報道発表資料

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2019年01月22日
  • 自然環境

阿寒摩周国立公園「オンネトー湯の滝」の外来魚の根絶が確認されました

 環境省、足寄町(あしょろちょう)教育委員会等は、平成11年度以降、阿寒摩周(あかんましゅう)国立公園特別保護地区内の国指定天然記念物「オンネトー湯(ゆ)の滝(たき)」(足寄郡足寄町)に定着した外来魚(ナイルティラピア及びグッピー)の駆除対策に取り組んできました。
本日開催された「平成30年度オンネトー湯の滝における外来魚駆除対策に係る評価会」において、これら外来魚の「根絶」が有識者等により確認されたので、お知らせします。
 なお、野外に定着したナイルティラピア及びグッピーを駆除により根絶させた事例は全国で初めてです。

1.背景

(1)オンネトー湯の滝について

 雌()阿寒(あかん)(だけ)西麓の原生林内に位置し、温泉水による高さ20数mの2条の滝からなります。古くから阿寒摩周国立公園を代表する景勝地であり、特別保護地区に指定されています。

 また、温泉水にはマンガンイオンが含まれており、藻類と細菌の相互作用によるマンガン鉱物の生成現象が見られます。地上で観察できるものとしては世界最大級の規模であり、国指定天然記念物にも指定されています。

(2)外来魚の確認及び初期の駆除対策

 昭和60年代以降、滝下の湯だまり等で熱帯性外来魚(ナイルティラピアやグッピー)が放たれました。しかし、これらの外来魚はマンガン鉱物生成に必要な藻類等を食べて繁殖し、藻類の急激な減少を引き起こしました。

 このため、足寄町教育委員会、足寄町及び(特非)あしょろ観光協会は、平成11年度から漁網や電気ショッカー等を用いた駆除対策を開始。平成18年度からは環境省も駆除対策に加わりました。 

(3)「生態系維持回復事業計画」に基づく駆除対策

 環境省は、駆除対策強化のため、平成23年度に有識者や関係者による「オンネトー湯の滝における外来魚駆除対策に係る評価会」(以下、「評価会」)を設置しました。また、評価会での議論を踏まえ、「阿寒国立公園オンネトー湯の滝生態系維持回復事業計画」を策定(平成25年3月策定、平成29年3月再策定)し、駆除対策を継続しています。

 本事業では、外来魚の生活水温が概ね16℃以上であることを踏まえ、湯だまり等に流入する温泉水を迂回させつつ沢水(冷水)を引込む配水管を設置しました。その結果、水温低下に成功し、外来魚は大幅に減少。ピーク時(平成21年度)は15,000匹以上が確認されましたが、その後年々減少し、平成29年度以降は確認されなくなりました。

             ナイルティラピア及びグッピーの捕獲数の推移

  ※H14は対策未実施。H18から捕獲規模拡大、H25に冷水引き込み対策開始。H25-26は目視確認数。

2.根絶の確認について

 平成28年度の評価会において、外来魚根絶の判断基準が以下のとおり設定されました。

<オンネトー湯の滝における外来魚根絶の判断基準>

(第1段階)生息調査の結果として、3回連続で確認数・捕獲数が0匹であること

(第2段階)第1段階達成の翌年にも再確認・捕獲がないこと

 ナイルティラピア、グッピーともに平成29年度末までに第1段階を達成。また、平成30年10月までの調査結果において、再確認・捕獲はありませんでした。

 以上を踏まえ、本日の評価会において第2段階の達成、即ちオンネトー湯の滝における外来魚の根絶が確認されました。環境省が確認している中で、野外に定着したナイルティラピア及びグッピーを駆除事業により根絶させた事例は全国で初めてです。

3.今後の取組について

 評価会での議論を踏まえ、適切な時期に配水管を撤去します。また、関係機関との連携による藻類・細菌等の生育状況モニタリング及び再発防止策の実施等について検討します。

4.オンネトー湯の滝を訪れる皆さまへのお願い

 オンネトー湯の滝での魚の放流は、自然公園法及び文化財保護法により禁止されています。違反者は法に基づく罰則が適用される場合があります。

 かけがえのない自然環境を守り、後世に引き継いでいくために、皆様のご理解・ご協力をお願いいたします。

5.参考

・駆除対策・生息状況調査の結果について(平成30年度評価会資料)H30年度評価会資料.pdf

・ナイルティラピア、グッピーについて(国立環境研究所侵入生物データベース)

(ナイルティラピア)https://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/DB/detail/50360.html

(グッピー)https://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/DB/detail/50240.html

・阿寒国立公園オンネトー湯の滝生態系維持回復事業計画

 https://www.env.go.jp/park/about/protect/kanri_10_13.pdf

6.お問い合わせ先

<本件に係るお問い合わせ先>

環境省釧路自然環境事務所国立公園課

代表: 0154-32-7500

国立公園企画官 松尾 浩司

阿寒摩周国立公園阿寒湖管理官事務所

代表: 0154-67-2624

国立公園管理官 末永 珠佑

<国指定天然記念物に係るお問い合わせ先>

足寄町教育委員会生涯学習室生涯学習担当

代表:0156-25-3188


連絡先

環境省

  • 直通03-5521-8279
  • 課長中尾文子(内線 6440)
  • 課長補佐中島治美(内線 6650)
  • 生態系事業係長岩本千鶴(内線 6690)

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