報道発表資料

この記事を印刷
2018年08月03日
  • 地球環境

「気候変動に関する日印政策研究ワークショップ」の結果について

7月26日(木)~27日(金)の2日間、インド・ニューデリーにて「気候変動に関する日印政策研究ワークショップ」が開催されました。
日本側からは、小野洋環境省大臣官房審議官他、インド側からは環境森林気候変動省(MOEFCC)Shri Arun Kumar Mehta副次官、エネルギー資源研究所(TERI)Ajay Mathur所長他が出席しました。タラノア対話(※)の3つの問い(「今どこにいるのか」「どこへ行きたいか」「どうやって行くのか」)に対し、両国の気候変動政策の現況や将来展望、気候変動政策と大気汚染改善、雇用創出等との関係性を軸に、シナジーの最大化、あるいはトレードオフの最小化についての事例紹介や枠組みのあり方について議論を行うとともに、国内目標・施策の取組意欲引き上げのための国際枠組みのあり方等について活発な意見交換を行いました。今次ワークショップを通じて共有したストーリーや知見は、タラノア対話へ提出され、両国の更なる気候変動政策の推進に寄与することが期待されています。

(※)タラノア対話とは

タラノア対話は、パリ協定に示される2℃目標達成のため、「今どこにいるのか」「どこへ行きたいか」「どうやって行くのか」について、世界のあらゆる主体の取組事例の共有を通じ、温室効果ガス排出削減の取組状況を確認するとともに、目標達成に向けた取組意欲の向上を目指す取組です。

(タラノアJAPANウェブサイト:http://copjapan.env.go.jp/talanoa/

1.会合の概要

本ワークショップは、気候変動対策に関する研究・実務面からの知見について、両国の研究者が意見交換を行うため、環境省の支援により地球環境戦略研究機関(IGES)とインド・エネルギー資源研究所(TERI)が協力して開催したものです。

14回目となる今次ワークショップには、日印両国をはじめ、欧米の研究機関等、計50名程度の研究者や関係者等が参加し、日印研究機関からタラノア対話へのインプットの形成を目的として、両国の気候変動政策(二国間クレジットメカニズム(JCM)や再生可能エネルギー導入策を含む)の現況と展望、気候変動政策実施と環境や社会経済的側面へのシナジー効果とトレードオフ、取組意欲引き上げのための国際枠組(透明性枠組みやグローバル・ストックテイク(GST)、タラノア対話とのリンケージ)等について、活発な意見交換を行いました。

(1)日程・場所

7月26(木)~27日(金)、於:インド・デリー

(2)主催

環境省

(3)共催

地球環境戦略研究機関(IGES)、インド・エネルギー資源研究所(TERI)

(4)主な出席者

(日本)環境省、外務省、経済産業省、自然エネルギー財団、環境エネルギー政策研究所(ISEP)、JFEエンジニアリング株式会社、地球環境戦略研究機関(IGES)

(インド)エネルギー資源研究所(TERI)、環境森林気候変動省(MOEFCC)、財務省(MOF)等

(その他)世界資源研究所(WRI)、短寿命気候汚染物質削減のための気候と大気浄化の国際パートナーシップ(CCAC: Climate and Clean Air Coalition to Reduce Short-Lived Climate Pollutants)、アジア開発銀行(ADB)等

(5)議題ごとの結果

1)インド及び日本の気候変動政策の現況

タラノア対話に示される「今どこにいるのか」「どこへ行きたいのか」の問いに対し、両国における気候変動政策の紹介や再生可能エネルギーへの転換の動向について、政策担当者及び研究者より発表が行われました。

日本では、様々な省エネ政策の推進や再生可能エネルギーの普及に伴い、温室効果ガス(GHG)排出量が減少傾向にあり、2020年の削減目標に向けて着実に成果をあげていることが共有されました。また、JCMを例に挙げ、低炭素技術の普及やコ・イノベーションを通じ、パートナー国の排出量削減や持続可能な発展に貢献していることが強調されました。

