善対策として、普段の生活の中での、個々人の努力が必要との認識が示された。
7)湖沼の環境改善に必要な施策としては、「保全地域の設定」等の湖周辺の土地利用規制や湖畔林の保全・植栽をあげる意見が多いことがわかった。
8)宝くじで100万円獲得した場合、琵琶湖の環境保全策への寄付金額を尋ねたところ、平均で獲得額の約3割程度であれば寄付をしてもよいとの回答を得た。
 環境庁としては、このアンケート結果を参考にし、良好な湖沼環境の創造に向けて地域住民等との協力の一層の充実を含め、総合的施策の推進に取り組んでいきたい

1.調査の目的及び実施方法

(1)目的
 湖沼は、重要な淡水の供給源であるとともに、生態系・景観などの面で地域の環境の構成要素として重要な役割を担っている。しかし、湖沼は、川、海に比べ水の流れが少ないため汚染されやすく、その汚染が生態系や水道水質の悪化を引き起こしやすくなっている。このため、湖沼は、川、海と比べても、特に環境保全活動が必要とされている。
 この調査は、湖沼への関心、環境保全活動への取組状況などについて意識調査を行うことにより、良好な湖沼環境の創造に向けて、市民の取組を支援するための施策等を検討する上での基礎資料を得ることを目的として実施したものである。

(2)実施方法
 環境庁が委嘱している1,500人の環境モニターを対象とし、平成9年8月に総務庁管区行政監察局等を経由して郵送によるアンケート調査を実施した。回答者は1,315人(男性633人、女性681人、不明1人)で、回答率は87.7%であった。

2.調査結果の概要

2ー1湖沼に関する一般知識について
 湖沼全体に関する関心事項について調査した。
 その結果、湖沼に行く目的は「観光」が最も多く、湖沼には「美しい景観」、「きれいな水」に代表される良好な水環境が求められていることがわかった。
{1}行ってみたい湖沼、よく行く湖沼(複数回答)
 行ってみたい湖沼では、「摩周湖」(29.7%)、「十和田湖」(25.7%)、「琵琶湖」(20.5%)と続いているが、その多くが国立・国定公園内の湖沼である。(図1)
{2}湖沼に行く目的(複数回答)
 湖沼に行く目的は、「観光」(64.7%)と答えた人が多く、ついで「散歩」(38.9%)となっており、身近な湖沼への接点が多いこともうかがえた。(図4)
{3}湖沼に求めるもの(複数回答)
 「美しい景観」(83.1%)、「きれいな水」(81.7%)の回答が多く、このほか「野鳥、水生生物等の観察」(38.1%)、「散歩道」(33.5%)、「十分な水量」(27.8%)となっており、環境の良好なものが望まれていることがわかる。(図5)
{4}湖沼に対する不満(複数回答)
 「ゴミが多い」(50.7%)、「水が汚い」(49.4%)、「岸が人工化している」(34.0%)となっており、湖沼に求めている回答を裏付けている。(図6)
{5}湖沼環境として重要なもの(複数回答)
 「水質」(91.0%)、「魚などの水生生物」(65.2%)、「景観」(57.5%)、「湖畔林」(50.0%)となっている。特に水質に関する関心が高く、人工的なものに対しては、重要という認識が低いことが示された。(図7)

