報道発表資料
2021年9月30日(木)~同年10月2日(土)にイタリア・ミラノにて国連気候変動枠組条約第26回締約国会議閣僚級準備会合(プレCOP)が行われましたので、お知らせいたします。
1 会合の概要
(1)日程・場所 2021年9月30日(木)~同年10月2日(土)
(2)場所 イタリア・ミラノ
(3)出席者等
主 催:イタリア政府、共催:英国政府(COP26議長国)
参加者:約50か国・地域
我が国出席:赤堀外務省気候変動交渉担当大使、瀬川環境省大臣官房審議官ほか、外務省及び環境省関係者が出席。
2 本会合での議論の概要
冒頭の9月30日午前は、前日まで開催されたユース会合(Youth 4 Climate)の総括として、ドラギ伊首相、ジョンソン英国首相(バーチャル参加)、グテーレス国連事務総長(ビデオ参加)等出席の下、ユース代表の発表に続く、閣僚級セッションが開催された。
その後、同日午後から10月2日までの会期中、対面あるいはオンライン参加にて、下記各テーマに沿って各国・地域代表による全体会合及び分科会形式で議論が行われた(非公開)。
(1)1.5℃目標:緩和の野心
IPCC第6次報告書第1作業部会(WG1)報告書(2021年8月公表)及び国連気候変動枠組条約事務局「国が決定する貢献(NDC)」統合報告書(2021年9月公表)に関する1.5度目標達成についての議論が行われた。これまでに提出された全てのNDCを統合すると、2030年に551億tCO2(2010年比で16%増加)程度の温室効果ガスの排出レベルと推計されており、IPCCが示す気温上昇を1.5℃に抑えるに必要な削減量(2030年において2010年比で45%の削減)のためにはより一層の削減努力が求められること、G20を中心にさらなる取組の強化が必要であることが指摘された。
我が国からは、最新の科学的知見を踏まえた2050年カーボンニュートラルと整合的な目標として2030年度に2013年度比で46%の削減を掲げたこと、また現在、同削減目標を反映するNDCの策定を進めており、パブリックコメント中であること、COP26までに提出予定であることを紹介した。
(2)適応、及び損失と損害
気候変動により海面上昇や降水量の極端な増加といった影響が生じているが、これらのリスクを減じ、また現に生じている自然災害等への迅速な対応を実現する方策について議論が行われた。パリ協定第7条1は、適応能力を向上し、強靱性を強化し、脆弱性を低減させる適応に関する世界全体の目標(Global goal on adaptation(GGA))を設定しているが、GGAの定義や工程表に関する議論が行われた。また、損失及び損害については、2019年の国連気候変動枠組条約第25回締約国会議(COP25)で設置された、災害対策等に経験を有する専門組織等によって構成されるサンティアゴ・ネットワークの運用化に関する議論が行われた。
我が国からは、災害に多く見舞われる国として適応の重要性を十分理解していること、適応策は地域の特性に応じた取組みが重要であること、適応委員会や防災関連の組織・枠組み等の既存リソースを活用・連携することで効率的かつ実質的な進展を図っていくべき旨主張した。
(3)パリ協定第6条
パリ協定第6条(市場メカニズム)の実施に関するルール交渉で大きな論点となっている、京都議定書クリーン開発メカニズム(CDM)のクレジットの扱い、削減量をNDC等に活用する場合の計上(アカウンティング)、市場メカニズムを活用する際の適応支援の資金を捻出する仕組み等について議論が行われた。これらの論点における各国の立場には未だ相違がみられるが、パリ協定の目標達成に貢献するルールづくりの必要性が確認された。
我が国からは、パリ協定第6条に関するルールは、国同士だけでなく民間企業の自発的な市場においても準用され、世界での削減を促すとともに、民間の削減プロジェクトを通じて資金動員にも貢献する重要なルールであること、IPCC報告やNDC統合レポートの公表、各国のNDC更新等、状況は動いており、COP25の時以上に世界全体の排出削減に貢献するためのルールが必要となっていることを指摘した。その上で、ルールにおいて仮に環境十全性の確保を損なうような、猶予や例外扱いを設ける場合は、真に必要で、説明可能なものでなければならず、もしそれらを設ける場合には提案国のみならず、賛同した全締約国が国際社会に対して説明できるようにする必要があること等を指摘した。
