報道発表資料

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1997年11月25日

環境影響評価法の基本的事項に関する技術検討委員会による「基本的事項に盛り込むべき事項」報告について

  1. 経緯
     
    (1)  平成9年6月13日に公布された環境影響評価法に基づき、環境庁は、同法の公布後6ヶ月以内に、第二種事業の判定の基準、環境影響評価の項目等の選定の指針及び環境の保全のための措置に関する指針のそれぞれに関し、対象となる事業の種類に横断的な基本となるべき事項(基本的事項)を定めて、公表することとされている。
     
    (2)  当該「基本的事項」の策定に当たっては、環境に係る学識経験者の専門的な知見からの助言を受けることを目的に、平成9年8月に環境庁企画調整局長の委嘱により「環境影響評価の基本的事項に関する技術検討委員会」を設置した。
     本委員会においては、一般からの意見を募集するとともに、これらの意見も参考としつつ、広く意見交換を行い、11月25日開催の第6回委員会において、「基本的事項に盛り込むべき事項」報告を取りまとめ、これを公表することとした。
     
  2. 「基本的事項に盛り込むべき事項」報告の概要
     
     検討委員会報告は、基本的事項に関わる技術的な検討事項に係る過去の議論、一般より提出された意見の内容等を参考としつつ、広く意見交換を行い、これを「基本的事項に盛り込むべき事項」として取りまとめた。
     また、基本的事項に盛り込むべき事項に記述されているが、今後の環境影響評価の運用に特に配慮を求める具体的な技術的事項や、基本的事項そのものに盛り込まれるものではないが、制度の円滑かつ適切な実施のために特に重要な技術的事項について、「その他の技術的な指摘事項」として取りまとめた。 基本的事項に盛り込むべき事項の概要については、資料のとおりである。
     
  3. 今後の対応
     
     この報告を受けて、速やかに「基本的事項」の環境庁原案を作成し、環境影響評価法第4条第10項及び第13条の規定に基づき、関係する行政機関の長に協議を行った上で、速やかに「官報」に掲載することにより公表することを予定している。


資料
 
環境影響評価法の基本的事項に盛り込むべき事項の概要
 
第1  判定基準に関する事項
 判定基準は、環境影響の程度が著しいものとなるおそれがあると認められる場合を、客観的な要件となるように定めるものであること。
 判定基準には、{1}個別の事業の内容に基づく判定基準、{2}環境の状況その他の事情に基づく判定基準の二つの内容が含まれるものとすること。
 個別の事業の内容に基づく判定基準には、一般的な事業内容に比べて環境影響の程度が著しくなる事業の場合や、一体的な計画総体として環境影響の程度が著しくなる事業の場合が含まれ、また、環境の状況その他の事情に基づく判定基準には、環境影響を受けやすい地域・対象が存在する場合、環境の保全の観点から法令等により指定された地域・対象が存在する場合、環境が著しく悪化し、又はそのおそれが高い地域が存在する場合が含まれること。
 届出内容及び判定権者が入手可能な地域の自然的社会的状況に関する知見に基づき客観的に判定できること、都道府県知事の意見を適切に反映できることを留意事項として判定基準に定めること。
 
第2  環境影響評価項目等選定指針に関する事項
 環境影響評価の項目の範囲は、{1}大気環境、水環境、土壌環境、その他の環境からなる「環境の自然的構成要素の良好な状態の保持」、{2}植物、動物、生態系からなる「生物の多様性の確保及び自然環境の体系的保全」、{3}景観、触れ合い活動の場からなる「人と自然との豊かな触れ合い」、{4}廃棄物、温室効果ガス等からなる「環境への負荷」の区分とすること。また、これらの区分毎の調査、予測及び評価の基本的な方針を明らかとすること。
 調査、予測及び評価は、選定項目毎に行うとともに、選定項目間の相互影響についても検討されること。
 項目及び手法の選定に当たって、一般的に把握すべき情報の内容と入手可能な最新の文献等に基づき把握すること、出典を明らかにすること等を留意事項として指針に定めること。
 環境影響評価の実施中に、新たな事実が判明した場合等には、必要に応じ項目及び手法の見直し等を行うことを留意事項として指針に定めること。
 対象事業の一般的な事業内容を踏まえつつ、工事の実施、土地等の存在・供用時の事業活動等に伴う環境への影響要因を整理し、標準となる項目を指針に定めること。
 その場合、地域特性等により、必要に応じ標準項目以外の項目を選定し、又は標準項目を選定しないことができる旨を指針に定めること。
 調査の目的を明らかにした上で、手法の選定に当たって、調査すべき情報の種類及び調査法、調査地域、調査の地点、調査の期間及び時期は、項目特性、事業特性及び地域特性に応じ適切に設定すること、調査によって得られる情報の内容、根拠等を整理すること等を留意事項として指針に定めること。
 予測の目的を明らかにした上で、手法の選定に当たって、予測法、予測地域、予測の地点、予測の対象となる時期は、項目特性、事業特性及び地域特性に応じ適切に設定すること、予測の前提条件を明確にすること、将来の環境の状態の設定のあり方を示すこと、必要に応じ予測の不確実性を検討することを留意事項として指針に定めること。
 評価は、事業者による実行可能な範囲内で環境影響を回避又は低減しているか否かに対する事業者の見解を明らかにすることにより行うものとし、環境保全の観点からの国等の基準又は目標との整合性に係る検討も併せて行うこと。手法の選定に当たって、この方針により行われること、複数の案の比較検討や実行可能なより良い技術の導入の検討等の手法により行われること等を留意事項として指針に定めること。
 対象事業の一般的な事業内容を踏まえつつ、標準となる調査又は予測の手法を指針に定めることができること。 その場合、地域特性等により、必要に応じ標準手法以外の手法を選定できる旨を指針に定めること。
 標準項目又は標準手法を踏まえて項目又は手法を選定するに当たって、簡略化及び重点化の考え方を定めること、簡略化又は重点化した場合は、その理由を明らかにすること、客観的かつ科学的な検討を行うことを留意事項として指針に定めること。
 
第3  環境保全措置指針に関する事項
 環境保全措置は、事業者の実行可能な範囲内で、環境影響を回避又は低減すること、各種の環境の保全の観点からの基準又は目標の達成に努めることを目的として検討すること。
 環境保全措置の検討に当たっては、回避又は低減を優先し、その結果を踏まえて必要に応じ代償措置を検討することを留意事項として指針に定めること。
 環境保全措置の内容、実施の効果、他の環境要素への影響等を可能な限り具体的に明らかにすることを留意事項として指針に定めること。
 代償措置を講ずる場合は、回避又は低減が困難であることを整理した上で、代償しようとする環境の種類及び内容等を検討することを留意事項として指針に定めること。
 複数案の比較検討、実行可能なより良い技術の導入の検討等により、環境保全措置の検討の経過を明らかにできるよう整理することを留意事項として指針に定めること。
 不確実性の程度及び環境への影響の重大性に応じ、事後調査の必要性を検討すること、事後調査を行う場合は、その内容、調査結果に応じた対応方針、結果の公表等を明らかにすること、適切な調査内容が設定されること等を留意事項として指針に定めること。
 
第4  基本的事項等の見直しについて
基本的事項、判定基準及び指針について、科学的知見を踏まえ随時改定すること。
特に基本的事項の内容については、5年程度毎に点検し、結果を公表すること。
連絡先
環境庁企画調整局環境影響評価課環境影響評価制度推進室
室長(課長) :寺田 達志(6230)
 主査(室長) :小林 正明(6231)
 担当補佐  :北沢 克巳(6286)