2ー2湖沼環境保全に係る個人の取組について
{1}湖沼の水質維持・改善の必要性
 「非常にそう思う」(71.9%)、「必要と考える」(25.7%)と97.6%の人が水質の維持・改善についての必要性を認めている。(図11)
 また、その理由については、「湖沼の生態系の保全のために好ましくないため」(57.8%)、「水源になっているから」(53.6%)の答が多く、環境保全と利水の両面から水質の維持・改善の必要性に対する意識があることがうかがえた。(図13)
 なお、「考えない」又は「関心がない」と答えた人の理由は「近所に湖沼がない」であった。
{2}使用する水を汚さない工夫(生活排水対策)
 使用する水に対して水を汚さない工夫を行っているかとの質問に対し、「いつも行っている」(49.5%)、「時々行っている」(39.8%)で、89.3%の人が生活排水対策を行っていることがわかった。(図14)
 工夫の内容については、「油は流さない」(86.9%)、「洗剤や石鹸を適量使用する」(71.1%)、「流しにストレーナー、ストッキング等を使用している」(64.1%)となっている。(図16)
 また、工夫をしていない理由としては多かったのが「何をすればわからないため」(35.5%)、「下水道が整備されているため」(33.1%)となっている。(図17)
{3}節水のための取組
 節水の取組については、「いつも行っている」(40.5%)「時々行っている」(45.1%)、で85.6%の人が節水対策を行っていることがわかった。(図18)
 取組の工夫については、「お風呂の残り水を洗濯に使っている」(76.3%)「お皿等を洗う際にため洗いしている」(44.4%)、「トイレのタンクに重りを入れている」(26.2%)となっている。(図20)
 なお、行っていない理由としては、「渇水を経験したことがないため」(56.1%)が過半数を占めた。(図21)
{4}湖沼の水を汚さない工夫や節水の実行
 湖沼に流入する河川、湖沼の周辺に住んでいたら、水を汚さない工夫や節水などの対策を他の人より特に力を入れて行うかどうかを尋ねた結果、「やる」と答えた人が91.6%となっており、湖沼近辺に住む人の水質保全への認識が大きいことがわかった。(図22)

3ー3湖沼環境保全に係る団体の取組について
{1}湖沼環境保全に取り組む市民団体の認知
 湖沼環境保全に取り組む市民団体を知っているかどうか尋ねたところ、「はい」(20.2%)となっており、団体活動に対する認知度が低いことがわかった。(図25)
 また、団体の活動内容をたずねた結果、「水質の検査・改善等」(17.7%)、「石鹸使用推進、家庭排水浄化等」(15.1%)、「清掃活動」(14.3%)となっている。(図28)
{2}湖沼を良くするための仕組み(複数回答)
 協力関係を築くためどのような仕組みが必要かをたずねたところ、「環境教育の推進」(70.3%)、「湖沼のクリーンアップキャンペーン等のイベントの開催」(59.2%)、「湖沼流域にすむ人々(住民、事業者、行政等)の集まる協議会の設置」(48.4%)、「湖沼環境を改善するための住民の取組に関する行政が関与した行動計画策定」(48.3%)、「行政が実施する施策の決定及び施行に係る住民の関与」(37.1%)となっており、行政と住民とのより深い関わりが求められているとともに、環境保全に対する普及啓発がもっと必要と考えられていることが示された。(図32)
{3}参加したイベント、必要な取組
 イベントの開催が必要と回答した人を対象とした質問では、参加したイベントについては、「湖沼周辺のゴミ拾いイベント」(52.4%)、「湖沼に流入する水路の清掃」(29.2%)、「湖沼の水質測定、水生生物調査」(28.7%)となっている一方、必要な取組については、「湖沼の水質測定、水生生物調査」(26.2%)、「湖沼に流入する水路の清掃」(26.0%)、「湖沼周辺のゴミ拾いイベント」(22.9%)となっている。
 「ゴミ拾いイベント」の必要性を感じる率が参加の率に比べかなり低いことや、必要な取組として「湖沼の水生植物復元事業」(19.2%)が参加の率に比べ多かったことを見ると、今後は新たな取組やイベント内容の見直しが問われているといえる。(図33)
{4}協議会での取組内容
 「湖沼流域での協議会の設置が必要」と回答した人を対象とした質問では、協議会に参加して進める取組として必要なものは、「水質保全の取組に係る情報交換」(65.3%)、「行政に対する提言」(46.2%)、「住民、事業者同士の交流」(39.3%)となっており、情報交換の機会を多くもつことが強く求められていることが示されている。(図34)
{5}住民の取組に関する行政が関与した行動計画策定の必要性
 「住民の取組に関する行政が関与した行動計画策定が必要」と回答した人を対象として、どのような観点からこのような計画が必要か尋ねたところ、「専門家、行政等の技術的助言が得られる」(62.2%)との答が最も多かったが、それ以外にも「財政的支援が得られやすくなる」(40.0%)、「他の地域との連携がとりやすくなる」(30.6%)、など、公的支援や広域的連携に関心が寄せられていることもわかった。(図35)
{6}行政への住民関与
 「行政への住民の関与が必要」と回答した人を対象とした質問では、「行政が策定する計画、条例等への住民意見の反映」(44.5%)、「行政が策定する計画の策定への住民の主体的関与」(41.6%)、「行政が行う事業の決定、及び実施に関する住民意見等の反映」(40.6%)、「湖沼保全施策に係る住民からの提言の場の設定」(40.4%)、「情報の公開」(36.3%)となっており、いずれの点においてもほぼ同じ割合で住民の関与が必要と考えていることが示された。(図36)
{7}環境教育の推進体制
 「環境教育の推進が必要」と回答した人を対象とした質問では、「学校教育現場における環境教育」(69.4%)、「環境教育を行う市民団体の育成、援助」(38.2%)等となっており、市民活動を通した環境教育だけでなく、学校教育のなかで環境教育を推進していくことが強く求められていることが示された。(図37)