(4)資金
気候変動対策に関する途上国支援として、先進国は、途上国に対し2020年時点で年間1,000億ドルの気候資金を合同で動員すること、さらに2021年から2025年までの5年間においてもこの年間1,000億ドルの資金動員目標を維持することにコミットしている。
プレCOPに先立ってOECDが公表した、先進国の気候資金支援実績に関する報告書によれば、直近の2019年時点の先進国による途上国への気候資金支援実績総額は796億ドルであり、目標額の約8割であることから、2025年までの1,000億ドル動員目標の達成計画について議論を継続する必要性があること、また2025年以降の新たな資金動員目標についても、資金の予見可能性、透明性、説明責任の担保を念頭に議論を開始する必要があることが確認された。先進国からは、多額の気候資金需要に応えるためにはドナーベースの拡大や国際開発金融機関を通じた民間資金動員の促進が必要であるという主張が展開され、途上国からは適応分野への資金支援が不足しているという主張が多く聞かれた。
我が国からは、今年6月のG7サミットで表明した2021年から2025年までの5年間で官民合わせて6.5兆円の気候支援の実施と適応支援の促進のコミットメント、及び緑の気候基金への最大30億ドルの拠出の表明について紹介するとともに、2025年以降の新たな資金動員目標については途上国も含めドナーベースの拡大を検討すべきであることを指摘した。また、適応資金のあり方については自然に基づく解決策等を普及し、緩和と適応の両方に資する分野横断型の支援を促進していく必要がある旨述べた。
(5)透明性及びNDCの共通時間軸(コモン・タイム・フレームズ)
パリ協定の下では、全ての締約国が温室効果ガス排出量やNDCの進捗報告を行う。2018年のCOP24で合意された実施指針に基づき、これらの報告のための表・様式を具体化する作業が進められているが、COP26までにこれらの技術的検討のための時間と場を確保する必要性が確認された。NDCの共通時間軸については、パリ協定は締約国間で共通の時間軸を検討すると規定しており、同時間軸の選択肢として5年や10年が挙げられている中、最新の科学を反映し、5年毎に行われる世界全体の気候変動対策の進捗確認(グローバル・ストックテイク)との連携を考慮すべきことが確認された。
我が国からはNDCの共通時間軸については、社会や経済の変化や技術導入の効果を適切に想定できることが重要であり、技術導入の効果発現には時間を要するため一定の長さが必要であること、ただし、時間軸の長さに関わらず、パリ協定第4条9項にしたがって5年毎に通報・更新することは締約国の義務である旨主張した。
(6)COP26での成果にむけて
プレCOP26議長国イタリアから各テーマにおける議論のまとめが報告されるとともに、COP26議長国英国からは上記テーマを含めたCOP26で達成すべき要素及びこれら要素を包含するバランスの取れた成果を希求する旨が述べられた。また国連気候変動枠組条約事務局長からは、COP26に向けて合意文書のドラフト作成作業に着手する必要性が指摘された。
その後、各国から、COP26に向けたステートメントが行われた。我が国からは、COP26では、全ての締約国が協力して、1.5℃努力目標に向けた野心向上、パリ協定実施指針の完成、そして緩和や適応、資金について全体として気候変動の脅威に対する世界全体の対応を更に強化するような成果を上げることが重要という点を指摘した。
3 その他
会期中、日本政府代表団は、COP26議長国英国を含む主要国及び国連気候変動枠組条約補助機関(SBI及びSBSTA)議長等と二国間・二者間で会談し、10月末から開催されるCOP26に向けた重要議題に関する協議を実施した。
連絡先
環境省地球環境局国際地球温暖化対策担当参事官室
- 代表03-3581-3351
- 直通03-5521-8330
- 参事官水谷 好洋(内線 6772)
- 国際企画官小圷 一久(内線 6757)
- 交渉官長谷 代子(内線 6728)
- 担当池田 宏之(内線 6773)