報道発表資料

この記事を印刷
1997年11月21日

中央環境審議会答申「今後の自動車排出ガス低減対策のあり方について(第二次答申)」について

11月21日に中央環境審議会大気部会(部会長:斎藤孟 早稲田大学名誉教授)が開催され、標記の答申がまとめられる予定である。
 答申の要点は以下のとおりであり、環境庁においては、これらを踏まえ規制強化のための所要の手続きを進めることとしている。

 今後の自動車排出ガス低減対策のあり方について(第二次答申)
 {1} ガソリン・LPG自動車の排気管排出ガス低減対策
   全車種とも、窒素酸化物及び炭化水素に重点を置いて大幅に排出量を削減し、車種により平成12年(2000年)から14年(2002年)にかけて規制を強化する。また、使用過程の排出ガス低減装置の性能維持のため、耐久走行距離を大幅延長し、車載診断装置の装備を義務付ける。特に、乗用車については現行規制と比べて約7割の排出量削減となり、昭和53年以来の大幅な規制強化となる。
 
 {2} ガソリン自動車の燃料蒸発ガス低減対策
   ガソリン自動車の燃料貯蔵・供給系から燃料蒸発ガスとして排出される炭化水素を一層低減するため、燃料蒸発ガス規制のための試験方法について、真夏の24時間の駐車時を想定し、密閉室内(SHED)で排出量を測定する新たな試験方法を、車種により平成12年(2000年)から14年(2002年)にかけて導入する。
 {3}  特殊自動車(建設機械、産業機械、農業機械)の排出ガス低減対策の導入
 現在未規制の特殊自動車について、それらの排出ガスの自動車全体に占める排出寄与率が窒素酸化物で約3割、粒子状物質で約1割を占めることから、排出ガス規制の対象に追加し、平成16年(2004年)から実施する。
 
 なお、ディーゼル自動車については来年中を目途に引き続き御審議いただく予定である。

1. 経緯

 中央環境審議会(会長:近藤次郎 元日本学術会議会長)は、平成8年5月21日付けで諮問された「今後の自動車排出ガス低減対策のあり方について」について、平成8年10月18日付けの中間答申以降、大気部会(部会長:斎藤孟 早稲田大学名誉教授)及び同部会に設置した自動車排出ガス専門委員会(委員長:池上詢 京都大学教授)で引き続き審議を進めてきた。

 11月21日(金)に開催予定の第20回大気部会において、平成8年5月21日付け諮問に対する第二次答申として、ガソリン自動車の排出ガス低減対策の強化及び現在未規制の特殊自動車の排出ガス規制導入を内容とする「今後の自動車排出ガス低減対策のあり方について(第二次答申)」がまとめられる予定である。

(1) 大気部会の審議状況
 平成8年
    5月21日  第12回大気部会  「今後の自動車排出ガス低減対策のあり方について」諮問
 
10月18日 第15回大気部会  「今後の自動車排出ガス低減対策のあり方について(中間答申)」答申
 
 平成9年
6月3日  第17回大気部会  自動車排出ガス専門委員会の審議状況について等
 
11月10日  第19回大気部会  自動車排出ガス専門委員会の審議状況について等
 
11月21日 第20回大気部会  「今後の自動車排出ガス低減対策のあり方について(第二次答申)」を予定
 
 
(2) 自動車排出ガス専門委員会の審議状況(中間答申(平成8年10月18日)以降)
 専門委員会 計10回開催(日本自動車工業会、石油連盟、特殊自動車業界団体ヒアリング等)
 
 作業委員会 計18回開催(自動車メーカーヒアリング等) 
作業委員会は専門委員会内に設置
 
 

2. 「今後の自動車排出ガス低減対策のあり方について(第二次答申)」の概要

 二酸化窒素(NO2)、浮遊粒子状物質(SPM)及び光化学オキシダント(Ox)に係る大気汚染が依然深刻であり、ベンゼン等の有害大気汚染物質についても環境基準を上回る地点がみられることから、「{1}ガソリン・LPG自動車の排気管排出ガス(排気管から排出されるガス)の一層の低減」、「{2}ガソリン自動車の燃料蒸発ガスの一層の低減」、「{3}特殊自動車への排出ガス規制導入」を柱とする新たな自動車排出ガス低減対策を提言。

 これらの対策により、大気汚染物質の濃度に直接関与する窒素酸化物(NOx)及び粒子状物質(PM)に加え、多くの大気汚染物質の生成に関与する炭化水素(HC)のなお一層の低減を推進。

1.ガソリン・LPG自動車の排気管排出ガス

 窒素酸化物及び炭化水素の低減を重点に排出ガス低減対策を強化。特に乗用車については、昭和53年以来の大幅な低減対策の強化。

 (1) 当面の対策
 
〔視点〕 〔対策〕
地球温暖化対策との両立に留意しつつ
排気管排出ガスの目標値(10・15モード値)を大幅に強化
加えて、コールドスタート時の排出ガス(11モード値)も低減
重量車(車両総重量が2.5tを超えるトラック、バス)の試験方法もコールドスタートに対応したものとすべき。
  
