報道発表資料

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2017年06月01日
  • 総合政策

(仮称)浜里風力発電事業に係る環境影響評価準備書に対する環境大臣意見の提出について

 環境省は、1日、北海道で実施予定の「(仮称)浜里風力発電事業環境影響評価準備書」(株式会社道北エナジー)に対する環境大臣意見を経済産業大臣に提出した。
 本事業は、北海道天塩郡幌延町において、最大で総出力61,200kWの風力発電所を設置する事業である。
 環境大臣意見では、1)景観及び鳥類への影響が強く懸念される風力発電設備について、設置の取りやめ又は配置の変更を行うこと、2)国立公園の利用者等の意見を聴取し、風力発電設備の高さ、基数、配置等を更に詳細に検討すること、3)チュウヒへの影響について、追加的な調査、予測及び評価を実施し、設置の取りやめを含めた配置の見直しを行うこと、4)植物及び生態系への影響について、十分な予測及び評価を実施し、設置の取りやめ又は配置の変更を行うこと等を求めている。

1.背景

 環境影響評価法及び電気事業法は、出力10,000kW以上の風力発電所の設置又は変更の工事を対象事業としており、環境大臣は、事業者から提出された環境影響評価準備書※について、経済産業大臣からの照会に対して経済産業大臣に意見を述べることができるとされている。
 本件は、北海道の「(仮称)浜里風力発電事業」に係る環境影響評価準備書について、この手続きに沿って意見を提出するものである。
 今後、事業者は、環境大臣及び関係自治体の長の意見を受けた経済産業大臣勧告を踏まえ、法に基づく環境影響評価書の作成等の手続きが求められる。

※環境影響評価準備書:環境影響評価の結果について環境の保全の見地からの意見を聴くための準備として、調査、予測及び評価、環境保全対策の検討を実施した結果等を示し、環境の保全に関する事業者自らの考え方を取りまとめた文書。

2.事業の概要

(1)事業者   株式会社道北エナジー

(2)事業位置  北海道天塩郡幌延町(対象事業実施区域面積 約412ha)

(3)出力    総出力 最大61,200kW(3,600kW×17基)

3.環境大臣意見の概要

[1]総論

(1)設置基数及び配置の見直しについて

 本事業による景観及び鳥類への影響が強く懸念されることから、下記のとおり、影響を回避又は極力低減すること。

1)HS16及びHS17については、幌延ビジターセンターとパンケ沼園地とを結ぶ歩道から眺望される利尻山のスカイラインを切断すること、また、オジロワシの重要な生息地の近傍に位置し、風力発電設備の稼働によりバードストライクの影響が懸念されることから、設置の取りやめ又は影響回避を可能とする配置の変更を行うこと。

2)HS01及びHS10については、幌延ビジターセンターからの眺望において利尻山に接しており、また、幌延ビジターセンターとパンケ沼園地とを結ぶ歩道から利尻山を眺望する視野の範囲のうち、水平視角の中心部に位置することから、設置の取りやめ又は影響回避を可能とする配置の変更を行うこと。

(2)事後調査等について

 事業実施に当たっては、以下の取組を行うこと。

1)事後調査及び環境監視等を適切に実施し、必要に応じて、追加的な環境保全措置を講ずること。

2)追加的な環境保全措置の具体化に当たっては、客観的かつ科学的に検討すること。また、検討のスケジュールや方法、専門家等の助言、検討に当たっての主要な論点及びその対応方針等を公開し、透明性及び客観性を確保すること。

3)事後調査及び環境監視等により環境影響を分析し、講ずる環境保全措置の内容、効果及び不確実性の程度について報告書として取りまとめ、公表すること。

4)周辺の他事業者による風力発電所との累積的な影響が懸念されるため、当該他事業者と情報を共有し、地域全体で効果的な環境保全措置を講ずること。特に、鳥類に対するバードストライクや移動経路の阻害等の情報について、積極的に情報共有を図ること。