3ー4湖沼環境保全行政について
{1}湖沼の水質改善対策(複数回答)
 湖沼の水質を改善するために重要だと考えるものを尋ねた。
 生活排水対策については、「一人一人が水を汚さないように気をつける」(87.9%)、「地域の特性に応じた生活排水処理施設を整備する」(64.9%)、「水道料金、下水道料金等に環境税を付加する」(10.5%)となっており、個人からの発生負荷抑制が重要であるとの認識があることが確かめられたが、水道料金等に環境税を付加するということに対しては積極でないことが示された。(図38)
 産業排水対策については、「工場の新設に際し水質保全面からの環境影響評価を行うことを義務づける」(63.4%)と事前の環境影響評価への期待が大きいことが示された。「工場への排水規制を強化する(規制値の強化)」(57.9%)、「畜産、放牧地からの汚染防止対策を講じる」(44.7%)、「農業からの汚染防止策を実施する」(40.8%)となっており、農業・畜産業への汚染対策強化が工場排出規制とともにほぼ同程度重要と考えられていることが示され、今後の非特定汚染源対策(面源対策)推進強化の必要性とも一致した結果となっている。(図39)
{2}湖沼環境の改善に必要な施策(複数回答)
 湖沼環境の改善に必要な施策について尋ねている。「湖岸の自然環境の保全地区の設定」(65.1%)、「湖畔林の保全、植栽」(50.3%)、「湖岸の埋立の禁止、抑制」(51.5%)、となっており、湖沼周辺地域保全のための土地利用規制等の要望が強いことが示された。(図41)
{3}琵琶湖の環境保全対策
 宝くじで獲得した100万円を、日本一大きい琵琶湖の環境保全のために、どのような対策にいくら寄付することができるかを尋ねた。
 対策については、「水源林の保全」(20.2%)、「水生生物保全」(16.3)、「下水道整備」(15.7%)、「市民団体の活動費」(13.8%)となった。(図42)
 寄付金額については、「10万円~20万円」(21.6%)、「50万円~60万円」(18.9%)、「1万円~10万円」(14.6%)で、寄付金額の平均は33.2万円となっているが、100万円10.0%)と回答をした人もいた。(図43)
 対策の項目については「水源林の保全」、「水生生物保全」、「下水道整備」、「市民団体の活動費」と続き、対策に対する平均寄付額は概ね20~30万円の幅に入っていることから、それぞれの対策に対する重要度は同程度であることがわかった。
 なお、対策の項目の割合順位が、「水源林」「水生生物」「下水道」「市民団体」となっているのに対し、平均寄付金額では「下水道」「市民団体」「水源林」「水生生物」と順位が異なった。(図45)

添付資料

連絡先
環境庁水質保全局水質管理課
課      長  :一方井誠治(6630)
 課 長 補 佐  :本間  新哉(6633)
 担      当  :永見  靖  (6632)

環境庁長官官房総務課環境調査管室
上席環境調査官 :鶴田 唯夫(6142)
 課 長 補 佐   :平塚 勉  (6145)