目標値を約7割低減
(軽貨物車は約5割)
2.5~3.5tのものは、中量車区分に移行し、11モードを適用し、コールドスタート対策を強化。
 
 
使用過程における触媒等の排出ガス低減装置の性能維持のため、
耐久走行要件(耐久走行後も排出ガス目標値に適合していること)の強化
排出ガス低減装置の機能不良を監視
車種に応じ耐久走行距離を延長(乗用車では3万kmを8万kmに延長)
  
車載診断システム(OBDシステム)の装備義務付け
車種により、平成12年(2000年)から平成14年(2002年)に実施。
 
(乗用車等の規制実施に当たっては、対応の円滑化に配慮が必要。)
 
 
 (2) 中長期的な低減目標
  ◇  平成17年(2005年)頃を目途に、各車種とも今回の目標値から更に1/2以下にすることを目標に技術開発を進めることを要望(具体的な目標値、実施時期等は今後技術的に検討。)。
 走行実態調査を行い、必要に応じ排出ガスの試験方法を改定することが必要。その際、我が国の環境保全上支障がない範囲での国際調和も考慮。
 
 

2.ガソリン自動車の燃料蒸発ガス

燃料蒸発ガスとして排出される炭化水素を一層低減。
 
 (1) 当面の対策
〔視点〕 〔対策〕
夏期における長時間の駐車時には燃料蒸発ガスの排出量が増加していると推定され、低減が必要。
 
従来の走行直後の排出(HSL)に加え、真夏の高温時を想定し、24時間の駐車時の排出量(DBL)を測定。
 
車両から排出される燃料蒸発ガスを精度よく測定することが必要。
密閉された測定室(SHED)の中に車両を入れて測定する方法に変更。
排気管排出ガスの規制強化に併せて実施。
 
 
許容限度(2g/test)は変更無し。
試験に大きな影響を与える試験燃料規定(蒸発性状を示すリード蒸気圧:RVP)については、今後1年間を目途に決定。
 
 (2) 中長期的な課題
   {1}DBLの測定時間の延長、{2}走行中の燃料蒸発ガス(RL)規制の導入、{3}市場に流通するガソリンのリード蒸気圧低減、{4}給油時の燃料蒸発ガス対策(自動車側及び給油所側の対策)について、今後検討。
 
 

3.特殊自動車

 ホイール・クレーン、フォーク・リフト、農耕トラクタなどの特殊自動車は、これまで自動車排出ガス規制の対象外とされてきたが、その排出ガスが自動車全体に占める寄与が、窒素酸化物で約3割、粒子状物質で約1割を占めることから、対策を実施。

 (1) 当面の対策
 排出寄与割合等を勘案し定格出力19kW以上560kW未満のディーゼル特殊自動車を排出ガス規制の対象に追加。
 規制対象物質は、一般ディーゼル自動車同様に、NOx、HC、CO、PMとし、特に、NOx及びPMを重点的に低減。
 規制開始時期は、排出ガス計測施設の整備等に加え、エンジン及び車体の設計、開発、生産準備等に必要な期間を考慮し、平成16年(2004年)。
低減目標値、規制時期は、欧米第2次規制値とほぼ整合。
黒煙については、測定方法を含め早急に検討。
 排出ガス測定モードは、ISO(国際標準化機構)のディーゼル特殊自動車用のC1モードを採用。(エンジン単体での試験方法)
 
(2) 中長期的な課題
   {1}更なる規制強化、{2}規制対象範囲の拡大(定格出力19kW未満又は560kW以上のディーゼル特殊自動車、ガソリン・LPG特殊自動車)については、引き続き検討。
 
 

4.今後の主な検討方針

 (1)  ディーゼル自動車については、来年中を目途に審議予定。
 (2)  燃料品質対策を検討。
 (3)  中長期的に、走行実態調査の結果を踏まえ、排気管排出ガス試験方法の見直しを検討。
 
 

5.その他主な関連の諸施策

 (1)   自動車の低公害性の評価手法及び評価結果の表示手法について検討が必要。また、低公害車大量普及のための制度的方策の検討が必要。
(2)  今後とも、点検・整備の励行、車検及び街頭検査での確認等により使用過程での排出ガス低減を図るほか、使用過程の排出ガス低減装置の性能維持の状況を把握するため、抜き取り検査(サーベイランス)の導入等について必要性も含め検討することを要望。
(3)  地球温暖化対策も視野に入れ、低排出ガス技術と低燃費技術とが両立する方向への技術開発が必要。
連絡先
環境庁大気保全局自動車環境対策第二課
課長    三宅哲志(6550)
 課長補佐 野津真生(6552)