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2018年01月23日
  • 水・土壌

平成28年度海洋ごみ調査の結果について

 環境省では、平成28年度に、10カ所の海岸において漂着ごみ調査等を行い、各地点における漂着ごみの量や種類などを調べました。また、陸奥湾、富山湾、若狭湾及び我が国周辺の沖合海域における漂流・海底ごみ調査を行いました。さらに、近年、海洋生態系への影響が懸念されているマイクロプラスチックについて調査を行い、その結果をまとめました。

1.概要

 環境省では、平成22年度から、海岸などにある漂着ごみ、海面に浮遊する漂流ごみ及び海底に堆積するごみ(海底ごみ)に関して、量や種類などの調査等を行っています。

 漂着ごみに関しては、平成27年度に引き続き10地点を対象に同様の調査を行いました。

 また、漂流ごみ及び海底ごみに関しては、平成28年度は、陸奥湾、富山湾及び若狭湾を対象に、プラスチック類等の人工物を中心に量や種類などの調査を行うとともに、本州等の沖合海域等において、存在量等の調査を行いました。

 さらに、近年、海洋生態系への影響が懸念されているマイクロプラスチック(マイクロビーズを含む)※1、2に関する調査等を行いました。

※1 マイクロプラスチック:微細なプラスチックごみ(5㎜以下)のこと。含有/吸着する化学物質が食物連鎖に取り込まれ、生態系に及ぼす影響が懸念されています。

※2 マイクロビーズ:マイクロプラスチックのうち、マイクロサイズで製造されたプラスチックで、ビーズ状のもの。

2.調査結果

(1)漂着ごみの実態調査

① 各海岸における漂着ごみのモニタリング調査

 平成26年度までの定点調査で対象としてきた1地点(対馬)及び平成27年度調査した4地点(奄美、種子島、国東及び串本)を含む10地点において、漂着ごみの量や種類などを調査しました。

 漂着ごみの組成比を容積ベースで見た場合、根室、串本、国東及び種子島などで自然物が高い割合を占めていました。人工物の構成比を容積ベースで見た場合、漁具、プラスチック類及び発泡スチロールなどの品目が上位を占めていました(別添1-1)。

 また、各調査地点で回収されたペットボトルの製造国別比を言語表記等から推定すると、例えば、奄美では外国製が8割以上(中国製が約7割)を占めたほか、対馬、種子島、串本及び五島では外国製が約4~6割を占めていました。一方、根室、函館及び国東では外国製の占める割合が2割以下で、日本製が約5~7割を占めていました(別添1-2)。

 

② 全国的な漂着ごみの回収量等のとりまとめ

 地方公共団体、民間団体等において平成27年度に回収された漂着ごみ(自然物を含む)の量を取りまとめたところ、約3.3万トン(平成26年度は約4.9万トン)となりました。

  

(2)沿岸海域における漂流・海底ごみの実態調査

① 漂流ごみの目視観測調査

 陸奥湾、富山湾及び若狭湾の計9海域において、目視観測による漂流ごみの量や種類などを調査しました。

 発見された漂流ごみ(計205個)のうち人工物は約65%(132個)を占め、人工物のうち種類別の個数では、プラスチック類(その他プラスチック製品)、レジ袋等の包装材、トレイ等の食品包装、発泡スチロールが上位を占めていました。(別添1-3)。

② 海底ごみの回収調査

 陸奥湾、富山湾及び若狭湾において、合計12の漁業協同組合の協力を得て、海底ごみを回収し、このうち人工物について、その量や種類などを調査しました。

 その結果、ほとんどの調査地点において、個数・重量・容積いずれも、人工物の海底ごみに占めるプラスチック類の割合が高く、次いで金属類であることが分かりました(別添1-4)。

