報道発表資料

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2021年12月21日
  • 保健対策

「令和2年度化学物質環境実態調査結果(概要)」について

 環境省では、昭和49年度から一般環境中における化学物質の残留状況を継続的に把握することを目的に、化学物質環境実態調査(黒本調査)を実施し、その調査結果を各種化学物質対策に活用しています。この度、「令和2年度化学物質環境実態調査結果(概要)」がまとまりましたので公表します。調査結果の詳細については、今後、「令和3年度版 化学物質と環境」として取りまとめ、公表する予定です。

1.経緯

 昭和49年度に、「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」(以下「化審法」という。)制定時の附帯決議を踏まえ、一般環境中の既存化学物質の残留状況の把握を目的として「化学物質環境調査」が開始されました。昭和54年度からは、「プライオリティリスト」(優先的に調査に取り組む化学物質の一覧)に基づく「化学物質環境安全性総点検調査」の枠組みが確立され、調査内容が拡充されてきたところです。

 その後、「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」(以下「化管法」という。)の施行、「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」(以下「POPs条約」という。)の発効等を踏まえ、平成14年度からは調査結果が施策により有効に活用されるよう、環境省内の化学物質管理施策等を所管している部署からの要望物質を中心に調査対象物質を選定する方式に変更し、平成18年度からは調査体系を「初期環境調査」、「詳細環境調査」及び「モニタリング調査」として実施しています。

 さらに、平成22年度から、排出に関する情報を考慮した調査地点の選定やモニタリング調査における調査頻度等を見直した調査を実施しています。

2. 調査の進め方

(1)調査対象物質の選定

 調査対象物質は、各担当部署から調査要望がなされた物質について、分析法開発の可能性やリスクの観点等を考慮して絞り込みを行った後、令和元年度に開催された中央環境審議会環境保健部会化学物質評価専門委員会(第25回)における評価等を経て選定されました。

(2)調査内容

ア.初期環境調査

 環境リスクが懸念される化学物質について、一般環境中で高濃度が予想される地域においてデータを取得することにより、化管法の指定化学物質の指定、その他化学物質による環境リスクに係る施策について検討する際の基礎資料等とすることを目的として調査を行い、「化学物質環境実態調査結果精査等検討会」及び「初期環境調査及び詳細環境調査の結果に関する解析検討会」においてデータの精査、解析等が行われました。

 令和2年度は10物質(群)を調査対象としました。なお、一部の物質においては、排出に関する情報を考慮した調査地点を含むものとなっています。

イ. 詳細環境調査

 化審法の優先評価化学物質のリスク評価等を行うため、一般環境中における全国的なばく露評価について検討するための資料とすることを目的として調査を行い、初期環境調査と同様、「化学物質環境実態調査結果精査等検討会」及び「初期環境調査及び詳細環境調査の結果に関する解析検討会」においてデータの精査、解析等が行われました。

 令和2年度は7物質(群)を調査対象としました。なお、一部の物質においては、排出に関する情報を考慮した調査地点を含むものとなっています。

ウ. モニタリング調査

 化審法の特定化学物質等について一般環境中の残留状況を監視すること及びPOPs条約に対応するため条約対象物質等の一般環境中における残留状況の経年変化を把握することを目的として調査を行い、「化学物質環境実態調査結果精査等検討会」、「モニタリング調査の結果に関する解析検討会」及び「POPsモニタリング検討会」においてデータの精査や解析等が行われました。

 令和2年度は、POPs条約対象物質のうち総PCB等10物質(群)に、POPs条約対象物質とする必要性について検討されている1物質を加えた11物質(群)を調査対象としました。

3.調査結果

ア.初期環境調査(調査結果は別表1のとおり)

 水質については、9調査対象物質(群)中4物質群(アンピシリン、ベンゾフェノン-4(別名:2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸)、ベンラファキシン及びその代謝物、りん酸ジメチル=2,2-ジクロロビニル (別名:ジクロルボス))が検出されました。

 大気については、全2調査対象物質(1,3,5-トリス(2,3-エポキシプロピル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン (別名:1,3,5-トリスグリシジル-イソシアヌル酸)及びりん酸ジメチル=2,2-ジクロロビニル (別名:ジクロルボス))が検出されました。

イ.詳細環境調査(調査結果は別表2のとおり)

