報道発表資料

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1997年11月14日

自然環境保全審議会野生生物部会の開催について

自然環境保全審議会野生生物部会が11月14日(金)15時45分から開催され、同部会において、ワシミミズクを国内希少野生動植物種に追加指定することを内容とする「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律施行令」の改正についての内閣総理大臣からの諮問に関して審議が行われる。
<今回の諮問の概要>

○ワシミミズクを国内希少野生動植物種に追加指定。
 ・ワシミミズクについては、平成6年12月の緊急指定種への指定後、生息状況調査(調査総括:藤巻裕蔵帯広畜産大学教授)を実施した結果、国内に定着する希少種であることが明確となったため、今回国内希少野生動植物種に移行する点を諮問するもの。
  (緊急指定種としての指定期間:平成6年12月28日~平成9年12月27日)

注)「国内希少野生動植物種」
本邦に生息(生育)する絶滅のおそれのある野生動植物種(個体の捕獲等、譲渡し等を規制)
「緊急指定種」
本邦に生息し、特に緊急にその保護を図る必要がある種(3年以内で期間を限って捕獲等、譲渡し等を規制)

・ワシミミズクが追加指定されると国内希少野生動植物種は合計54種になる。

・ワシミミズクの生息状況等の概要は次のとおり

種    名
(学    名)
ワシミミズク
(Bubo bubo)
       選定要件


  生 息 状 況 等
 
フクロウ類の中でも全長約70cmと最も巨大な種の一つ。
本種は、従来、我が国にまれに渡来する種として位置づけら
れていたが、平成6年6月に北海道北部の崖地において日本
で初めて繁殖が確認された。
北海道内でも個体数、生息地とも非常に限定されている。
大型の猛禽類であり、マニア等に密猟されるおそれがある。




注)「希少野生動植物種保存基本方針」(抄)
第二 希少野生動植物種の選定に関する基本的な事項
1 国内希少野生動植物種
(1) 国内希少野生動植物種については、その本邦における生息・生育状況が、人為の影響により存続に支障を来す事情が生じていると判断される種(亜種又は変種がある種にあっては、その亜種又は変種とする。以下同じ。)で、以下のいずれかに該当するものを選定する。
ア その存続に支障を来す程度に個体数が著しく少ないか、又は著しく減少しつつあり、その存続に支障を来す事情がある種


(参考1)

ワシミミズクについて


1.形態
 体長約70cm 耳羽は長く、褐色で大きい。体の大部分は褐色で黒い軸斑と細かい横斑があり、顔は褐色で細い黒線が同心円状と放射状に並んでいる。目の内側から耳羽の内側に続く灰白色の線がある。胸の軸斑は太い。翼は幅が広く、下面は淡褐色で、黒い横斑があり、尾羽は短くて褐色、黒帯が数本ある。目は橙褐色。


2.生態的特性
 ワシミミズクは、主に岩壁の岩棚で営巣する。その他、樹洞、地面、ワシタカ類の古巣等での営巣も確認されている。 昼間は樹枝上や岩棚などをねぐらとして休み、夜間飛び出して活動する。
 ハタネズミ類やドブネズミなどの小型哺乳類を中心に、多くの鳥類、ヘビ、トカゲ、カエル、魚類、カニ、昆虫等多様な種を餌とする。獲物は鋭い爪で押さえ嘴で引きちぎって食べ、羽毛、骨などの不消化物はペリットとして吐き出すので、ねぐらの付近にはペリットが散在する。
 太くてよく通る声でウーウーと鳴く。
 繁殖行動は産卵の1~2ヶ月くらい前から始まり、オスメスの位置が接近し、夕方からよく鳴き合うようになる。1腹の産卵数は1から4個で平均約3個である。営巣中はメスは1日中抱卵を続け、オスがメスに餌を運ぶ。抱卵期間は約1ヶ月。雛は孵化後5~6週で巣立ち、孵化後7~8週で飛べるようになる。生後5から6年で性成熟を迎える。
 また、ワシミミズクは年間を通して強い定住性とテリトリー性を示すことが知られている。


3.生息状況
 北海道北部でワシミミズク Bubo bubo の繁殖が確認されるまで、ワシミミズクは迷鳥と考えられており、これまで特に分布や生息数について調べたものはなかった。そこで、ワシミミズクの生息状況を明らかにするため、平成6~8年度に北海道各地で現地調査等を行った。
 ワシミミズクの生息分布は、今回の調査結果から北海道北部、知床半島を含むオホーツク海沿岸、十勝地方北部、根室地方である。
 ワシミミズクの生息数は、今回の調査結果から、10羽前後と推定される。


4.生息環境等
 ワシミミズクの生息環境として、営巣場所としての崖地や岩場と、採餌場所である比較的開けた環境とが組み合わさっている環境が適していると考えられる。
 マニア等の密猟、採餌場所の減少、交通事故等がワシミミズク生息の圧迫要因であると考えられる。
連絡先
環境庁自然保護局野生生物課
課長:小林 光  (6460)
 担当:植田、長田(6465)