報道発表資料
本セミナーでは、国際的な目標である持続可能な開発目標(SDGs)についてアジアの都市がいかに政策として取り込んで実施するのかをテーマに、アジア各国、自治体、国際機関、企業等による先進的な取組を共有するとともに、SDGsの達成に向けた官民連携のあり方などについて意見交換が行われました。
この結果、ASEAN ESCモデル都市プログラムについて、SDGsの効率的な実施のため、個々のプロジェクトの規模を拡大して実施していくことや、次の革新的なモデルプロジェクトにつなげるため、SDGsに関連するセミナー等を開催することが必要である旨合意しました。今後、その実現に向け関係者が協力して進めることになりました。
1.概要
(1)開催日時
平成29年2月8日(水)~9日(木)
(2)開催場所
タイ チェンライ
(3)主催
タイ、日本、カンボジア、アメリカ、ASEAN事務局、ASEAN ESCワーキンググループ
(4)参加
東アジア首脳会議環境大臣会合参加国をはじめ、自治体、国際機関等から約200名が参加。
日本からは環境省梶原地球環境審議官他が出席。
2.経緯
平成20年にベトナムで開催された第1回東アジア首脳会議(EAS)環境大臣会合において、EAS諸国における環境協力の優先活動分野として「環境的に持続可能な都市(ESC)」が決定されました。
かかる決定を踏まえ、我が国のイニシアティブにより、平成22年からEASの枠組みのもとで、ESCをテーマとし、セミナーを開催してきました。今回のセミナーからは、2030年アジェンダ及び「パリ協定」等の国際的な動向を踏まえ、テーマをESCから持続可能な都市にしています。
3.セミナー結果
(1)梶原地球環境審議官挨拶概要
パリ協定の実施やSDGsの目標達成に向け、都市が果たす役割の重要性を指摘した上で、昨年11月に公表した「日本の気候変動対策支援イニシアティブ」に基づき、脱炭素社会と持続可能な社会の同時達成を支援するため、本セミナー、「ESCモデル都市プログラム」などを通じて、途上国によるSDGsの達成を支援していくことを述べました。
(2)村上周三(一財)建築環境・省エネルギー機構理事長による基調講演概要
持続可能な社会を構築していくための国際的な動向として、SDGs、パリ協定、ニューアーバンアジェンダを取り上げるとともに、持続可能な社会を実現する上で重要な要素として市民、地球、繁栄、平和、パートナーシップを挙げられました。
また、「環境未来都市」構想有識者検討会の委員長の立場から、日本における環境未来都市の基本的なコンセプトや狙い、地方自治体への動機付けの方法などについて説明していただくとともに、現在作成作業中の地方自治体のためのSDGsガイドラインの基本的な考え方や構成要素等について紹介いただきました。
(3)セミナーの構成
アジアの都市においてSDGsを如何に政策として取り込んで実施していくのか、SDGsの達成に向けた官民連携のあり方、SDGsに向けた取組を促進するための新たな政策等を議論するため、全体セッションが設けられました。
また、大気、気候変動への強靱性、SDGsに関するナレッジプラットフォーム、観光など8つのテーマ別セッション、タイにおける廃棄物・3Rなどに関する取組等に焦点を置いた4つのセッションの計12のテーマ別セッションが設けられました。
各セッションでは、各都市や国際機関等による取組や事例が紹介され、その後、持続可能な都市を構築していく上で、各国政府、国際機関、民間企業等とどのように協力していくのかが意見交換が行われました。
我が国からは、SDGsに積極的に取り組んでいる東松島市、富山市及び北九州市がそれぞれの取組を発表したほか、タイにおける廃棄物・3RのセッションにおいてJFEエンジニアリング株式会社が発表を行いました。また、「タイ国におけるJCMを活用した港湾の低炭素・スマート化支援調査事業」(平成28年度低炭素社会実現のための都市間連携に基づくJCM案件形成可能性調査)のタイ側カウンターパートであるタイ港湾庁が同国の港湾の低炭素化の取組に関する発表を行いました。
以上で紹介した自治体等による発表の概要は以下の通りです。
富山市(山添 俊之 未来戦略企画監)
全体セッション1「アジアの都市におけるSDGsの取り込み:政策を実施にどのように結びつけるか」において、富山市のコンパクトシティや持続可能なエネルギーに関する国際的な評価について紹介していただくとともに、SDGs目標7(持続可能なエネルギーへのアクセス)、目標11(持続可能な都市)、目標17(実施手段の強化と持続可能な開発のためのグローバル・パートナーシップの活性化)を例に、SDGsと同市の関連する取組との関係性について発表していただきました。また、自治体がSDGsに取り組む意義や課題について、同市としての見解を提示していただきました。