[2]各論

(1)景観に対する影響

 対象事業実施区域は、利尻礼文サロベツ国立公園の特別保護地区に接しており、周辺にはビジターセンターや歩道、園地等の利用施設があり、年間を通じて多くの利用があることから、眺望景観に対する重大な影響が懸念される。
 また、本事業の風力発電設備の配置等の検討に当たっては、幌延ビジターセンターから眺望される利尻山のスカイラインの切断を回避したとしているが、幌延ビジターセンターからパンケ沼園地に向かう歩道上からの眺望は、HS16及びHS17が利尻山のスカイラインを切断しており、回避は十分ではない。さらに、幌延町が実施したアンケート調査の結果を踏まえた配置の検討を行ったとしているが、当該アンケートには、景観に配慮した風力発電設備の配置等の検討に資するような質問項目は認められず、対応は十分ではない。
 このため、風力発電設備の設置による景観変化への配慮理由を明確にした複数パターンのモンタージュ写真を作成し、利用者等の意見の聴取等を実施し、それらの意見を踏まえて、風力発電設備の高さ及び基数の調整並びに構造物の配置に法則性を持たせること等を更に詳細に検討すること。

(2)鳥類に対する影響

 対象事業実施区域及びその周辺は、チュウヒ及びオジロワシの生息環境となっており、対象事業実施区域内ではチュウヒの採餌活動が確認され、また、その周辺にはオジロワシの繁殖が複数確認されていることから、本事業の実施により、これらの希少猛禽類への重大な影響が懸念される。さらに、対象事業実施区域はガン類、ハクチョウ類等の渡り鳥の集団飛来地となるサロベツ原野に隣接しており、対象事業実施区域及びその周辺は、これら渡り鳥の主要な経路となっていることから、これら渡り鳥への重大な影響が懸念される。
 このため、本事業による重要な鳥類に対する影響を回避・低減する観点から、以下の措置を講ずること。

1)チュウヒの生息に対する影響を把握するために、対象事業実施区域東側及び南側の地上部が見渡せる調査地点での調査結果を加えて、予測及び評価を追加的に実施した上で、チュウヒへの重大な影響が懸念される風力発電設備については、設置の取りやめを含めた配置の見直しを行うこと。

2)バードストライクの有無及び渡り鳥の移動経路に係る事後調査を適切に実施し、希少猛禽類及び渡り鳥に対する重大な影響が認められた場合は、稼働制限等を含めた追加的な環境保全措置を講ずること。
 併せて、稼働後において重要な鳥類のバードストライクによる死亡・傷病個体が確認された場合は、確認位置や損傷状況等を記録し、関係機関へ報告するとともに、死亡・傷病個体の搬送、傷病個体の救命及び原因分析を行い、追加的な環境保全措置の検討に活用すること。

(3)植物及び生態系に対する影響

 対象事業実施区域内の一部においては、国立公園の特別保護地区と一体的な植生、地形など重要な自然環境等が形成されており、また、風力発電設備の設置予定位置は特別保護地区に接していることから、土地の改変や風力発電設備の稼働に伴う潮風や水文等の変化により、特別保護地区及びそれと一体的な植物及び生態系に対する重大な影響が懸念されるが、これらの影響に関する予測及び評価について十分な検討がなされていない。
 このため、本事業による植物及び生態系に対する環境影響を回避・低減する観点から、特別保護地区との境界付近に計画されている風力発電設備等について、環境影響に関する十分な予測及び評価を実施した上で、重大な影響が懸念される場合は、以下の措置を講ずること。
 自然度の高い植生がまとまりをもって分布している範囲に含まれるHS11、HS12及びHS13については、設置の取りやめ又は影響回避を可能とする配置の変更を行うこと。また、HS11、HS12及びHS13以外に特別保護地区との境界付近に計画されている風力発電設備等については、配置の変更を行うこと。
 なお、配置の変更を行う際には、特別保護地区からの離隔を十分に確保すること。


(参考)環境影響評価に係る手続き

【配慮書の手続き】

・縦覧         平成27年3月10日~平成27年4月9日(住民意見21件

・北海道知事意見提出  平成27年5月22日

・環境大臣意見提出   平成27年4月24日

【方法書の手続き】

・縦覧         平成27年8月19日~平成27年9月18日(住民意見10件

・北海道知事意見提出  平成28年1月21日

・経済産業大臣勧告   平成28年2月5日

【準備書の手続き】

・縦覧         平成28年12月22日~平成29年1月26日(住民意見166件

・北海道知事意見提出  平成29年5月30日

・環境大臣意見提出   平成29年6月1日

※環境の保全の見地からの意見の件数

添付資料

連絡先
環境省総合環境政策局環境影響審査室
代表    03-3581-3351
直通    03-5521-8237
室長    大井通博(内6231)
室長補佐  伊藤史雄(内6233)
審査官   生田雄一(内6239)

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