報道発表資料

この記事を印刷
2017年12月15日
  • 地球環境

「気候変動に関する日印政策研究ワークショップ」の結果について

 12月6日(水)~12月7日(木)の間、インド・ニューデリーにて「気候変動に関する日印政策研究ワークショップ」が開催されました。
 日本側からは、環境省から小野洋大臣官房審議官他、インド側からは、エネルギー資源研究所(TERI)からAjay MATHUR所長、環境森林気候変動省(MOEFCC)からRavi S. PRASAD次官補他、外務省(MEA)からProf. Ashok CHAWLA 顧問他が出席し、日本及びインドの気候変動政策、国別削減目標(NDC)と持続可能な開発目標(SDGs)のつながり、二国間協力、野心度引き上げのための国際枠組み等について活発な議論が行われました。特に、インドでは低炭素技術の普及に注力しており、協力ニーズが非常に大きいことが示されるとともに、両国から、環境分野における日本とインドの協力関係強化に対する期待が述べられました。

○概要:

 本ワークショップは、気候変動対策に関する研究・実務面からの知見について、両国の研究者が意見交換を行うため、環境省の支援により地球環境戦略研究機関(IGES)とインドエネルギー資源研究所(TERI)が協力して開催したものです。

 13回目となる今次ワークショップには、日印両国をはじめ、欧米の研究機関等から約50名の研究者や関係者等が参加し、日本及びインドの気候変動政策(特にエネルギー政策分野)の現況と展望、国別削減目標(NDC)と持続可能な開発目標(SDGs)のシナジー効果やトレードオフ、日印二国間協力の歴史・現状と展望、野心度引き上げのための国際枠組み

(透明性枠組みやグローバルストックテイク(GST)、タラノア対話のあり方)等について、活発な意見交換を行いました。

○開催地:

インド・ニューデリー

○開催日:

平成29年12月6日(水)~12月7日(木)

○主な出席者(所属機関):

(日本)環境省、名古屋大学、三井物産戦略研究所、地球環境戦略研究機関(IGES)

(インド)エネルギー資源研究所(TERI)、環境森林気候変動省(MOEFCC)、外務省(MEA)等

(その他)世界資源研究所(WRI)、戦略国際問題研究所(CSIS)、世界銀行等

○議題ごとの結果:

(1)インド及び日本の気候変動政策の現況

 日本とインドにおける最新の気候変動政策の紹介や再生可能エネルギーへの転換の最新動向について、両国の政策担当官や研究者より発表が行われた。

 日本では、温室効果ガス(GHG)排出量が2013年以降減少傾向にあり、GHG排出量とGDPとのデカップリングも進んでおり、その背景には、省エネ政策の推進や再生可能エネルギーの普及等があることが共有された。また、2012年から導入した固定価格買取制度(FIT)制度によって日本の再生可能エネルギー設備の導入量は拡大しつつあるが、接続系統関連のインフラや制度設計上の課題のほか、太陽光発電設備の導入コストが相対的に高いこと等の課題も指摘された。

 インドでは、エネルギーや産業分野において、野心的な定量・定性目標が設定されており、過去数年間において、情報・データの作成・収集手法の改善等により、透明性が大きく改善してきていることが紹介された。また、インドは低炭素技術の普及と協力に注力しており、そのための国内外での資金支援を強化しつつあることも紹介された。その他、再生可能エネルギーの大規模導入に関しては、季節変動や蓄電、系統安定化等の技術的課題が残っており、システム全体での競争力やコストを考慮する必要があるとの指摘もあった。

(2)NDCとSDGsのつながり

 インドと米国の研究者よりNDCとSDGsのつながりについてそれぞれの研究紹介が行われ、その後、全体で議論を行った。その結果、両者の間にはシナジー効果のみならず、トレードオフが存在することが共有された。

 NDCとSDGsのつながりでは、SDGsの目標のうち、特に目標7(エネルギーアクセス、省エネ、再生可能エネルギー関連目標)との間には、主にCO2削減という観点でシナジー効果があることが示され、参加者もおおむね同意見であった。一方で、その効果の定量化が課題として挙げられた。また、再生可能エネルギー産業への移行に伴っては雇用機会の創出だけでなく既存産業における雇用機会の減少といったトレードオフの可能性が存在することについても指摘があり、政策の立案及び実施に際し考慮していくことの重要性も言及された。

(3)二国間協力

 日本・インド両国の政府関係者より、気候変動分野における二国間協力の歴史や現状、そして今後の協力のあり方について見解が述べられ、参加者からも協力関係の推進に対する意見や質問が挙げられた。

 まず、インドから、日本とインドの間の文化や経済分野をはじめとした様々な協力関係について言及された後、近年、乗用車や大量輸送、クリーンコール技術、サプライチェーン分野などでの協力需要が高まっていることが示された。これに対し、日本からは、廃棄物処理、大気汚染、グリーン建築、中小企業を対象とした技術開発と技術移転(JITMAP:日本-インド 技術マッチメイキングプラットフォーム等を含む)等の分野における協力可能性は、大変大きいとの見解が示された。また、インドからは、インドでのビジネスにおいて、文化や言葉の違いが障害になっている場合があるとの指摘や、日本政府に対し、インド向けの技術移転拡大への要望も聞かれた。

野心度引き上げのための国際枠組み

 まず日本の研究者より、透明性枠組み、GSTとNDCのリンケージに基づく野心度引き上げのための国際枠組みとCOP23での成果であるタラノア対話についての概要説明があった後、各国内での透明性改善と国際プロセスへの貢献、野心度引き上げのために必要な情報、GSTに基づく国内行動と野心度引き上げに焦点をあて、民間、研究者、政策策定者、交渉官といった異なる視点から議論が行われた。

 国内行動においてはグローバル化を意識した視点が重要であること、現時点では特に途上国は透明性報告・実施のためのキャパシティに限界があること等が指摘された。また、データや情報が政策策定に非常に重要な役割を果たすことについては議論の余地がなかった一方で、多くの情報源やデータが世界的規模や民間レベルで存在することが再認識される中、どういった情報をどのような形で誰が解釈し、どのような形で政策に組み込んでいくのかについては、立場によってその見方や使い方が異なってくることが指摘された。

 さらに、GSTの仕組みは現時点で確立されていないものの、ストックテイクプロセスの一部として2018年のタラノア対話が良い契機となるとの意見が出された。また、既存の適応・資金・技術面における障害が今後もチャレンジとなることや多国間での協働・ストックテイク後の行動について考えていくことの重要性等も指摘された。

以上

連絡先
環境省地球環境局国際地球温暖化対策担当参事官室
直通 03-5521-8330
代表 03-3581-3351
参事官 竹本明生(内線6772)
主査 寺岡裕介(内線6774)