報道発表資料

この記事を印刷
2019年08月30日
  • 地球環境

平成30年度オゾン層等の監視結果に関する年次報告書について

「特定物質等の規制等によるオゾン層の保護に関する法律(昭和63年法律第53号。以下「オゾン層保護法」という。)」に基づき、平成30年度におけるオゾン層の状況、オゾン層破壊物質等の大気中濃度等に関する監視結果を年次報告書として取りまとめました。

1.報告書の概要

①オゾン層の状況

・地球規模のオゾン全量は1980年代から1990年代前半にかけて大きく減少しました。その後減少傾向が緩和し、1990年代後半からはわずかな増加傾向がみられるものの、オゾン全量は1970年代と比べて現在も少ない状態が続いています。

・南極域の春季に形成されるオゾンホールの規模は、1980年代から1990年代半ばにかけて急激に拡大しましたが、1990年代後半以降では、年々変動による増減はあるものの、長期的な拡大傾向は見られなくなりました。2018年は、1990年代半ばから2000年代半ばほどの規模には拡大せず、これは、大気中のオゾン層破壊物質の濃度が減少しているためと考えられます。

・札幌、つくば、那覇で観測された日本上空のオゾン全量は、札幌とつくばにおいて1980年代から1990年代半ばまで減少した後、緩やかな増加傾向が見られます。また、那覇では2000年以降、緩やかな増加傾向が見られていましたが、近年はオゾン全量が少ない年が続いています。

・地球規模のオゾン全量が1960年(人為起源のオゾン層破壊物質による大規模なオゾン層破壊が起こる前)レベルまで回復する時期は、北半球の中・高緯度域で2030年頃、また南半球中緯度では2055年頃と予測されています。一方、南極域の回復はほかの地域よりも遅く、1960年レベルに戻るのは21世紀末になると予測されています。また数値モデル予測からは、オゾン層の回復には、温室効果ガスの増加による成層圏の低温化並びに気候変化に伴う大気の循環の変化が影響を与えることが示唆されています。

②特定物質等の大気中濃度

・北半球中緯度域(北海道の観測地点)では、CFC(クロロフルオロカーボン)の大気中濃度は十数年以上減少し続けています。また一方で、HFC(ハイドロフルオロカーボン)は近年急速に増加しています。HCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)も増加し続けていましたが、一部の冷媒種は近年その増加がゆるやかになっています。

・日本の都市域の代表例として川崎市内で連続測定したCFCの大気中濃度は、次第に変動幅が小さくなるとともに、北海道における大気中濃度とほとんど変わらなくなってきています。変動幅の縮小や濃度の低下には、日本における生産の全廃及び排出抑制等が進んだ結果が反映されていると考えられます。一方で、HCFC及びHFCは、依然として頻繁に高い濃度で検出されています。このことは、これらの物質は現在も多方面で利用されていることや、過去に製造・充填された機器装置等から大気中に放出されていることが反映されていると考えられています。

・オゾン層を破壊するCFCの生産と消費は、モントリオール議定書に基づいて先進国では1995年末までに、途上国では2009年末までに全廃されました。しかし、大気中寿命が非常に長いため、今後、CFCの大気中濃度は極めて緩やかに減少していくと予測されます。一方、CFCと比べるとオゾン層破壊係数の小さいHCFCについては、同議定書の規制スケジュールに従って生産・消費の削減が進められている途中段階にあり、HCFCの大気中濃度は引き続き増加するが、今後20~30年でピークに達し、その後減少すると予測されています。

今後は、オゾン層の破壊の状況や大気中におけるオゾン層破壊物質等の濃度変化の状況について引き続き監視していきます。また、オゾン層保護法に基づくオゾン層破壊物質等の製造数量の規制等の取り組みを着実に実施していきます。

HFCについては、今後大幅な排出増加が見込まれており、2016年10月には、世界的に代替フロンの生産の削減を義務付けるモントリオール議定書の改正が行われました。我が国でも、昨年6月に、国内担保法であるオゾン層保護法が改正され、本年1月に施行されました。また、本年6月に「フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律(平成13年法律第64号)」を改正し、機器廃棄時の対策を強化するなど、上流から下流までのライフサイクル全般にわたる対策を実施しています。

引き続き関係省庁や都道府県、関係団体等と連携しながらオゾン層保護及び地球温暖化防止に向けた対策の推進を図っていきます。

2.背景

オゾン層保護法第22条第2項の規定に基づき、毎年度、オゾン層の状況、特定物質等(オゾン層保護法に基づき生産などが規制されているフロンなど)などの大気中濃度、太陽紫外線の状況の監視結果を取りまとめて公表しています。

 監視結果の取りまとめに当たっては、「成層圏オゾン層保護に関する検討会」科学分科会(座長・今村隆史 国立環境研究所フェロー)及び環境影響分科会(座長・小野雅司 独立行政法人環境再生保全機構環境研究総合推進費プログラムオフィサー)を設置し、御検討いただきました(別紙)。

3.年次報告書全文

環境省ホームページに掲載しています。

https://www.env.go.jp/earth/ozone/o3_report/index.html

(参考1)オゾン層保護法(抄)

第22条 気象庁長官は、オゾン層の状況並びに大気中における特定物質等の濃度の状況を観測し、その成果を公表するものとする。

2 環境大臣は、前項の規定による観測の成果等を活用しつつ、特定物質(特定物質以外の物質であって政令で定めるものを含む。次条において同じ。)によるオゾン層の破壊の状況及び大気中における特定物質等の濃度変化の状況を監視し、その状況を公表するものとする。

(参考2)フロン類について

・CFC(クロロフルオロカーボン):冷媒、発泡剤、洗浄剤等として使用される。オゾン層破壊物質であり、モントリオール議定書の規制対象物質。また、強力な温室効果ガスでもある。先進国では1995年末に生産・消費が全廃されており、開発途上国でも2009年末に生産・消費が全廃された。

・HCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン):オゾン層破壊物質であり、モントリオール議定書の規制対象物質。オゾン層破壊係数はCFCよりも小さい。また、強力な温室効果ガスでもある。先進国では2020年までに、また開発途上国でも2030年までに、生産・消費が全廃される予定。

・HFC(ハイドロフルオロカーボン):CFCやHCFCの代替物質として使用が増えている。オゾン層破壊効果はないものの強力な温室効果ガスであり、京都議定書において排出削減の対象となっている。2016年10月に新たにHFCをモントリオール議定書の規制対象物質とする改正が行われ、2019年1月1日発効した。同改正を受けて議定書の国内担保法であるオゾン層保護法が改正され、本年1月に施行された。

添付資料

連絡先

環境省地球環境局地球温暖化対策課フロン対策室

  • 代表03-3581-3351
  • 直通03-5521-8329
  • 室長倉谷 英和(内線 6750)
  • 室長補佐藤田 祐輔(内線 6751)
  • 担当塚越 詩織(内線 7779)

Adobe Readerのダウンロード

PDF形式のファイルをご覧いただくためには、Adobe Readerが必要です。Adobe Reader(無償)をダウンロードしてご利用ください。