報道発表資料
1.趣旨
近年、ニホンジカ等の鳥獣については、急速な生息数の増加や、生息域の拡大により、自然生態系、農林水産業及び生活環境に深刻な被害を及ぼしており、積極的な捕獲による個体群管理が不可欠となっています。
このため、環境省と農林水産省は「抜本的な鳥獣捕獲強化対策」(平成25年12月)を共同で取りまとめ、「ニホンジカ、イノシシの個体数を10年後(平成35年度)までに半減」することを当面の捕獲目標としました。
これを達成するため、平成26年5月30日に公布された鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律の一部を改正する法律(平成26年法律第46号。平成27年5月29日施行。)において、集中的かつ広域的に管理を図る必要がある鳥獣を、国が「指定管理鳥獣」に指定して、都道府県等が主体となって捕獲を行う「指定管理鳥獣捕獲等事業」を創設するとともに、この事業を実施する都道府県を交付金により支援することとし、指定管理鳥獣については、全国的な生息状況や被害状況を勘案して、ニホンジカ及びイノシシを指定しました。
抜本的な捕獲の強化に当たっては、生息数を把握して鳥獣の管理の目標を明らかにする必要があることから、全国的な観点から科学的・計画的に指定管理鳥獣の管理を推進するために、環境省では、平成25年度より全国のニホンジカ及びイノシシの個体数推定等を実施しています。今般、平成27年度末時点の推計結果を取りまとめたので公表します。
2.調査の概要
全国のニホンジカ及びイノシシの個体数推定等(手法の詳細は資料1)
指定管理鳥獣の全国的な個体数の動向を把握するため、鳥獣関係統計の情報等を元に、全国(本州以南※1)のニホンジカ及びイノシシについて平成27年度末の個体数推計を実施しました。
その結果、平成27(2015)年度末の全国(本州以南※1)のニホンジカの個体数は中央値約304万頭(90%信用区間約224万~456万頭)、イノシシの個体数は中央値約94万頭(90%信用区間約73万~123万頭)と推定されました。平成25年度末との比較でニホンジカ、イノシシともに減少となり、特にニホンジカについては個体数推計において初めて増加が止まり減少に転じている可能性があることが明らかになりました。
さらに、ニホンジカについて平成27年度の捕獲率※2で捕獲を続ける場合、平成35年度には中央値で約359万頭(平成23年度の個体数※3の約1.43倍)まで増加すると予測され、平成35年度に平成23年度(抜本的な鳥獣捕獲対策の10年半減目標の基準年)の個体数の中央値で半数以下にするためには、平成28年度以降に平成27年度の捕獲率の約1.9倍の捕獲を続ける必要があると予測されました。
本調査については、環境省が今後も手法の改良を重ねながら毎年継続的に実施し、「抜本的な鳥獣捕獲強化対策」に定めた目標の進捗状況の確認に活用する等により、環境省では順応的な管理を進めていくこととしています。
※1 北海道については、先進的に同様の手法を用いて独自に推定(北海道のニホンジカの個体数は、平成27年度末時点で約49~55万頭と推定)していますが、計算結果のデータ形式が異なることから、別の地域の計算結果と科学的に妥当な方法で足し合わせることが困難なため、別で取り扱うこととしています。
※2 捕獲率とは、推定個体数に対する捕獲数の割合を指します。
※3 平成23年度末のニホンジカの個体数については、平成25年8月には約261万頭(90%信用区間約155万~549万頭)、平成27年4月には約239万頭(90%信用区間約183万~340万頭)、平成28年3月には約265万頭(90%信用区間約175万~559万頭)と推定結果を発表しましたが、今回の推定では平成23年度末のニホンジカの個体数は約251万頭(90%信用区間約197万~354万頭)と推定されました。本推定手法の推定値は過去に遡って見直されるものであり、今後も推定値は毎年変わっていくことに留意ください。
【添付資料】
・資料1 統計手法による全国のニホンジカ等の個体数推定等(概要)
・資料2 統計手法による全国のニホンジカ及びイノシシの個体数推定等について
※資料は環境省HP(https://www.env.go.jp/press/index.html)よりご参照ください。
添付資料
- 連絡先
- 環境省自然環境局野生生物課鳥獣保護管理室
鳥獣保護管理室長 西山 理行(内線6470)
企画官 東岡 礼治(内線6475)
担当 野川 裕史(内線6675)