報道発表資料
今回会合では、エストラーダ議長が作成した議定書案が議論の軸となった。全体会合の下に、テーマごとに設けられた四つのノングループで議論を行い、さらに、個別の主要論点については、それぞれ、関係国で非公式な協議を積み重ねて交渉が進められた。精力的な交渉の成果として、エストラーダ議長案に対し、更に相当数の修正を加えた新たな交渉テキストが作成された。
今回の結果を踏まえた交渉テキストは、多くの論点が相互に関連してパッケージとなっているため、重要な部分ではなおコンセンサスがないものの、論点が相当詰められ、考えられるオプションが絞り込まれた。交渉妥結に必要な判断を得ていく上での基礎が築かれたと言えよう。
なお、エストラーダ議長は、調整作業を継続させて、この交渉テキストを一層改善するため、今回会合を閉会とせず、京都会議の直前(11月30日)にAGBM会合を再開することとした。
1.AGBM第8回会合の概要
・10月22日(水)~31日(金) ・於:ボン(ベートーベン・ハレ) ・参加国 約130締約国、5非締約国 ・出席者 政府職員及びNGO合計約1000人 (マスコミ関係者を除く) |
(1)数量目標
我が国の提案について、公式、非公式の機会を通じて説明し、各国の理解を求めた。
また、今回新たに、米国、G77及び中国等が、数量目標に係る提案を行った。
【米国提案】
・2008年から2012年に、排出量を1990年レベルに戻し、その後5年間(2013年から2017年)には、1990年レベルを下回る水準に削減。
・その後も更なる削減のために努力。
・排出権取引、共同実施といった柔軟性のある措置を導入。
差異化の問題については、長期的な課題としては認めつつも、一律目標グループは、引き続き、京都会合での合意は困難と主張。他方、差異化グループは、関係国協議を実施し、交渉テキストに入れるべき合意ペーパーを作成した。これがカッコ付きながら議長テキストに盛り込まれた点が今回会合の大きな成果。今後の課題は、具体的な国別の割り当て方式の検討。
EUバブルについては、EUが、16日のEU環境相理事会の決定を説明し、新たな条文案を提示。これに対して、多くの国々は、責任の所在等を理由に、引き続き問題点を指摘し、説明の明確化を求めた。
「柔軟性」の措置については、EUが5年間のバジェットを採用することを明らかにしたことにより、柔軟性の議論が大きく前進した。排出権取引、共同実施についても、米、EU等先進国間で、導入の条件、手順等の具体的な条文レベルでの協議に入っている。途上国は、国内の措置を優先すべき等として未だ反対しており、特に、途上国とのクレジットを伴う共同実施には強く反対しているが、柔軟性の実現に向けて、確実に進展がなされた。
シンク(吸収源)の取扱いについては、日本、EU、AOSIS等は排出量のみに目標を設ける、グロスアプローチを主張。他方、米、豪、加、NZ等はネットアプローチを主張し、これまでのところは合意に達していないが、エストラーダ議長は合意形成に向けて議論を進めるべく、強いイニシアチブを発揮。
対象ガスの範囲については、全ての温室効果ガスを対象とすべきと主張する米、加、豪等と、当面、CO2、メタン、N2Oを対象とすべしと主張する日本、EUとの間で更に調整が必要。
(2)政策・措置
議長テキストは、政策措置の義務化、共通化を目指すEUと、政策調整を拒む米国との妥協を図るような考え方を提案しており、これを基に協議。主要項目について、調整の進展がみられたが、政策分野リストの位置づけ、政策調整の是非について、今後特に重点的な検討が必要。
かかる政策措置の実施に伴って、途上国に及ぶ影響の取扱いについては、政策措置は悪影響を回避するよう実施するとともに、損失が生じた場合の補償措置を求める途上国と、このような提案は受け入れられないとする先進国との対立が解消されていない。
(3)自主的に排出目標を設定する国の規定(10条問題)
先進国は、途上国の参加の一環として、自主的に排出目標を設定する国に関する規定の導入を重視しているが、途上国は、新たな義務を求めるものとして反発。その一方で、自主的参加国のクライテリアについての議論もなされ、また、途上国の中にも一定の評価をする国もあるなど、議論の進展がみられた。
(4)全締約国の約束の実施の促進
