報道発表資料
環境省が実施している「生息域外保全方策検討業務」の中で、昨年度実施した「生息域外保全モデル事業(以下モデル事業)」において、野生下で絶滅していたコシガヤホシクサが、最後の自生地であった茨城県下妻市砂沼で発芽に成功しましたのでお知らせいたします。
※この事業は、独立行政法人国立科学博物館筑波実験植物園が中心となり、環境省と共同で実施しました。
1.モデル事業の概要
コシガヤコシクサは、水位が高い間は水中で成長し、水位が下がる秋頃に水面に花茎を出して結実するという水位変動に応じたサイクルで生育する植物で、砂沼では、春~夏季に農業用水として溜水させ、農業用水の需要がなくなる秋季以降は水位を下げる水管理がなされていた。全国的な水不足となった1994年、一年を通じて溜水させておく水管理に切り替えられたため、花茎が水中に没したまま結実できず、消滅したが、平成20年度のモデル事業において関係者と水位環境改善への合意形成を図り、砂沼への播種実験等を実施し、砂沼での発芽に成功した。
2.コシガヤホシクサの概要
(1)種名
コシガヤホシクサ(学名 Eriocaulon heleocharioides)
ホシクサ科
(2)カテゴリー
野生絶滅(EW)
(環境省レッドリスト(H19年))
(3)生態等
- 草丈:10~30cm
- 分布:本州(埼玉県、茨城県) ※現在は消滅
- 生活史:夏型一年草、花期:7月~9月、果期:9月~11月
- 生息環境:ため池や河原などの湿地
- 水位が高い間は水中で成長し、水位が下がる秋頃に水面に花茎を出して結実するという水位変動に応じたサイクルで生育
3.経緯
- 埼玉県越谷市で発見された後、長らく絶滅したと思われていたが、1975年に茨城県下妻市砂沼で発見された。
- 砂沼では、春~夏季には農業用水として溜水させ、農業用水の需要がなくなる秋季以降は水位を下げる水管理がなされていた。
- 全国的な水不足となった1994年には、一年を通じて溜水させておく水管理に切り替えられたため、花茎が水中に没したまま結実できず、自生地から消滅。
- 平成20年度のモデル事業において関係者と水位環境改善への合意形成及び砂沼への播種実験等を実施
【参考】生息域外保全方策検討業務について
平成19年度より絶滅のおそれのある野生動植物種を緊急的に生息域外に移し、その保護を図る「生息域外保全」方策の検討を行っており、平成21年1月には生息域外保全を実施する際に留意すべき事項を整理した「絶滅のおそれのある野生動植物種の生息域外保全に関する基本方針」を作成した。また植物園や動物園等のご協力をいただき、域外保全の知見や技術の集積のためのモデル事業を実施した。(植物4種、動物4種)。
- 連絡先
- 環境省自然環境局野生生物課
課長 : 星野 一昭 (6460)
課長補佐 : 西山 理行 (6475)
係長: 坂口 隆 (6469)
主査 : 浪花 伸和 (6469)