報道発表資料
このワークショップには、アジア地域各国の政府関係者や我が国民間事業者が参加し、同地域における低炭素技術の開発・移転を促進するための方策や我が国の先進的な低炭素技術の導入事例に係る活発な意見交換を行い、互いに理解を深めることができました。
1.名称
低炭素技術の開発と移転のためのワークショップ
Workshop for low-carbon Technology Development and Transfer
2.日時
平成29年2月6日(月)・7日(火)
3.開催場所
フィリピン・マニラ
4.共催
アジア開発銀行(ADB)、フィリピン環境天然資源省(DENR)、公益財団法人地球環境センター(GEC)
5.参加者
アジア諸国(9カ国)の政府関係者、国際協力機関や研究機関等(5機関)の担当官・専門家等及び低炭素技術の導入事例に係る我が国民間事業者等、60名程度
7.議論の概要
●冒頭、環境省、フィリピン天然環境資源省、ADBより開会挨拶が述べられ、低炭素技術の開発と移転の重要性が示されました。
●本ワークショップでは、「途上国向け低炭素技術イノベーション創出事業」(以下、「イノベーション事業」という。)候補技術の現地適用と普及に関する調査結果を我が国民間事業者が発表すること、各国政府関係者や関係機関がその取組みを発表すること等により、低炭素技術の開発と移転に関する経験や知見の共有・理解の促進を図りました。議題別に共有・議論された結果概要は以下のとおりです。
(1)アジア地域における低炭素技術の開発と移転のための支援プログラムとその活用
○環境省から、途上国を対象とした技術移転に係る支援事業について、取組の概要及び成果を紹介しました。
○ADBからは、低炭素技術の開発と移転のための資金支援事業及びJCM日本基金(JFJCM)の概要及び事例が紹介されました。
○CTCN、緑の気候基金(GCF)、国連環境計画(UNEP)及びClimate Change Asia(CCA)からそれぞれの取組が紹介されました。
○低炭素技術の移転を促進するためには、これらの取組の連携のみならず、途上国政府や民間企業による有効活用等を通じて、相乗効果を生み出すことの重要性が共有されました。
(2)環境省によるイノベーション事業候補技術の現地適用と普及
○我が国民間事業者から、イノベーション事業候補技術の現地適用と普及に関する調査結果が発表されました。
○我が国民間事業者と各国政府担当官、関連機関専門家によるパネルディスカッションでは、以下について議論され、参加者間で共有されました。
・技術導入検討の早い段階でホスト国側のカウンターパートと協働することが重要。現地の状況・条件・リスクを考慮した、適切な技術の適用が望まれる。
・実際の技術導入・普及の最大の課題の一つは初期投資コストである。コストダウンをどのように達成するか、資金支援とともに導入普及を進める政策措置を連携させることが重要。
・低炭素技術の導入には、民間セクターの参画が不可欠であり、それを促進し、民間投資を呼び込む環境整備が重要。
・資金調達の可能性を高める観点から、技術適用によってもたらされる他の便益(コベネフィット)の効果も追及し、評価すべきである。
(3)資金・技術・能力開発の観点を踏まえた低炭素社会の実現に向けたプロジェクトの開発・実施
○タイ政府担当官より、組織・体制の構築及びCTCNのTA実施経験について紹介されました。
○モンゴル政府担当官より、GCF資金支援案件(申請中案件含む)の概要と取組、国の削減目標(NDC:Nationally Determined Contribution)に即した戦略について発表がなされました。
○GCFの認証実施機関であるADBより、GCF資金へのアクセスに関する知見が共有されました。
○CTCNのコンソーシアムパートナーであるインド・エネルギー資源研究所(TERI)及びアジア工科大学(AIT)より、TAの事例が紹介されました。
○参加者によるグループワークが行われ、技術の優先順位づけにあたっては各国のNDC・国家戦略に照らした検討が必要であること、プロジェクトを継続的に実施し、技術移転を進めるためには、外部からの資金支援だけに頼るのではなく、プロジェクト自体が収益を上げて自律的に運用できることが必要であることが改めて認識されました。加えて、各国政府内での広範な情報共有と協働、民間投資を呼び込むための環境整備の重要性も認識されました。これらを構築するためには、様々なレベルでの能力開発が必要であり、単なるハード技術の移転だけでなく、ソフト面の技術も移転されていくことが重要であることが共有されました。
○グループワークでの議論を受けた全体ラップアップでは、以下の点が参加者間で共有されました。
・技術移転の進捗段階(①技術開発、②技術適用実証、③技術適用の普及)に分けた検討・協力が必要。
・技術移転に必要な要素(現時点で十分でないもの):
-能力・知見・技能(技術の運用や当該技術の利用のほか、技術評価、技術の現地化に関するものを含む)
-資金(収益性の高いプロジェクトの形成や他の便益の評価等による、資金獲得可能性の向上)
-民間部門の参画(現地企業・産業の参画や育成、現地における市場の形成を通じた促進)
-政策・制度的措置(優先技術の特定、規制の導入、インセンティブ付与、基準の策定等)
・資金・技術・能力開発支援との国内マッチング:
-ホスト国各省庁・関係機関における戦略構築と調整・協調が重要。
-支援機関としては、CTCNやGCF、ADB、二国間・多国間協力等、多数存在。
-これらを連携させるためには、NDCとの整合が重要。
○参加者からは、我が国民間事業者が有する低炭素技術について大きな関心が寄せられ、自国内で情報共有して技術適用に向けた調整を行いたいとの評価を受けました。また、自国内で本ワークショップの内容や技術に関する情報の共有を進め、協調体制の整備とそのための能力開発を実施していきたいこと、低炭素で持続可能な社会の構築のために適用技術の普及を目指す等の意気込みや今後の更なる協力に対する期待が示されました。
- 連絡先
- 環境省地球環境局国際地球温暖化対策室
代表 03-3581-3351
直通 03-5521-8330
室長 木野 修宏 (6772)
室長補佐 工藤 里恵 (6786)
主査 寺岡 裕介 (6774)