インドでは、再生可能エネルギーの普及が急速に進んでいるものの、エネルギー貯蔵システムやインセンティブ等の点で課題を抱えていることが共有されました。また、削減目標(NDC)達成のためには低炭素発電やエネルギー効率の改善が重要であり、特にインドの状況に合致した低炭素技術の開発(R&D)や普及が急務であるものの、国内でのR&Dレベルは低く、技術移転や資金的支援を含む国際協力の重要性が指摘されました。

2)気候変動政策実施によるシナジーの最大化とトレードオフの最小化:経験と戦略

タラノア対話のもう一つの問い「どうやって行くのか」に対し、両国のNGO、研究機関、民間企業及び国際機関(CCAC)等から、排出削減の取組とそのコベネフィット増進に向けた取組み事例や将来シナリオについての発表がありました。

インドでは、大気汚染が大きな懸念となっており、化石燃料から再生可能エネルギーへの転換が短寿命気候汚染物質の濃度を減少させ、大気質を改善するだけでなく、気温上昇を抑制する効果があるとの紹介がありました。

日本でもエネルギー転換が進みつつあり、コミュニティレベルでの再生可能エネルギーによる発電が増加していることや、熱利用を含めたバイオエネルギーにも大きな可能性があることが紹介されました。また、JCMを活用したインドネシアやベトナムでの廃棄物エネルギー転換のプロジェクトが紹介され、現地でのキャパシティ・ビルディングや規制策定といった分野での貢献についても紹介されました。

議論全体を通じて、こうした様々な取組みが雇用創出やGDPの増加等の社会経済の他、健康といった多様な便益に繋がることが共有されました。

3)多様な便益創出のための条件や枠組み構築

両国の政府関係者、民間企業、研究機関及び国際機関から、マルチ・ベネフィットを促進するための条件や枠組みについて、必要な要素の特定や必要とされる行動、及び改善点について見解が述べられました。

日本からは、政府が気候変動問題に取り組むため、国内政策策定だけではなくRE100への申請など率先して行動を起こしていることや、炭素回収貯蔵(CCS)・水素技術を初めとした分野でのイノベーションを推進すると共に、途上国とコ・イノベーションを通じた技術協力を実施していることを強調しました。また、タラノア・ジャパンプラットフォームなどを通じ、気候行動において様々なステークホルダーとの協働を促進していることや、自治体が野心的な目標設定の下で革新的な取組みを実施していることなどが紹介されました。

インドからは、エネルギー効率改善のための技術革新の事例紹介だけではなく、石炭より価格が安くなった再生エネルギー利用に伴うグリッドバランスの改善の必要性や今後急速に増加することが予測されるエネルギー需要を満たすため、他国から学ぶこと、技術、資金、貿易、政治的コミットメント等の必要性について指摘がありました。また、透明性を高め、更に取組意欲を高めるため、企業・自治体・地域からのデータ収集の事例も紹介されました。

4)取組意欲引き上げのための国際枠組

インドからは、パリ協定における各国NDCの取組意欲引き上げのための国際枠組の概要と喫緊の取り組むべき課題や、タラノア対話を成功に導くために取り組むべき分野等について発表がありました。

COP24で採択される予定のパリ・ルールブック策定にあたり、特に透明性枠組みやGSTのあり方や資金関連条項の重要性、タラノア対話のプロセスや実施内容がどのようにパリ協定下のルール・制度作りに貢献できるかについて、日本、インド、アメリカの研究者、政策担当者、交渉官、国際機関といった異なる視点から議論が行われました。

透明性枠組においては、進捗管理のための指標が有効であることも指摘されるとともに、アカウンティング・プロセスの簡略化や、報告義務である将来予測に関する能力の違いを考慮に入れることの重要性が言及されました。GSTについては、包括性・締約国主導・透明性の原則を基礎としつつ、非政府主体の参加といった視点の重要性についても触れられました。また、タラノア対話での、成果物や情報収集方法、衡平性の扱いなどは、GSTの枠組み策定に役立ちうるとの指摘もありました。

連絡先
環境省地球環境局国際地球温暖化対策担当参事官室
直通 03-5521-8330
代表 03-3581-3351
参事官 小川眞佐子(内線6772)
主査  寺岡裕介(内線6774)