報道発表資料
環境庁は、平成9年度に創設した「未来環境創造型基礎研究推進制度」について、約1ヶ月間の公募期間を設け研究課題を募集し、応募された課題について総合研究推進会議(座長;平岡 正勝 京都大学名誉教授)において、厳正な課題審査を行ってきたところ、 今般、採択課題を以下の2課題に決定した。
・「化学物質による生物・環境負荷の総合評価手法の開発に関する研究」 |
研究課題代表者 九州大学薬学部教授 内海 英雄 |
・「亜熱帯域島嶼の生態系保全手法の開発に関する基礎研究」 |
研究課題代表者 環境庁国立環境研究所生物圏環境部生態機構研究室長 野原 精一 |
- 未来環境創造型基礎研究推進制度の概要
次世代の環境保全技術の基礎となる「知的資産」を蓄積するため、産・学・官の連携の下、基礎的・基盤的研究を実施することを目的に平成9年度創設した制度。
研究期間は3年間(2年間の延長可)、研究費は年間1課題当たり1億円程度を上限とし、原則として研究課題ごとに国立試験研究機関、大学及び民間研究機関等からなるプロジェクトチームを編成し研究を実施する。
- 課題審査の経過
環境庁に設置した総合研究推進会議(座長:平岡正勝 京都大学名誉教授)において3つの研究領域({1} 次世代型環境リスク評価技術に関する基礎研究、{2} 環境効率の高い環境修復技術に関する基礎研究、{3} 生物多様性の保全に関する基礎研究)を設定し、平成9年5月29日(木)~6月27日(金)の約1ヶ月間を公募期間として、研究課題を募集した。
その結果、128件の応募があり、応募課題について総合研究推進会議による厳正な書類審査及び研究課題代表者からヒアリングを経て採択課題を決定した。
- 採択課題の概要
(1) 化学物質による生物・環境負荷の総合評価手法の開発に関する研究
{1} 研究課題代表者 九州大学 薬学部 内海 英雄 {2} 共同研究機関 厚生省国立医薬品食品衛生研究所、環境庁国立環境研究所、
北海道大学,東北大学,東京大学,帝京大学,横浜国立大学,
大阪大学,摂南大学,岡山大学,
神奈川県環境科学センター,福岡県保健環境研究所,
(株)富士電機総合研究所,(株)三菱化学安全科学研究所{3} 研究の概要 現在、地球上には10万種類を超える人工化学物質が混在するが、これらの物質が生物に及ぼすリスクを総合的かつ複合効果も含めて評価するために、簡易な生物評価系(生物を利用した評価システム)を用いた評価手法を開発するための基礎研究を行う。
具体的には、毒性検出原理の異なる十数種類の生物評価法を用いて約300種類の代表的化学物質等のリスクを定量評価し、さらに河川水、産業廃棄物埋立地浸出水等に適用して、簡易で信頼性の高い評価手法を確立する。{4} 期待される成果 未来環境で予想される膨大な化学物質による生物・環境へのリスク低減化に向けた評価技術が確立される。 {5} 研究期間 平成9年度~11年度 {6} 共同研究機関 90,420千円
(2) 亜熱帯域島嶼の生態系保全手法の開発に関する基礎研究
{1} 研究課題代表者 環境庁国立環境研究所生物圏環境部 野原 精一 {2} 共同研究機関 農林水産省森林総合研究所、気象庁気象研究所、
東京都立大学、東京大学、奈良女子大学,
千葉県立中央博物館、
山梨県環境科学研究所,(財)自然環境研究センター{3} 研究の概要 亜熱帯域は生物多様性(多様な生物が相互の関係を保ち、その環境の中で繁殖・生育すること)がきわめて豊富であり、特に小笠原諸島は、シダ類以上の高等植物の固有種率が
3割を超えており、独自の生態系を持った貴重な島々である。しかし、近年観光等による開発により、その固有種の存続が危惧されている。
本研究では、これらの島々を対象に、地質的特性及び土地利用の変遷を考慮しつつ生物多様性の現状把握を行い、生物多様性の維持機構の解明を行うとともに、固有種の存続を
左右する移入種の生態と生物群集への影響を明らかにし、生態系保全手法の開発のための研究を行う。{4} 期待される成果 世界に誇る小笠原諸島における生物の多様性の維持が図られる。 {5} 研究期間 平成9年度~11年度 {6} 共同研究機関 88,080千円
- 連絡先
- 環境庁企画調整局環境研究技術課
課 長 :石川 明彦(内6240)
試験研究調整官:加藤 正男(内6241)
主 査 :磯部 隆(内6244)
担 当 :土井 智史(内6246)