報道発表資料

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1997年06月30日

特定地域自然林(白神山地)総合調査報告書について

特定地域自然林総合調査は、青森・秋田県境に位置する白神山地において、自然環境の現状を把握・分析するとともに、今後の適正な保護管理に資することを目的として、実施した学術調査である。
 このたび、調査結果を下記のとおり、環境庁白神山地世界遺産センター他において縦覧の用に供する。
 調査は、(財)国立公園協会へ請け負わせ、地形・地質、気象、植物、動物、人文の5項目について、各分野の専門家に依頼して行った。

縦覧先
 環境庁図書館(東京都千代田区)TEL:03-3581-3351
 環境庁東北地区国立公園・野生生物事務所(青森県上北郡十和田湖町)TEL:0176-75-2728
 環境庁白神山地世界遺産センター(青森県中津軽郡西目屋村)TEL:0172-85-2622
 青森県自然保護課(青森県青森市)TEL:0177-22-1111
 秋田県自然保護課(秋田県秋田市)TEL:0188-60-1615
  1. 調査の背景及び目的

     白神山地は、青森・秋田県境に位置し、原生的なブナ林が分布する広大な地域である。また、固有の植物や絶滅の危機に瀕する動物を含む、多様な動植物が生息する貴重な地域であり、その一部は、平成5年12月に世界遺産として登録された。しかしながら、白神山地に関する調査・研究の歴史は浅く、これまでのところ、その実態は、十分明らかになっているとはいえない。
     このため、本調査は、白神山地自然環境保全地域の動植物等の自然環境の現状を把握、分析し、その適正な保護管理に資することを目的として、以下の3点を主なねらいとして行ったものである。
    {1} 白神山地の自然環境についての実態の把握を行い、今後の調査、研究、保全、管理の指針を得ること
    {2} 地域の保全、管理を科学的根拠をもって行うための端緒とすること
    {3} 保全、管理によって得られる情報を自然環境の保全、環境教育等に資するものとして外部に発信すること
      
  2. 調査の範囲

     白神山地自然環境保全地域全域及び関連する周辺地域
    なお、周辺地域は、地形、植生等の一体性を勘案し、自然環境保全地域の外周より約5km程度の範囲を目安とするが、必要に応じて適宜設定するものとした。
     
  3. 調査項目
     
    {1} 地形・地質
    {2} 気象
    {3} 植物
    {4} 動物
    {5} 人間活動
    {6} 保全・管理
    {7} 今後の調査研究の方向性検討
      
  4. 調査の方法
     
    〈{1}~{5}の項目(地形・地質、気象、植物、動物、人間活動)〉
    項目ごとに班長を中心に、各分野の専門家(調査協力員)により実施
    初年度は主に既往の調査研究をレビューし、各班で調査テーマを決定。2及び3か年目に調査を実施し、個々の論文としてとりまとめていただいた。
     
    〈{6} 保全・管理〉
    {1}~{5}の調査結果をふまえ、各項目の代表者(班長又はその代理)が、それぞれの項目の観点から、今後の保全・管理への提言を行った。
     
    〈{7} 今後の調査研究の方向性検討〉
    個々の論文記述等を踏まえつつ、検討委員会での検討を経て事務局でとりまとめた。
     
    〈委員会による検討〉
    各班の班長より成る検討委員会を設置し、調査全体の調整、相互の意見交換等を実施した。
    青森、秋田の両営林局、青森、秋田両県(自然保護課)はオブザーバとして委員会に参加し、調査への協力・助言を受けた。
      
  5. 報告書目次
     
    第1章 地形・地質
     {1} 白神山地の地質の概要
     {2} 白神山地周辺地域の2000万年前の陸上溶岩-特に大戸瀬層のK-Ar年代と層相解析-
     {3} 白神山地における中部中新統~鮮新統の層序と古環境
     {4} 白神山地の地形とその発達
     
    第2章 気  象
     {1} 白神山地の降水および流出特性
     
    第3章 植  物
     {1} 白神山地の植生
     {2} 小岳の植物の垂直分布
     {3} 白神山地の植物相-青森県
     {4} 白神山地(秋田県側)の高等植物相
     {5} 白神山地の地衣類
     {6} 白神山地のセン類
     {7} 白神山地のタイ類及びツノゴケ類
     
    第4章 動  物
     {1} 白神山地の動物(鳥類、哺乳類)の生息状況
     {2} 秋田県の狩猟統計資料によるツキノワグマの生息状況と白神山地周辺における捕獲頭数
     {3} 白神山地の食虫類・ネズミ類
     {4} 白神山地の動物(両生類・爬虫類・翼手類)の生息状況
     {5} 白神山地に生息する魚類の食性
     {6} イワナ属(Salvelinus)魚類のPCR法による分類の試み
     {7} 白神山地の昆虫の生息状況
     {8} 藤里町峨瓏峡と町営保養所周辺の歩行虫類
     {9} 白神山地岳岱および小岳におけるトビムシ相と調査地点間の種構成類似度
     
    第5章 人間活動
     {1} 白神山麓の暮らし - 青森県、西目屋村を中心に-
     {2} 山村の地域振興における自然環境の保全と活用-秋田県山本郡藤里町の事例-
     {3} 江戸時代における白神山地の山林事情について
     
    第6章 保全・管理
     {1} 地形・地質からみた保全・管理の考え方
     {2} 気象・気候・水文からみた保全・管理の考え方
     {3} 植物からみた保全・管理の考え方
     {4} 動物からみた保全・管理の考え方
     {5} 人間活動からみた保全・管理の考え方
     
    第7章 白神山地における今後の調査研究の方向性
     {1} 白神山地における今後の調査研究の方向性
     

*検討委員会委員名簿及び調査協力員名簿については、報告書をご覧下さい。

連絡先
環境庁自然保護局計画課
課長    鹿野 久男(内線6430)
 課長補佐  上杉 哲郎(内線6432)
 担当    鹿野 央 (内線6433)