報道発表資料

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1999年08月25日

新宿御苑歴史的建造物の保存改修について

平成11年3月、「新宿御苑歴史的建造物保存検討委員会」は、新宿御苑にある旧洋館御休所・旧御凉亭・大木戸門門衛所及び旧新宿門門衛所の保存活用及び改修について報告した。
 これを受けて、今年度、旧洋館御休所について保存改修工事に着手し、平成12年度中の竣工後、公開する予定である。
1 「新宿御苑歴史的建造物保存検討委員会」の検討

(1)調査・検討の経緯

 新宿御苑内の旧洋館御休所等(旧洋館御休所・旧御凉亭・大木戸門門衛所及び  旧新宿門門衛所)の歴史的建造物の劣化が著しいため、平成10年6月に(財)建築保全センターに委託し、同センターに学識経験者等からなる「新宿御苑歴史的建造物保存検討委員会」を設置して、関東地方建設局営繕部の協力を得て、詳細現地調査や資料に基づき歴史的な評価を行うとともに、保存改修の方針について調査・検討を進めてきた。

(2)各建造物の歴史的評価

旧洋館御休所
 温室を訪れる皇族の御休所として明治29年(1896年)に建設され、木造平屋の建物でアメリカのスティックスタイルを基調とした現在では希少な洋風木造建築物である。大正後期の文献資料から当時の活用状況が示されており、和洋渾然一体となった調度や飾り付けの様子もうかがえる貴重なものである。

旧御凉亭   
 皇太子(後の昭和天皇)の御成婚記念として昭和2年(1927年)台湾在住邦人から献上された建物で清朝中期以降の台湾で行われた建築(門南建築と同じ様式)の様式を正確に取り入れたもので、日本にある数少ない本格的中国風建築として貴重である。

大木戸門門衛所 及び 旧新宿門門衛所   
 いずれも昭和2年(1927年)に建設されたもので当時のデザインの一つの潮流を示すものとして、また、新宿御苑の場所性を読み込んで設計されたものとして歴史的・景観的価値が評価される。

(3)保存活用及び改修方針

  1. 歴史的文化的評価を考慮し、この観点から利活用を考えた計画を行い、あわせて利用者の利便性に配慮する。
  2. 公園景観に配慮し、建物の周辺環境を含めた整備を行う。
  3. 史料に基づく忠実な復元に配慮する。
  4. 耐震診断結果により、現行建築基準法に準ずる耐震補強を行う。その際の補強方法は、建物内外観を損なわないように配慮する。
  5. 改修した建物は、その後の維持保全が容易なように配慮する。
  6. 旧洋館御休所については、歴史的文化的価値を苑内利用者に伝えるため、展示・公開に努める。なお、保存改修の技術的手法等は別途関東地方建設局で検討。
2 保存改修工事

 保存改修対象建造物のうち、平成11年度においては旧洋館御休所について保存改修工事に着手する。

 (1)工事着工 平成11年9月
 (2)工事予算 約2億6千万円
 (3)竣工予定 平成12年度中
 (4)利用計画 竣工後は苑内利用者に展示・公開

(参 考)

 [1] 検討委員会

委員長 飯田 喜四郎 (財) 博物館明治村館長
委 員 大井 道夫 (財)国民公園保存協会副会長
  坂本  功 東京大学工学部建築学科教授
  藤岡 洋保 東京工業大学建築学科教授
  中村 光彦 宮内庁管理部工務課長
  堀  勇良 文化庁文化財保護部主任文化財調査官
  木村  勉 奈良国立文化財研究所建造物研究室長
  瀧口 信二 建設省関東地方建設局営繕部長
委託側委員 先名 征司 環境庁新宿御苑管理事務所長

 [2] スティック・スタイル
 1860年代から1890年代にかけてアメリカの住宅建築を中心に流行した様式のひとつで、切妻屋根、十字形の装飾のついた切妻、張り出した軒(その垂木端は露出で、鼻隠板で覆われていないことが多い)、下見板かシングル葺きで水平・垂直の板で分節化された壁、斜めか曲線の腕木で支えられたポーチ屋根などを特徴とする。


連絡先
環境庁自然保護局新宿御苑管理事務所
所      長   :先 名 征 司
 庭園第一科長   :杉 田 高 行
 TEL.3350-0151

環境庁自然保護局企画調整課
国民公園専門官 :宍 戸 博 (内線6425)