報道発表資料

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2020年03月26日
  • 水・土壌

平成30年度海洋ごみ調査の結果について

 環境省では、平成30年度に、全国10カ所の海岸において漂着ごみ調査等を行い、各地点における漂着ごみの量や種類等を調べました。また、東京湾、伊勢湾、大阪湾及び別府湾並びに我が国周辺の沖合海域における漂流及び海底ごみの調査を行いました。さらに、近年、海洋生態系への影響が懸念されているマイクロプラスチックについて調査を行い、その結果をまとめました。

1.概要

 環境省では、平成22年度から海岸等にある漂着ごみ、平成26年度から海面に浮遊する漂流ごみ及び海底に堆積するごみ(海底ごみ)に関して、量や種類等の調査(サンプル調査)を行っています。

 漂着ごみに関しては、10地点(紋別、岩内、深浦、小名浜、富津、八丈、岬、松江、日南、南さつま)を対象に同様の調査を行いました。

 また、漂流ごみ及び海底ごみに関しては、平成30年度は、東京湾、伊勢湾、大阪湾及び別府湾を対象に、プラスチック類等の人工物を中心に量や種類等の調査を行うとともに、沖合海域等において、存在量等の調査を行いました。

 さらに、近年、海洋生態系への影響が懸念されているマイクロプラスチック※1に関する調査等を行いました。

※1 マイクロプラスチック:微細なプラスチック類(5㎜以下)のこと。含有/吸着する化学物質が食物連鎖に取り込まれ、生態系に及ぼす影響が懸念されている。

2.調査結果

(1)漂着ごみの実態調査

① 各海岸における漂着ごみのモニタリング調査

 平成29年度までの調査対象地点(7地点)を含む10地点において、漂着ごみの量や種類等を調査しました。

 漂着ごみの割合は、容積ベースでは、八丈、岬及び松江を除き、人工物よりも自然物の割合が高い結果となりました。人工物の割合は、プラスチック類の割合が高い地点が多い結果となりました(別添1-1)。プラスチック類の主なものとしては、ロープ・ひも、飲料用ペットボトル、漁網等がありました。

 重量ベースでは、紋別、岩内、深浦、小名浜、富津、松江、日南及び南さつまで自然物の割合が高く、また、八丈及び岬で人工物の割合が高い結果となりました。人工物の割合は、プラスチック類の割合が高い地点が多い結果となりました(別添1-2)。プラスチック類の主なものとしては、飲料用ペットボトル、漁網、ブイ等がありました。

 個数ベースでは、全ての地点で人工物が多く、7地点で9割以上を占める結果となりました。人工物の割合は、全ての地点でプラスチック類の割合が高く(別添1-3)、プラスチック類の主なものとしては、ボトルのキャップ・ふた、ロープ・ひも、ストロー・マドラー等がありました。

 また、各調査地点で回収されたペットボトルを言語表記別に分類した結果、言語が不明なものを除くと、八丈及び松江では外国語表記の割合が6割以上を占めました。一方、小名浜、富津、岬、南さつまでは外国語表記の割合が1割以下で、紋別、岩内、小名浜、富津、岬、日南及び南さつまでは日本語表記が6割以上を占める結果となりました(別添1-4)。

② 全国的な漂着ごみの回収量等のとりまとめ

 地方公共団体、民間団体等において平成29年度に回収された漂着ごみ(自然物を含む)の量を取りまとめたところ、約5.5万トン(平成28年度は約3.3万トン)となりました。

(2)漂流ごみの目視観測調査

① 沿岸海域における漂流ごみの実態調査

 沿岸海域における漂流ごみの目視観測調査は、東京湾、伊勢湾、大阪湾及び別府湾において実施し、漂流ごみの量や種類等を調査しました(別添1-5)。

 発見された漂流ごみ(計823個)のうち人工物は約68%(556個)を占めました。東京湾や大阪湾では、湾奥部に比べ、湾口部や湾央部の漂流ごみが比較的多く、伊勢湾や別府湾では湾央部の漂流ごみが比較的多い結果となりました。発見される人工物の種類は、調査測線により異なっていました(別添1-6)。

② 沖合海域における漂流ごみの実態調査

 沖合海域における漂流ごみの目視観測調査は、東京海洋大学、北海道大学、長崎大学及び鹿児島大学の練習船の協力を得て実施しました。

 日本周辺海域から、日本の南方海域・東方海域まで、目視観測による漂流ごみの量や種類等を調査しました。

 その結果、レジ袋は、関東周辺海域で分布密度が高い地点があったほか、東経145度~150度の間で関東周辺海域と同程度の分布密度の場所がある結果となりました。発泡スチロールは西日本の日本海側の分布密度が高い結果となりました(別添1-7)。