 水質については、全6調査対象物質(群)(アニリン、[(3-アルカンアミドプロピル)(ジメチル)アンモニオ]アセタート類(アルカンアミドの炭素数が10、12、14、16又は18で、直鎖型のもの)及び(Z)-{[3-(オクタデカ-9-エンアミド)プロピル](ジメチル)アンモニオ}アセタート、環状ポリジメチルシロキサン類、二硫化炭素、フタル酸エステル類及びN-メチルカルバミン酸2-sec-ブチルフェニル(別名:フェノブカルブ又はBPMC))が検出されました。

 底質については、全2調査対象物質(群)([(3-アルカンアミドプロピル)(ジメチル)アンモニオ]アセタート類(アルカンアミドの炭素数が10、12、14、16又は18で、直鎖型のもの)及び(Z)-{[3-(オクタデカ-9-エンアミド)プロピル](ジメチル)アンモニオ}アセタート、ビス(N,N-ジメチルジチオカルバミン酸)N,N'-エチレンビス(チオカルバモイルチオ亜鉛)(別名:ポリカーバメート))が検出されました。

 生物については、1調査対象物質群(環状ポリジメチルシロキサン類)が検出されました。

 なお、調査結果には、過去の調査においては不検出で今回初めて検出された物質が含まれていますが、これは検出下限値を下げて調査を行ったこと等によるものと考えられます。

ウ.モニタリング調査(調査結果は別表3-13-2のとおり)

 令和2度のモニタリング調査は、POPs条約発効当初からの対象物質のうちの4物質(群)(PCB類、ヘキサクロロベンゼン類、クロルデン類、ヘプタクロル類)及びPOPs条約発効後に対象物質に追加された物質のうちの6物質(群)に、POPs条約対象物質とする必要性について検討されている1物質(ペルフルオロヘキサスルホン酸(PFHxS))を加えた計11物質(群)について調査しました。

※ 令和2年度調査では、同時分析の可能性及び過年度調査における検出状況等を考慮して、以下の6物質(群)について調査を実施しました。その際、条約対象でない一部の異性体又は同族体を加えて調査を実施しています。   

   ・ ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)

   ・ ペルフルオロオクタン酸(PFOA)

   ・ ペンタクロロベンゼン

   ・ ヘキサクロロブタ-1,3-ジエン

   ・ 短鎖塩素化パラフィン類

   ・ ジコホル

①継続的に調査を実施している物質(PCB類、ヘキサクロロベンゼン、クロルデン類、ヘプタクロル類、ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)、ペルフルオロオクタン酸(PFOA)及びペンタクロロベンゼン)(統計学的な手法による経年変化の解析結果は、別表3-3~3-5のとおり)

 調査を行った媒体(水質、底質、生物及び大気)において、ヘプタクロル類のうちtrans-ヘプタクロルエポキシドが水質、生物及び大気において不検出で、生物のうち鳥類では、ヘプタクロル類のヘプタクロルも不検出でしたが、その他の調査対象物質(群)・媒体で検出されました。なお、以下の媒体別の比較については、環境濃度の比較であり、環境リスクの比較ではありません。

 水質及び底質について平成14年度~令和2年度のデータの推移をみると、水質及び底質中のPOPs濃度レベルは総じて横ばい又は漸減傾向にあると考えられます。水質及び底質中の濃度の地域分布を見ると、例年どおり、港湾、大都市圏沿岸の準閉鎖系海域等、人間活動の影響を受けやすい地域にある地点の多くは、その他の地域にある地点と比べて高濃度でした。

 生物について平成14年度~令和2年度のデータの推移をみると、生物中のPOPs濃度レベルは総じて横ばい又は漸減傾向にあると考えられます。昨年度に引き続き、総PCB等が人口密集地帯近傍の沿岸域の魚については、その他の地域の魚類及び貝類と比べて高濃度でした。

 大気について平成14年度~令和2年度のデータの推移をみると、大気中のPOPs濃度レベルは総じて横ばい又は漸減傾向にあると考えられます。

②その他の物質(ヘキサクロロブタ-1,3-ジエン、短鎖塩素化パラフィン類、ジコホル及びペルフルオロヘキサスルホン酸(PFHxS))

 調査を行った媒体(水質、底質、生物及び大気)において、生物のうち鳥類では、ヘキサクロロ-1,3-ブタジエン、短鎖塩素化パラフィン類の塩素化デカン類及び塩素化ドデカン類並びにジコホルが不検出でしたが、その他の調査対象物質(群)・媒体で検出されました。 

添付資料

連絡先

環境省大臣官房環境保健部環境安全課

  • 代表03-3581-3351
  • 直通03-5521-8261
  • 課長太田 志津子(内線 6350)
  • 保健専門官飯野 彬(内線 6361)
  • 係長酒井 学(内線 6355)

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