(3)沖合海域における漂流・海底ごみの実態調査

① 漂流ごみの目視観測調査

 本州・四国・九州周辺の沖合海域において、東京海洋大学練習船(海鷹丸、神鷹丸及び青鷹丸)によって、目視観測による漂流ごみの量や種類などを調査しました。

 その結果、人工物については、日本海(北部)などで漂流ごみ密度が高い傾向となりました。種類別では、プラスチック製品や発泡スチロールが多く占めました。また、自然物(流れ藻、流木等)については、東シナ海で漂流ごみ密度が低く、漂流ごみ密度が高い地点が各海域に点在していました(別添1-5)。

② 海底ごみの回収調査

 東シナ海(長崎南西沖)及び常磐沖において、東京海洋大学練習船(海鷹丸及び神鷹丸)によってトロール網を用いた調査を行い、海底ごみを回収し、その量や種類などを調査しました。

 人工物、自然物ともに、海底ごみ密度(重量ベース)の最大値で東シナ海のほうが常磐沖より大きい結果となりました。また、自然物と人工物の比率をみると、重量ベースでは常磐沖よりも東シナ海のほうが自然物の占める割合が高く(東シナ海41%、常磐沖23%)、個数ベースではその関係が逆転しており(東シナ海21%、常磐沖45%)、東シナ海の自然物のほうが常磐沖のそれよりも大きいものが多かったものと考えられます(別添1-6)。

(4)マイクロプラスチックに関する調査

① 沖合海域におけるマイクロプラスチックの調査

 沖合海域における漂流ごみの目視観測調査に併せ、本州・四国・九州周辺の沖合海域において、ニューストンネット(表層を浮遊するプランクトン等の採取に用いるネット)を用いて、合計69地点でマイクロプラスチックを採取するとともに、サイズ別に分類して、その数を計測しました。

 その結果、平成26年度及び平成27年度の調査と合わせてみると、日本周辺の沖合海域で全体的にマイクロプラスチックが分布しており、東北の日本海側及び太平洋側沖周辺、四国及び九州の太平洋側沖周辺などで高い密度を示す傾向が見られました(別添1-7)。

② 沿岸海域におけるマイクロプラスチックの調査

 沿岸海域(陸奥湾、富山湾及び若狭湾内)における漂流ごみの目視観測調査に併せ、これら海域の計9地点において、ニューストンネットを用いてマイクロプラスチックを採取するとともに、サイズ別に分類して、マイクロビーズも含めて個数を計測しました。

 各調査地点でマイクロプラスチックの海中密度を算出したところ、0.03~1.9個/m3となり、平成27年度調査(東京湾、駿河湾及び伊勢湾)との比較では、東京湾の2地点(5.1、9.7個/m3)を除き、平成27年度の結果と同程度(0.06~1.6個/m3)でした。

 なお、マイクロビーズはいずれの湾でも検出されませんでした(別添1-8)。

③マイクロプラスチックに含まれる有害物質(POPs)の調査

 漂着ごみ・漂流ごみ調査の一環として、海岸12地点、海上8地点で採取されたマイクロプラスチックについて、残留性有機汚染物質(POPs: Persistent Organic Pollutants)※3に関する分析を行いました。

 POPsのうち、漂流中に表面に吸着すると考えられるポリ塩化ビフェニル(PCB)については、マイクロプラスチック1gあたり数ngから百数十ngであり、平成27年度調査との比較では、都市部に隣接する内湾(同数百ng)を除き、平成27年度の結果と同程度でした。なお、これらの結果は、他の先進国で観測されるものと概ね同程度で、これまでの世界的傾向と一致しました。過去に製造された製品中に添加されていたと考えられるポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)については、沖合域で採取した漂流マイクロプラスチックに関して、全ての地点で検出されました。

※3 残留性有機汚染物質(POPs):難分解性及び生物蓄積性を有し、国境を越えて長距離を移動して環境汚染を引き起こすおそれがある物質として、「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」の下で、我が国では製造・使用が原則禁止されています。

添付資料

連絡先
環境省水・大気環境局水環境課海洋環境室
代  表:03-3581-3351
直  通:03-5521-9025
室  長:中里 靖  (内線6630)
室長補佐:松﨑 裕司 (内線6632)
係  長:佐藤 佳奈子(内線6637)

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