報道発表資料
このたび、「平成29年度低炭素型の行動変容を促す情報発信(ナッジ)による家庭等の自発的対策推進事業」の採択案件(二次公募)が決定しましたので、お知らせします。地方公共団体やエネルギー供給事業者等との連携の下、一人ひとりに配慮した日本型の行動変容モデルの構築により、環境価値の実装された低炭素社会へのパラダイムシフトの実現を目指します。
平成29年のノーベル経済学賞が行動経済学関連での受賞となりましたが、ナッジを含む行動科学の知見に基づく取組が早期に社会実装され、自立的に普及することを目標に、我が国では平成29年4月より環境省のイニシアチブの下、プロジェクトチームとして産学官連携による日本版「ナッジ・ユニット」を発足しています。
1.事業の概要
技術革新を通じて環境性能の高い技術や機器が社会に広く普及し実装されつつありますが、技術や機器の利用方法は個々の利用者の行動様式によって大きく異なり得るものであり、効率的に使われて高い環境性能が最大限に発揮されているとは必ずしも言えない状況です。
近年欧米では、行動科学等の理論に基づくアプローチ(ナッジ、英語nudge:そっと後押しする)により、国民一人ひとりの行動変容を直接促し、ライフスタイルの変革を創出する取組が「ナッジ・ユニット」等と呼ばれる政府関連機関の下で行われ、費用対効果が高く、対象者にとって自由度のある新たな政策手法として着目されています。こうした取組が我が国においてもCO2排出削減の観点で、とりわけ持続的・中長期的に、適用可能であるかは検証が必要です。
このため、環境省では、平成29年4月に産学官連携の取組として日本版ナッジ・ユニットを発足しました。そして本事業では、家庭・業務・運輸部門等のCO2排出実態に係るデータを収集、解析し、個別の実態を踏まえた形で個々に情報をフィードバックして低炭素型の行動変容を促すといったCO2排出削減に資する行動変容のモデルを構築するとともに、地方公共団体や米国エネルギー省、ハーバード大学等との連携の下、当該モデルの我が国への持続的適用可能性の実証や我が国国民特有のパラメータの検証を実地にて行います。
2.採択案件の審査方法
応募課題について、本事業の要件を満たしているかのほか、行政的観点からの評価等について書面による事前審査を行い、選定をした上で、外部専門家から構成される審査委員会でヒアリングを行い、採否等について審査を実施しました。
3.審査の結果
審査の結果、次の1事業者(コンソーシアム)を採択しました。
代表事業者 | 共同事業者 | 課題名 | 事業期間※ |
(株)マッキャンヘルスケアワールドワイドジャパン | (大)東京大学、 (国研)国立環境研究所 |
健康行動ナッジ手法を応用した低炭素型の行動誘発システムの開発と社会実装 | 平成29~33年度 (予定) |
※毎年度中間審査を実施し、経費・事業計画の見直しの要否や事業継続可否の判断を行います。
(参考1)一次公募の採択結果
平成29年1月から2月に実施した一次公募では、以下の3事業者(コンソーシアム)を採択しました。
代表事業者 | 共同事業者 | 課題名 | 参画エネルギー供給事業者(予定) | 事業期間※ |
デロイトトーマツコンサルティング(同) | (一財)電力中央研究所、東京電力エナジーパートナー(株)、凸版印刷(株) | 家電・自動車等利用に関するナッジを活用した低炭素型行動変容モデルの構築 | 東京電力エナジーパートナー(株) | 平成29~33年度 (予定) |
日本オラクル(株) | (株)住環境計画研究所 | 生活者・事業者・地域社会の「三方良し」を実現する日本版ナッジモデルの構築 | 北海道ガス(株)、東北電力(株)、北陸電力(株)、関西電力(株)、沖縄電力(株)、東京ガス(株) | 平成29~33年度 (予定) |
みやまスマートエネルギー(株) | 九州スマートコミュニティ(株)、(株)チームAIBOD | 地域エネルギー会社を核とした地域主導型低炭素行動変容モデルの開発普及事業 | みやまスマートエネルギー(株)(福岡県みやま市)等地域エネルギー会社 | 平成29~33年度 (予定) |
※毎年度中間審査を実施し、経費・事業計画の見直しの要否や事業継続可否の判断を行います。
(参考2)日本版ナッジ・ユニットについて
日本版ナッジ・ユニットは、関係省庁や上記の採択事業者、産業界や専門家等から成る産学官連携の取組であり、環境省のイニシアチブの下、平成29年4月に発足しました。構成メンバーは、随時募集・追加していくこととしています。
本事業をはじめとする環境・エネルギー分野はもとより、幅広い分野での課題の解決に向けたナッジ手法の適用について検討を進め、ナッジを含む行動科学の知見に関する方法論や課題、対応方策等を共有していきます。また、欧米等先行する諸外国の政府関連機関、実務者、有識者等とも、情報共有や協調をしています。
(参考)英国及び米国での取組
○英国
・2010年、内閣府の下に以下を目的としたナッジ・ユニットを発足(Behavioural Insights Team; 通称 Nudge Unit)
- 公共サービスをコスト効率的かつ市民が利用しやすいものにする
- 人間の行動に関するより現実的なモデルを政策に導入して成果を改善する
- 人々が自分たちにとってより良い選択ができるようにする
・2011年7月、行動変容とエネルギー使用に関するレポート
- ホーム・エネルギー・レポート(エネルギーの使用状況や省エネアドバイスをまとめたレポート)を例に、情報提供を通じたエネルギー使用量の削減方策を紹介
・2014年2月、英国政府とNesta(イノベーション関連の慈善団体)とのパートナーシップにより政府から独立した運営に移行
○米国
・2014年、科学技術政策局が社会・行動科学チームを発足(Social and Behavioral Sciences Team)
- 社会・行動科学の知見を連邦政府の政策やプログラムの改善に活用するための省庁横断的な応用行動科学の専門家集団
・2015年9月、行動科学の知見の活用に関する大統領令(Using Behavioral Science Insights to Better Serve the American People)を公布
"行動科学の知見は、行政の効果と効率の改善を通じて、雇用、健康、教育、低炭素経済への移行の加速化等、多岐にわたる国家の優先事項を支援し得る"
- 連絡先
- 環境省地球環境局地球温暖化対策課地球温暖化対策事業室
直通 03-5521-8339
代表 03-3581-3351
室長 水谷好洋 (内線6771)
室長補佐 池本忠弘 (内線6791)
室長補佐 中村俊一 (内線7725)
担当 奥野博之 (内線7729)