さらに、「トランジット指向開発(TOD)と土地価値キャプチャ(LVC)」 のセッションでは、富山市が抱える課題(人口減少、少子高齢化、インフラの老朽化等)を説明していただきました。その上で、同市が取り組むコンパクトシティに関して、LRTの導入等をはじめとする公共交通を活性化し、その沿線に居住、商業、業務、文化等の都市の諸機能を集積させることで、公共交通を軸とした拠点集中型のコンパクトなまちづくりを推進していることについて、具体例を示しながら紹介していただきました。
東松島市(高橋 宗也 復興政策部復興政策課長)
「気候変動・温暖化が進行する中でのレジリエンスの制度化」のセッションにおいて、東日本大震災からの再建に当たって、復興まちづくりとあわせて環境未来都市の取組を推進してきたことを紹介していただきました。
特に、コンパクトで環境と高齢者に優しい街区の設定、太陽光や風力など再生可能エネルギーの導入、震災廃棄物の徹底したリサイクル(リサイクル率99.22%)、地産地消型の再生可能エネルギーを活用した東松島市スマート防災エコタウンの取組、同市の経験を生かした国際協力(インドネシア、フィリピン)等について具体的に紹介していただきました。
北九州市(谷貝 雄三 環境局環境監視部長兼企画調整局地方創生推進担当課長
「都市レベルでの気候行動(地方の緩和と強靱化への取組み)」のセッションにおいて、北九州市がどのように市民や企業など様々な関係者と連携しながら公害問題を克服して、経済発展と環境改善を両立してきたかを説明していただきました。また、北九州エコタウン(リサイクル産業の育成とCO2削減等)、北九州市次世代エネルギーパーク(太陽光、風力、バイオマス等再生可能エネルギーの活用やエネルギーの企業間連携の取組)、北九州スマートコミュニティ創造事業(日本型スマートグリッドの構築と海外展開を実現するための取組み)等、同市における低炭素社会、持続可能な社会を実現するための取組を紹介ししていただきました。
JFEエンジニアリング(高橋 元 マーケティング部長)
「タイにおける3R・廃棄物管理-政策と実施」のセッションにおいて、途上国における廃棄物の課題(オープンダンピングによる周辺環境の汚染(悪臭、大気汚染、水質汚濁等)、メタンガス等の温室効果ガスの排出)を取り上げた上で、経済発展が著しい途上国における統合的な廃棄物管理の必要性、適正な技術の導入や維持管理の重要性を指摘されました。
また、日本で導入が進んでいる廃棄物発電の意義(廃棄物の適正処理、エネルギー源としての利用、最終処分量の減量化等)や処理の安全性、安定的な稼働の実績について説明していただくとともに、途上国における適用事例(ミャンマーにおけるJCM設備補助事業)を紹介していただきました。
タイ港湾庁(ピサイサワット 企画計画局技官)
「気候変動・温暖化が進行する中でのレジリエンスの制度化」のセッションにおいて、タイ港湾庁の温室効果ガス削減の数値目標(2019年までに2013年のベースライン比で10%削減)を達成するため、港湾施設や貨物取扱機器の効率性向上、環境管理の改善、環境への意識向上等港湾の低炭素化に取り組んでいる旨紹介していただきました。
また、こうしたタイ港湾庁によるグリーンポートの取組を横浜市が覚書に基づき相互に協力していることについて紹介していただきました。
(4)成果
今後も引き続き、SDGsやパリ協定の実施のため、アジアの各都市による持続可能な都市づくりの取組を各国政府や国際機関が協力していくことに合意しました。
ASEAN ESCモデル都市プログラムについては、SDGsの効率的な実施のために個々のプロジェクトの規模を拡大して実施していくことや、次の革新的なモデルプロジェクトにつなげるために、SDGsに関連するセミナー等を開催することが必要である旨合意されました。今後、その実現に向け関係者が協力して進めることになりました。
議論のまとめとして、議長サマリーが採択されました(議長サマリーは、関係者の最終的な確認を経て、「持続可能な都市ハイレベルセミナー」ホームページに近日中に掲載される予定です。http://www.hls-esc.org/
(5)来年度開催国
来年度は、カンボジア国において新たなセミナーが開催される予定です。
- 連絡先
- 環境省地球環境局国際連携課国際協力室
代表 03-3581-3351
直通 03-5521-8248
室長 水谷 好洋(内線6765)
課長補佐 杉本 留三(内線6726)
室長補佐 高橋 雄一郎(内線6761)
担当 大越 貴陽(内線7724)