報道発表資料

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2018年12月25日
  • 自然環境

二国間渡り鳥等保護条約・協定等会議の結果概要について

 日米渡り鳥等保護条約に基づく日米渡り鳥等保護条約会議及び日本、中国、オーストラリア及び韓国の各国が二国間で締結している渡り鳥等の保護に関する協定等に基づく渡り鳥等保護協定等会議(以下、条約・協定等会議)が各国の環境省等の担当課長等の出席により、平成30年11月27日(火)~11月29 日(木)にかけて沖縄県那覇市で開催されました。条約・協定等会議では、各国における渡り鳥等の保全対策や調査研究等に関する情報交換等を行い、引き続き協力を推進することを確認しました。

1.開催日程及び場所

(1)日程

 平成30年11月27日(火)~11月29日(木)

     11月27日(火)日豪中韓4カ国全体会合

        28日(水)第19回日豪渡り鳥等保護協定会議(午前)

             第17回日中渡り鳥等保護協定会議(午後)

        29日(木)第14回日韓渡り鳥等保護協力会議(午前)

             第9回日米渡り鳥等保護条約会議(午後)

(2)場所

 沖縄県市町村自治会館(沖縄県那覇市旭町116-37)

2.各会議の概要

(1)日豪中韓4カ国全体会合

 各国から、前回会議以降に講じた渡り鳥保全施策や渡り鳥に関する新たな調査研究結果が報告されました。また、各国のモニタリングの実施方法、渡り鳥の保全状況の情報共有や保全活動の紹介に加え、情報提供の依頼や、共同研究の提案などがなされました。

(2)第19回日豪渡り鳥等保護協定会議(注1)

〇前回会議以降の渡り鳥保全の取組

 日本からは、2017年9月に「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(以下「種の保存法」という。)」の政令改正によりヘラシギ、チュウヒ及びシマアオジを国内希少野生動植物種に指定し、今後外交ルートを通じて通報することが報告され、豪州からは、7種で保全状況が変化したことが報告されました。

〇共同作業計画について

 ホウロクシギについて、豪州が同種の保全を進めるために実施した活動の報告があり、今後の共同調査の可能性について検討することとなりました。

 ベニアジサシとエリグロアジサシに関して行われた調査結果を共有し、今後も情報交換を継続することが確認されました。

 減少傾向が確認されているシギ・チドリ類について、モニタリング結果の情報共有及び渡りルートなどの情報が特に不足している小型シギ・チドリ類の保全を進めるための意見交換を行いました。特に、日本における優占種で減少傾向にあるトウネンに焦点を当て、既存情報やデータベースの共有をはじめとした共同研究を実施することとなりました。

 豪州より、シギ・チドリ類のための代替的な休憩地として、人工的な休憩地設置の試みについて報告があり、今後、同様のプロジェクトについて情報共有を行うこととなりました。

〇その他

 日豪両国は、東アジア・オーストラリア地域フライウェイ・パートナーシップ(EAAFP)の設立を主導した国として、第10回パートナー会議(2018年12月、中国で開催)に向けて、引き続き連携していくことを確認しました。

 豪州では、個体数の減少が確認されているハリオアマツバメについて豪州内の絶滅危惧種指定の手続きを進めており、指定の可否について判断するための情報を必要としていることから、日本側にも情報提供の要望がありました。同種は北海道でも繁殖しており、日本国内の研究グループ等へ照会等を行うこととなりました。

 次回会議はおおむね2年後に韓国で開催することが合意されました。

(3)第17回日中渡り鳥等保護協定会議(注1)

〇協定付表の鳥類リスト(日中両国間で渡りをする鳥類のリスト)の見直し

 付表の改正作業に関連して、中国側より、中国鳥類目録が改訂されたことが報告されました。今後は、今回の中国側の目録変更及び次回の日本の鳥類目録の改訂時期を考慮した調整が必要で、担当者間で専門家の意見を聞きつつ付表の改正案を作成することとなりました。

〇前回会議以降の渡り鳥保全の取組

 日本からは、2017年9月の「種の保存法」の政令改正によりヘラシギ、チュウヒ及びシマアオジを国内希少野生動植物種に指定したことが報告されました。中国からは、国家重点野生動物保護目録の改訂を進めていること、鳥類への違法行為への対策として罰則や取り締まりを強化し、関係部門の横断的な連携を図っていること、鳥類の研究について組織的な強化をはかり、特に生息地としての湿地の保全を重点的に進めていること、冬期の渡り鳥への給餌の可否について検討中であることなどが報告されました。

〇共同研究及びプロジェクト

 日本より、二国間会議に先立ち開催された専門家による日中韓ズグロカモメワークショップ及び陸生鳥類モニタリングワークショップの概要について報告し、各国で行われてきた調査結果のとりまとめ等、今後の共同作業について確認しました。また、陸生鳥類モニタリングワークショップについては、2020年に韓国で開催される二国間渡り鳥等保護協定等会議の際に次回ワークショップを開催することが合意されました。

 減少傾向が確認されているシギ・チドリ類について、日本より、小型シギ・チドリ類の減少要因を把握し保全を促進するため、ヘラシギ、ハマシギ、トウネンを主な対象種として、個体数調査データを共有する民間ベースのネットワーク構築についての提案がなされました。中国で様々な民間団体や政府機関がデータを保有しているため、中国国内で検討の上、窓口を日本に連絡することとなりました。

