報道発表資料

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1998年03月04日

バーゼル条約第4回締約国会合について

2月23~27日、マレーシアのサラワク州クチン市において、約115ヵ国の代表、国際機関及び環境・産業界のNGOの参加のもと、「有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約(通称バーゼル条約)」第4回締約国会合が開催された。今次会合では、技術作業部会で作成された条約の規制対象及び規制対象外の廃棄物を例示した2つのリストが、条約の新たな付属書(付属書[8]及び[9])として採択され、条約の規制対象の明確化が図られた。また、有害廃棄物の輸出禁止義務を負う国のリストである付属書[7]の改正提案については見送りとなった。
1.経緯
 バーゼル条約は、1989年3月に採択され、1992年5月に国際的に発効した(我が国は1993年に加入)。現在までに117ヵ国が締約国となっている。1995年にジュネーブで開催された第3回締約国会合においては、リサイクル目的を含む有害廃棄物の先進国(付属書[7]に掲載された国。具体的には、OECD加盟国、EC加盟国及びリヒテンシュタイン)から途上国への輸出全面禁止を含む条約改正が採択された(本件改正については未発効)。

2.会議の概要
 会議には、約115ヵ国の代表(このうち締約国は約95ヵ国)、IMO、OECD等の国際機関及び環境・産業関係のNGOが参加した。第4日目に行なわれたハイレベル・セグメントにおいては、UNEPのテプファー新事務局長及びマレーシア、インドネシア、英国(EU議長国)、シリア等約10ヵ国の環境大臣が参加した。我が国からは在ジュネーブ国際機関日本政府代表部の林公使を首席代表として、外務省、環境庁、通産省の担当官が出席した。
議長は開催国マレーシアの科学技術環境省環境局次長のイブラヒム女史が務めた。

3.主な結果
(1)廃棄物リストの採択
 昨年2月の第12回技術作業部会で取りまとめられた条約の規制対象及び規制対象外の廃棄物を例示したリストが、それぞれ付属書[8]及び[9]として採択された。これらのリストはこれまで付属書[1](廃棄物のカテゴリー)及び[3](有害特性)によって定義されていた有害廃棄物の範囲を明確化するものであり、条約の円滑な実施に資するものとして各国から歓迎された。また、リストのレビュー・メカニズムの検討を今後進めることとなった。付属書は採択後6ヵ月間で発効することとなっている。

(2)付属書[7](全面輸出禁止義務を負う国のリスト)改正提案
 今回、モナコ及びイスラエルから付属書[7]に自国を追加する趣旨の改正提案が提出された。一方、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド等は付属書[7]の対象国はOECD諸国等に限らず有害廃棄物の管理能力のある国は認められるべきであり客観的な基準を定めるべきであると主張した。これに対し、開発途上国は付属書[7]の国を拡大することは輸出全面禁止の趣旨を弱めることになると主張して改正に強く反対した。この結果、輸出全面禁止の条約改正が発効するまでは付属書[7]を改正しないこと、付属書[7]に関連する検討を継続することを趣旨とする決議が行われた。

(3)技術協力のための地域センター
 開発途上国における廃棄物の発生抑制、有害廃棄物の管理能力の向上等のための地域センターを設置するための活動を一層推進することが合意された。アジア太平洋地域については、中国(既に設置)、インドネシア、インドの3ヶ所に設置する準備が進められているが、我が国より来年度から本件活動に対して財政的支援を行う旨表明し、歓迎された。

(4)その他
 上記に加えて、輸出全面禁止の条約改正の早期批准、不法取引防止のための取組の強化、損害賠償責任議定書の早期策定などが決議された。
 次回締約国会合は、条約採択10周年を記念して、スイスのバーゼルにおいて開催されることとなった。

4.今後の課題
(1) 採択された廃棄物リストの実施のための国内措置を行うとともに、技術作業部会におけるレビュー・メカニズム等の検討に積極的に参加する。

(2) アジア地域のセンターへの支援等を通じて、開発途上国における廃棄物の管理能力の向上のための協力を推進する。

(3) 条約の円滑な実施のための残された課題(附属書[7]対象国の考え方、条約第11条に基づく地域協定等の扱い等)について、関係国と協議しつつ検討を進める。
連絡先
環境庁水質保全局企画課(海洋環境・廃棄物対策室)
室 長 :太田 進  (6620)
 補 佐 :高橋 康夫(6621)
 担 当 :尾高 明彦(6623)