報道発表資料

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2018年03月27日
  • 自然環境

生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム(IPBES)第6回総会の結果について~アジア・オセアニア地域の評価報告書、土地劣化と再生に関する評価報告書が公表されました~

 生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム(IPBES)第6回総会が、平成30年3月17日(土)から24日(土)までの間、メデジン(コロンビア)にて開催されました。
 アジア・オセアニア地域等の世界4地域別の評価報告書及び「土地劣化と再生」というテーマに特化した評価報告書が受理され、政策決定者向け要約が承認・公表されました。
 なお、環境省主催の結果報告会を平成30年4月12日(木)に開催します。

1.会議の概要

【名称】

[日本語]生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム第6回総会

[英語]Plenary of the Intergovernmental Science-Policy Platform on Biodiversity and Ecosystem Services, Sixth Session

【期間】 平成30年3月17日(土)~24日(土)

【場所】 メデジン(コロンビア)

【参加者】IPBES参加各国の政府、国連環境計画などの関連する国際機関など

2.主な成果

(1)生物多様性及び生態系サービスに関する地域・準地域評価

 世界4地域別(アジア・オセアニア、アフリカ、南北アメリカ、ヨーロッパ・中央アジア)に生物多様性及び生態系サービスを評価した報告書が受理され、政策決定者向け要約(SPM)が承認・公表されました。我が国が属するアジア・オセアニア地域の報告書のSPMには、22のキーメッセージが記述されており、主要な内容は以下のとおりです。

・生物多様性と生態系サービスは、この地域の7.6%という高い年平均経済成長率(1990-2010)に貢献してきたが、この経済成長は生物多様性に様々な悪影響を与えてきた。貧困が未だ根強く残っている地域では、人々の生計は生態系がもたらす物(植物・動物・菌類等)に依存している。

・生物多様性は、異常気象、海面上昇、侵略的外来種、農業集約化、廃棄物や汚染の増加等によりかつてない脅威にさらされ、全体として劣化している。一方で、過去25年間に、海域の保護地域は約14%拡大し、陸域の保護地域は約0.3%拡大した。森林面積は2.5%拡大し、北東アジアで22.9%、南アジアで5.8%と高い拡大率を示している。

・しかし、これらの努力は生物多様性の損失を止めるためにはまだ十分でないという懸念がある。持続不可能な養殖や過剰漁獲等が、沿岸海洋生態系を脅かしており、こうした漁業方法が続けば、2048年までには利用できる漁業資源がなくなる可能性がある。サンゴ礁は深刻な危機に瀕し、特に南アジアや東南アジアでは一部は既に失われている。控えめの気候変動シナリオでも、2050年までにサンゴの90%は激しく劣化すると予想されている。

・経済成長やインフラ開発の持続性の確保は、自然との調和を損なわずに実現されなければならない。

・生態系を活用した適応策、防災・減災及び持続可能な森林管理等の生態系に基づくアプローチが、パリ協定や持続可能な開発目標(SDGs)などの複数の目標達成に寄与し得る。

(2)土地劣化と再生に関するテーマ別評価

 

 生物多様性及び生態系サービスに関して、土地劣化や再生という変化過程に注目して評価した報告書が承諾され、政策決定者向け要約(SPM)が承認、公表されました。SPMには、16のキーメッセージが記述されており、主な内容は以下のとおりです。

・人間活動による陸地表面の劣化は、少なくとも32億人の人々の福利に悪影響を及ぼし、世界の年間総生産の10%以上の損失が発生している。

・土地劣化を防止・削減・反転することは、食料や水の安全保障、気候変動への適応・緩和に貢献し、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に不可欠である。

・先進国の大量消費のライフスタイルは、発展途上国や新興国での消費の増大と相まって、全世界で土地劣化を進める大きな要因となっている。

・消費者と生産者の距離が離れているため、消費者の選択が土地劣化に与える影響がみえなくなっている。また、自然資源を過剰に利用して利益を得ている多くの人々が土地劣化の影響を受けないため、行動を起こす動機に乏しい。

・急激な農地拡大と持続不可能な農地管理が土地劣化の最大の直接要因であるが、環境保全型農法等により劣化を防止し、反転させることが可能である。

・以下のような取組が、土地劣化の防止・削減・反転に必要である。

 1. 土地に由来する商品の持続的な生産・消費行動を促す、セクター間で調整された行動計画

 2. 土地劣化を促進する誤ったインセンティブ(持続不可能な土地利用を益する補助金等)の排除と、持続可能な土地利用行動に報いる建設的なインセンティブ(持続可能な利用を促す規制等)の考案

 3. 農林業、エネルギー、水、社会資本等の行動計画を統合する、生態系の広がり(ランドスケープ)でのアプローチ

(3)保留中の評価の実行方針

 「自然とその便益に関する多様な価値観の概念化に関する方法論的評価」及び「野生種の持続可能な利用に関するテーマ別評価」を2018年に、「侵略的外来種に関するテーマ別評価」を2019年に開始することが決定されました。