(3)海底ごみの回収調査

① 沿岸海域における海底ごみの実態調査

 沿岸海域における海底ごみの実態調査は、東京湾、伊勢湾、大阪湾及び別府湾において、合計10の漁業協同組合の協力を得て実施し、海底ごみを回収し、このうち人工物について、その重量や個数等を調査しました(別添1-8)。

 その結果、容積ベースでは、別府湾を除いた調査地点において、プラスチック類の占める割合が高い結果となりました(別添1-9)。プラスチック類の主なものとしては、プラスチック製シート類、飲料用ペットボトル、レジ袋等で、一部ではプラスチック製漁網が多い地点もありました。

② 沖合海域における海底ごみの実態調査

 沖合海域における海底ごみの実態調査は、東京海洋大学、北海道大学、長崎大学及び鹿児島大学の練習船の協力を得て実施しました。

 東シナ海(長崎南西沖)、大洗沖、日高沖において、トロール網を用いた調査を行い、海底ごみを回収し、その重量や個数等を調査しました。

 海底ごみの割合は、重量ベースでは、東シナ海及び日高沖では自然物の占める割合が80%以上と高かった一方、大洗沖では人工物が占める割合が49%という結果となりました。人工物の中ではプラスチック類の割合が高い結果となりました。採取された海底ごみの単位面積(km2)当たりの重量は、東シナ海では0~11kg、大洗沖では4~25kg、日高沖では74~649kgという結果となりました(別添1-10)。

(4)マイクロプラスチックに関する調査

① 沿岸海域におけるマイクロプラスチックの調査

 沿岸海域(東京湾、伊勢湾、大阪湾及び別府湾)における漂流ごみの目視観測調査に併せ、これら海域の計20地点において、ニューストンネット(表層を浮遊するプランクトン等の採集に用いるネット)を用いてマイクロプラスチックを採集し、個数を計測しました。

 各調査地点でマイクロプラスチックの海中密度を算出したところ、東京湾湾口部及び湾央部(計4地点、4.69~65.6個/㎥)並びに伊勢湾湾央部(1地点、3.63個/㎥)を除き、0.02~1.37個/㎥となり、平成29年度調査(内浦湾(噴火湾)及び鹿児島湾)の調査結果(0.15~3.28個/㎥)の範囲内でした(別添1-11)。なお、東京湾において高い濃度を示した調査地点については、採集の際に、漂流ごみが集積している潮目を通過したことに起因すると考えられます。

② 沖合海域におけるマイクロプラスチックの調査

 沖合海域における漂流ごみの目視観測調査に併せ、本州・四国・九州周辺の沖合海域及び南方海域において、ニューストンネットを用いて、合計109地点においてマイクロプラスチックを採集し、個数を計測しました。

 その結果、平成26年度以降の調査結果と合わせると、北陸から東北沖の日本海北部に多く、山陰西部沖、九州・四国の太平洋岸、津軽海峡から三陸沖にも高濃度の海域が見られました(別添1-12)。

③ マイクロプラスチックに含まれる有害物質(POPs)の調査

 漂着ごみ・漂流ごみ調査の一環として、海岸12地点、海上2地点で採集したマイクロプラスチックについて、残留性有機汚染物質(POPs: Persistent Organic Pollutants)※2に関する分析を行いました。

 POPsのうち、漂流中に表面に吸着すると考えられるポリ塩化ビフェニル(PCB)については、マイクロプラスチック1g当たり1.7ng~339ngで、過去の調査結果(0.3ng~942.5ng)の範囲内でした。また、過去に製造された製品中に添加されていたと考えられるポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)については、マイクロプラスチック1g当たり最大で23ng(平成28年度調査では最大2,489.7ng)であり、定量限界以下の地点もありました(別添1-13)。

※2 残留性有機汚染物質(POPs):難分解性及び生物蓄積性を有し、国境を越えて長距離を移動して環境汚染を引き起こすおそれがある物質として、「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」の下で、我が国では製造・使用が原則禁止されています。

添付資料

連絡先

環境省水・大気環境局水環境課海洋環境室

  • 代表03-3581-3351
  • 直通03-5521-9025
  • 室長中里 靖(内線 6630)
  • 室長補佐安陪 達哉(内線 6634)
  • 担当小林 和貴(内線 6637)

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