先進国は、条約4条1項の約束の範囲内で、できるだけ具体的な措置を盛り込もうとしたが、途上国は、このような措置は追加的なもので受け入れられないとの立場のため、調整は難航。それぞれの立場を反映したかっこ付きの案をとりまとめたが、今後更に調整が必要。
また、既存の義務の実施の推進に当たって、途上国は新規かつ追加的な資金、技術の支援が必要と主張し、先進国は、既存の資金メカニズムで対応可能と主張、対立が続いている。
このような対立が続く中で、我が国は、先進国、途上国とそれぞれ会談を行うなど、両者の橋渡しをするべく尽力した。
(5)資金メカニズム(13条問題)
全締約国の約束の実施の促進との関係で、途上国は新たな資金援助を求めている。先進国は、条約の既存の資金メカニズム(GEF)によって、必要な資金援助ができるとしてその必要性を認めていない。
(6)組織的事項等
他の非公式グループにおける実質面の議論を前提に、前文、定義規定、組織事項、最終条項等について、主として法制度的な側面から議論。
締約国会議の構成の仕方、不履行を是正する措置(コンプライアンス・メカニズム)、議定書加入国の責任分担(連帯責任)、発効要件など、いくつかの論点を京都会合へ持ち越したものの、前回会合と比べて、かなりまとまったテキストが作成され、全体としては検討作業が相当進展した。
○参考1 G77及び中国の提案 |
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○参考2 ベルリンマンデートと同アドホックグループ会合(AGBM) |
1995年3月に開催された気候変動枠組条約第1回締約国会議において、西暦2000年以降の先進国の取組について、{1}先進国の政策・措置、{2}数量化された排出抑制削減目的、{3}全締約国による既存の約束の実施の推進を含んだ議定書等について第3回締約国会議において採択するべく作業することを決定(ベルリンマンデート)。 これまで、交渉会議として、7回のアドホックグループ(AGBM)を開催した。 |
2.補助機関会合の概要
AGBM第8回会合に併せて、条約の二つの補助機関会合を開催。
(1)条約の実施に関する補助機関(SBI)会合
SBIにおいては、附属書I締約国の通報、資金メカニズム、共同実施活動、技術開発・技術移転、第4回締約国会議(1998年11月、ボンで開催予定)、運営・予算事項について、第3回締約国会議に諮られる決定の案を採択したほか、条約改正、NGOとの協議メカニズム等についても議論を行った。
(2)科学的、技術的助言に関する補助機関(SBSTA)
SBSTAにおいては、SBIと共同で、共同実施活動、技術開発・技術移転について、第3回締約国会議に諮られる決定案等を採択したほか、排出量の推計手法等の方法論に関する事項や、専門家ロスター等について議論を行った。
3.京都会合に向けた今後の予定
・非公式会合 11月8日及び9日、東京
8日は先進国のみ、9日は途上国も出席。
京都会合に向けたハイレベルでの協議
・その他、APEC等のマルチ、バイの種々の機会を利用して、京都会合での合意に向けた具体的な働きかけを行う方針。
・ベルリンマンデート・アドホックグループ第8回会合の再開会合(京都にて、11月30日に開催。残された課題、特に吸収源の取扱いについての合意形成に向けた交渉の進展を図る予定。)
・気候変動枠組み条約第3回締約国会議(12月1日~10日)
4.今後の課題
今回の会合では、京都会合における交渉の基礎となるテキストが作成された。多くの点で各国の意見がなお異なるものの、今後は、このテキストを基に、ハイレベルでの政治的判断も得ながら、京都での最終合意の妥結に向けて、全体をパッケージとした大詰めの交渉を行うこととなる。
我が国としては、京都会議直前のAGBM再開会合の他、今週末に東京で開催する非公式閣僚会合、その他各種のバイ、マルチの機会を利用して、関係国に強い働きかけを行い、京都会合の成功に向けて全力を尽くしていく必要がある。環境庁としても、大木大臣を先頭に、庁を挙げて、最大限の貢献を行っていくこととしている。
- 連絡先
- 環境庁企画調整局地球環境部環境保全対策課
課長 小林 光(6740)
温暖化国際対策推進室
室長 鈴木克徳(6741)
補佐 田中聡志(6758)