〇その他

 日本より、ツル類の越冬地分散の取組を行っていることを報告し、中国からは中国で越冬するツル類について、前回会議以降の越冬状況とここ数年の増減傾向などが報告され、中国鶴類連合保護委員会(NGO)の組織再編について情報提供がありました。また、鳥インフルエンザに係る情報交換について、連絡窓口を設定し、迅速な情報交換を実施することが決定されました。

 次回会議はおおむね2年後に韓国で開催することが合意されました。

(4)第14回日韓渡り鳥等保護協力会議(注2)

〇前回会議以降の渡り鳥保全の取組

 日本から、2017年9月に「種の保存法」の政令改正によりヘラシギ、チュウヒ及びシマアオジを国内希少野生動植物種に指定したこと、風力発電施設へのバードストライク防止策として鳥類のセンシティビティマップを作成しインターネット上で公開していることが報告され、韓国から、オバシギ、及びコウライバトを絶滅危惧種に指定したことが報告されました。

〇共同研究及びプロジェクト

 日本より、二国間会議に先立ち開催された専門家による日中韓ズグロカモメワークショップ及び陸生鳥類モニタリングワークショップの概要について報告し、各国で行われてきた調査結果のとりまとめ等、今後の共同作業について確認しました。陸生鳥類モニタリングワークショップについては、2020年に韓国で開催される二国間渡り鳥等保護協定等会議の際に、次回ワークショップを開催することが合意されました。

 減少傾向が確認されているシギ・チドリ類について、日本より、小型シギ・チドリ類の減少要因を把握し保全を促進するため、ヘラシギ、ハマシギ、トウネンを主な対象種として、個体数調査データを共有する民間ベースのネットワーク構築についての提案がなされ、韓国からは国内のモニタリング調査の拡充とデータの充実を図り、また、日本提案の3種に加えオバシギとホウロクシギのデータを共有することが提案され、今後も協力を進めていくこととなりました。

〇その他

 クロツラヘラサギ、コウノトリ、トモエガモ、カンムリウミスズメ、ツル類の保全について情報共有を図っていくことが確認され、また、鳥インフルエンザについては迅速な情報共有を実施するための連絡窓口が交換されました。

 次回会議はおおむね2年後に韓国で開催することが合意されました。

(5)第9回日米渡り鳥等保護条約会議(注3)

〇前回会議以降の渡り鳥保全の取組

 日本からは、2017年9月に「種の保存法」の政令改正によりヘラシギ、チュウヒ及びシマアオジを国内希少野生動植物種に指定し、今後外交ルートを通じて通報することが報告されました。また、日本側で2012年に行われた鳥類目録の改訂に伴って両国で進めてきた付表掲載種の更新について、引き続き作業を進めることが確認されました。

〇共通の種の保全状況等についての情報共有

 米国から、北西ハワイ諸島でのアホウドリの繁殖状況についての情報提供があり、また、アホウドリをはじめとする海鳥の混獲対策や、ミズナギドリ等の海鳥の繁殖地創出の取組、コアホウドリ等の繁殖地における外来種の管理等について報告されました。

 黄海沿岸を利用するハマシギについては、既存の標識記録の再確認データを整理し、繁殖地であるアラスカからシベリア北東部にかけての地域との繋がりを明らかにしたことが報告されました。

 アラスカで繁殖するアビの渡り調査については、衛星追跡で日本の北海道や関東沿岸への移動が確認されているとの報告と情報提供の依頼がありました。また、東アジアのコクガン個体群について進められている日米での共同調査の進捗について確認しました。

 日本から、20世紀初頭に絶滅に近い状態となっていたシジュウカラガンについて、1992年に日米ロ共同で開始された千島個体群の回復事業により、日本での越冬個体が5,000羽を超えていることが報告されました。今後は千島列島における繁殖地の特定が課題であり、アリューシャン列島個体群を含め個体群全体の管理を行う観点から、日米ロの三カ国で情報共有したいとの提案を日本より行い、窓口を交換しました。

〇その他

 次回の会議については、日本より、2019年に予定されている第12回日ロ渡り鳥等保護条約会議に併せての開催が提案され、米国側で検討を行うこととなりました。

(注1)

日本とオーストラリア、日本と中国の間には下記の協定が締結されています。

〇日豪渡り鳥等保護協定(正式名称は「渡り鳥及び絶滅のおそれのある鳥類並びにその環境の保護に関する日本国政府とオーストラリア政府との間の協定」:昭和56年4月30日発効)

〇日中渡り鳥等保護協定(正式名称は「渡り鳥及びその生息環境の保護に関する日本国政府と中華人民共和国政府との間の協定」:昭和56年6月8日発効)

(注2)

正式名称は「環境の保護の分野における協力に関する日本国政府と大韓民国政府との間の協定」(平成5年6月29日発効)。環境保護の分野で両国の協力を強化することを目的として協定が締結されている。渡り鳥の保全に関しては、渡り鳥保護に関する情報交換や、渡り鳥の生息地・移動状況の共同調査等の規定が盛り込まれている。

(注3)

日本とアメリカの間には下記の条約が締結されています。

日米渡り鳥等保護条約(正式名称は「渡り鳥及び絶滅のおそれのある鳥類並びにその環境の保護に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の条約」:昭和47年9月19日発効)

連絡先
環境省自然環境局野生生物課
代表 03-3581-3351
直通 03-5521-8284
課長    堀上 勝  (内線6460)
課長補佐  荒牧 まりさ(内線6465)
専門官   市川 智子 (内線6468)