(4)2018-2019年予算案

 2018年予算は、第5回総会で決定された5,000,000米ドルが見直され、8,554,853米ドルと決定されました。2019年予算は、6,074,910米ドルと決定されました。

(5)作業計画の策定方針

 2030年までの戦略枠組とそれに対応した柔軟性のある作業計画の要素を、第7回総会で採択することが決定されました。

(6)学際的専門家パネルメンバーの選挙

 IPBESの活動を科学的・技術的側面から支える学際的専門家パネルのメンバーが、国連の5地域区分からそれぞれ5名ずつ、計25名選出されました。我が国が推薦した橋本禅(しずか)氏(東京大学大学院准教授)が、アジア・オセアニア地域のメンバーとして選出されました。

(7)次回の総会

 第7回総会は、平成31年4月29日(月)から5月4日(土)に、パリ(フランス)にて開催されることが決定されました。

【本会合の公式ウェブサイト】

 https://www.ipbes.net/event/ipbes-6-plenary

3.第6回総会結果報告会について

(1)概要

【日時】平成30年4月12日(木)14:00~15:00(受付開始13:30)

【場所】経済産業省別館108号会議室

【主催】環境省

【内容】

1) IPBES第6回総会の結果概要

2) IPBES第6回総会結果に関する専門家所見

3) 地域・準地域評価報告書に関する専門家所見

4) 土地劣化と再生評価報告書に関する専門家所見

【報告者(予定)】 (敬称略、発表順)

・中澤圭一  環境省自然環境局 生物多様性戦略推進室長

・白山義久  国立研究開発法人海洋研究開発機構 理事

・香坂玲   東北大学大学院 環境科学研究科 教授

・岡部貴美子 国立研究開発法人森林研究・整備機構 森林総合研究所生物多様性拠点長

(2)参加申込要領

 参加を希望される方は次の要領に従ってお申込みください(参加費無料)。取材も可能です。締切は、平成30年4月10日(火)12時(必着)です。

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■申込先

環境省自然環境局生物多様性戦略推進室

担当:中嶋、鮫島

電子メール:NBSAP@env.go.jp

 次の各内容を明記した「第6回IPBES総会結果報告会 参加申込」という件名の電子メールを送付してください。

[1]氏名・ふりがな

[2]勤務先又は所属団体

[3]電話番号

[4]電子メールアドレス(参加票の送付先)

[5]テレビカメラによる取材の有無(報道関係者のみ)

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※備考

【共通】

・お申込みいただいた方には参加票を送付しますので、当日必ずお持ちくださるようお願いいたします。

【一般の方】

・席に限りがございますので、参加希望者が多数の場合、先着順とさせていただきます。

【報道関係者の方】

・一般の方とは別に席を用意しますが、満席となった場合はお立ちいただく場合もありますので、あらかじめご了承ください。

・受付にて記者証をご提示ください。

・カメラ撮りに際しては、自社腕章を携帯してください。

(参考)生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム

 (Intergovernmental science-policy Platform on Biodiversity and Ecosystem Services:IPBES)

 IPBESは、生物多様性と生態系サービスに関する動向を科学的に評価し、科学と政策のつながりを強化する政府間のプラットフォームとして、2012年4月に設立された政府間組織です。科学的評価、能力開発、知見生成、政策立案支援の4つの機能を柱とし、気候変動分野で同様の活動を進めるIPCCの例から、生物多様性版のIPCCと呼ばれることもあります。

 設立以降、IPBES作業計画2014-2018に基づき、18の成果物(評価報告書等)の作成を目指して作業が進められてきており、評価報告書が以下のとおり作成されています。

2016年:生物多様性及び生態系サービスのシナリオとモデルの方法論に関する評価報告  書

2017年:花粉媒介者、花粉媒介及び食料生産に関するテーマ別評価報告書

2018年:生物多様性及び生態系サービスに関する地域・準地域別評価報告書(予定)

:土地劣化と再生に関するテーマ別評価報告書(予定)

2019年:生物多様性及び生態系サービスに関する地球規模評価報告書(予定)

 IPBESの成果物は世界中の科学者・専門家らによって執筆され、加盟国政府により構成される総会による承認後、公表されます。2018年3月27日現在、IPBESには128カ国が参加しており、事務局はドイツのボンに置かれています。

IPBES webサイト http://www.ipbes.net/

環境省webサイト http://www.biodic.go.jp/biodiversity/activity/policy/ipbes/index.html

連絡先
環境省自然環境局自然環境計画課生物多様性戦略推進室
代表   03-3581-3351
直通   03-5521-8275
室長   中澤圭一 (内 6480)
室長補佐 中嶋健次 (内 6484)
係長   鮫島茉利奈(内 6485)