報道発表資料

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2009年09月15日
  • 自然環境

平成21年度野生生物保護対策検討会アホウドリ保護増殖分科会の開催結果について

 環境省では9月15日に、「平成21年度野生生物保護対策検討会アホウドリ保護増殖分科会」を開催し、アホウドリの保護増殖事業の実施結果報告と今後の計画についての検討を行いました。
 この中で、昨年度、アホウドリの最大の繁殖地・鳥島において環境省が実施したモニタリング事業により、当年生まれのヒナが310羽確認されたことを報告しました。平成5年の事業開始以降、確認されたヒナの数としては最高となり、鳥島の個体群は全体でおよそ2300羽と推定されます。
 また、環境省が米国魚類野生生物局との協力により実施している日米共同衛星追跡事業では、アホウドリ成鳥の抱卵期の採餌海域が初めて明らかになるとともに、鳥島のヒナ及び聟島(むこじま)で人工飼育されたヒナに衛星発信器を装着して行動追跡を行っており、巣立ち約3ヶ月後の8月末までの移動経路が把握できています。
 また、山階鳥類研究所が環境省と米国魚類野生生物局との協力により実施している聟島でのアホウドリ新繁殖地形成事業については、2月5日に鳥島から聟島までヒナ15羽をヘリコプターで移送し、全てのヒナが5月25日までに巣立ったことが報告されました。
 聟島事業の今後の計画についても検討が行われ、平成22年の繁殖期(2月頃)には、アホウドリのヒナ15羽(今年と同数)を伊豆諸島の鳥島から小笠原群島の聟島まで移送して、巣立ちまで飼育することとなりました。

I 環境省野生生物保護対策検討会アホウドリ保護増殖分科会検討員 名簿

小城 春雄
北海道大学 名誉教授
尾崎 清明
(財)山階鳥類研究所標識研究室 室長
長谷川 博
東邦大学理学部 教授
樋口 広芳
東京大学大学院農学生命科学研究科 教授  (五十音順 敬称略)

II 野生生物保護対策検討会アホウドリ保護増殖分科会での報告及び検討事項

1.鳥島での保護増殖事業について

[1]平成20年度の実施結果
平成21年2月に行った環境省の調査により、今年生まれたヒナは、鳥島の燕崎(元々の繁殖地)で268羽、初寝崎(新しい繁殖地)で37羽、その他の地点で5羽の計310羽がカウントされ、昨年の274羽より36羽増加した。(※このうち燕崎のヒナ15羽を2月5日に小笠原聟島へ移送した。)
ヒナのカウント数が300羽を超えたのは、平成5年の事業開始以降初めて(図1参照)。
分科会検討員の長谷川東邦大学教授により、アホウドリの鳥島個体群は約2360羽と推定されている。

イメージ 図1 鳥島における2-3月期の確認ヒナ数の推移
図1 鳥島における2-3月期の確認ヒナ数の推移

[2]今年度(平成21年度)の実施計画
昨年度も順調な繁殖が確認されたため、今年度も2月にモニタリングを行う。また、初寝崎のヒナには、来年4月~5月に足環を装着する。
鳥島では極力人為を排除して観察を続ける方針とするが、モニタリング結果より、繁殖環境の維持・改善のための事業再開の必要性が高まったと判断される場合には、分科会委員に諮り、対応の必要性等を検討する。

2.日米共同衛星追跡事業

[1]昨年度以降(平成20年度~平成21年度)の実施結果
ア.抱卵期以降の繁殖成鳥の移動経路
平成20年11月下旬に、日本3台、米国3台の発信機を鳥島(燕崎)のアホウドリの繁殖個体に装着した。
平成21年3月末までに2台が発信を終了しましたが、その他の発信機については、約9ヶ月間にわたって人工衛星による行動追跡が成功している。
これにより、鳥島で繁殖するアホウドリの主な採餌域(抱卵期)が福島県沖から岩手県沖であることが初めて分かった(図2・図3参照)。
イ.巣立ちヒナの移動経路
平成21年5月中旬に、日本2台、米国5台の発信機を鳥島の巣立ち前のアホウドリのヒナに、同じく日本2台、米国5台の発信機を聟島に移送した巣立ち前のアホウドリのヒナに装着した。
平成21年6月上旬までに鳥島の4台が発信を終了したが、その他の鳥島の3台、聟島の7台について8月20日現在も電波を受信しており、約3ヶ月間にわたって人工衛星による行動追跡に成功している。
鳥島個体の多くは一旦東進した後に北に方向転換して、アリューシャン列島に達しましたが、聟島個体の多くは北進して本州沿海域を経由して、オホーツク海に入った後に、ベーリング海に至っている(図4・図5参照)。
[2]今後(平成21年度~平成22年度)の実施計画
平成22年度も、鳥島・聟島の巣立ちヒナを対象に、発信機を取り付け、人工衛星による行動追跡を実施する。
イメージ 図2:抱卵期の採餌行動域(2008年12月) イメージ 図3:育雛期の採餌行動域(2009年1月‐3月)
図2:抱卵期の採餌行動域
(2008年12月)
図3:育雛期の採餌行動域
(2009年1月‐3月)
イメージ 図4:鳥島の巣立ちヒナ追跡結果(2009年8月20日まで) イメージ 図5:聟島の巣立ちヒナ追跡結果(2009年8月20日まで)
図4:鳥島の巣立ちヒナ追跡結果
(2009年8月20日まで)
図5:聟島の巣立ちヒナ追跡結果
(2009年8月20日まで)

3.小笠原(聟島)での繁殖地形成事業

[1]今繁殖期(平成21年2月~現在)の実施結果報告
ア.ヒナ移送と人工飼育

<移送>

2月5日に鳥島から聟島までヒナ15羽をヘリコプターで移送。
捕獲から放鳥までの時間は約8時間だった(ヘリによる移送時間は1.5時間)。
ヒナの性比は雄10羽、雌5羽。
移送中に衰弱したヒナはなく、放鳥時にも健康状態に異常のあるヒナはなかった。

<飼育>

聟島の飼育ヒナの体重成長は野生のヒナに比べてやや軽い状態で推移した。
1羽も死ぬことなく、全てのヒナが5月11日~25日の間に巣立った。
イ.デコイ・音声装置の設置
平成20年11月にデコイ・音声装置を設置した。
平成21年2月~5月に音声装置を稼働させた。
音声装置稼働中少なくとも3羽の亜成鳥が飛来しそのうち2羽は求愛行動を行った。
[2]今後の実施計画
移送するヒナは昨年度と同様、35日齢(移送予定日は2月5日~10日)、ヒナ数は15羽(利用するヘリに1度に載せられる最大数)とする。
飼育方法は基本的に今年と同様とする。
デコイ・音声装置は平成21年10月~平成22年5月まで設置する。

添付資料

連絡先
環境省自然環境局野生生物課
課長 : 塚本 瑞天 (6460)
課長補佐 : 西山 理行 (6475)
係長 : 中山 直樹 (6468)
主査 : 浪花 伸和 (6469)
直通  (03) 5521 - 8283

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