報道発表資料
本事業は、福島県相馬郡新地町において、天然ガスを燃料とするガスタービン・コンバインドサイクル発電方式の発電所(総出力118万kW)を新設するものである。
環境大臣意見では、事業者に対し、「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」に基づくベンチマーク指標の遵守、取組内容の評価書への記載、達成状況及び更なる取組の検討と自主的公表、達成できないと判断した場合の事業見直しの検討等を求めた。
また、経済産業省に対し、全ての発電事業者に対する確実な同ベンチマーク指標の目標遵守、電力業界に対する自主的枠組み参加事業者の拡大と目標達成の取組促進、小売電気事業者に対する「エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律」の遵守、電力業界全体の取組の実効性の確保等を求めた。
1.背景
環境影響評価法及び電気事業法は、出力11.25万kW以上の火力発電所の設置又は変更の工事を対象事業としており、環境大臣は、提出された環境影響評価準備書※について、経済産業大臣からの照会に対して意見を述べることができるとされている。本件は、この手続に沿って意見を提出するものである。
今後、事業者である福島ガス発電株式会社には、環境大臣及び関係自治体の長の意見を受けた経済産業大臣勧告を踏まえ、法に基づく環境影響評価書の作成等の手続と環境保全措置の実施が求められる。
※環境影響評価準備書:環境影響評価の結果について環境の保全の見地からの意見を聴くための準備として、調査、予測、評価及び環境保全対策の検討を実施した結果等を示し、環境の保全に関する事業者自らの考え方を取りまとめた文書。
2.事業の概要
・名称 相馬港天然ガス発電所(仮称)設置計画
・事業者 福島ガス発電株式会社
・計画位置 福島県相馬郡新地町(相馬港3号埠頭、4号埠頭、4号埠頭埋立工場用地及び5号埠頭)
・燃料 天然ガス
・発電方式 ガスタービン及び汽力(コンバインドサイクル発電方式)
・出力 1号機及び2号機 各59万kW(計118万kW)
・工事開始時期 平成29年(予定)
・運転開始時期 1号機:平成32年1月(予定)、2号機:平成32年4月(予定)
3.環境大臣意見の概要
[1]前文
地球温暖化対策については、平成27年12月12日に国連気候変動枠組条約第21回締結国会議において採択された「パリ協定」が平成28年11月4日に発効した。我が国は、同年11月8日に同協定を締結している。同協定が掲げる長期的目標及び今世紀後半の温室効果ガスの人為的な排出と吸収のバランスを達成すること等に我が国としても取り組む必要がある。我が国は、同協定に基づく我が国の貢献としての2030年度に2013年度比26.0%減(2005年度比25.4%減)という温室効果ガス削減目標を掲げており、これを含む地球温暖化対策計画を平成28年5月13日に閣議決定している。この温室効果ガス削減目標を着実に達成するとともに、同計画に示されているとおり、地球温暖化対策と経済成長を両立させながら、長期的目標として2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減を目指して、戦略的に取り組んでいく必要がある。
本事業者は、現状のままであれば、省エネ法に基づくベンチマーク指標(火力発電効率A指標及びB指標)の目指すべき水準の達成が見込まれる状況である。
いずれにしても、目標の達成に向けた不断の努力が必要である。
また、本事業で発電した電力の供給先は現時点で未定であるが、自主的枠組みの参加事業者を通じて電力が小売りされる必要がある。
経済産業省においては、全ての発電事業者に対し、2030年度に向けて、確実に省エネ法に基づくベンチマーク指標の目標を遵守させること。共同実施の評価の考え方を明確化すること。また、自主的枠組みに関し、電力業界に対して、引き続き、実効性・透明性の向上やカバー率の維持・向上のため、参加事業者の拡大に取り組み、目標の達成に真摯に取り組むことを促すこと。さらに、小売電気事業者に対して、高度化法を遵守させるとともに、発電事業者及び小売り事業者に対し、省エネ法及び高度化法の指導・助言、勧告・命令を含めた措置を適切に運用すること等を通じて、エネルギーミックスを達成するよう、電力業界全体の取組の実効性を確保すること。
[2]総論
本事業の工事の実施及び施設の供用に当たっては、温室効果ガスの排出削減対策をはじめ、大気環境及び水環境の保全対策等の環境保全措置を適切に講ずること。
[3]各論
(1)温室効果ガス
1) 局長級取りまとめの「BATの参考表」に掲載されている「(A)経済性・信頼性において問題なく商用プラントとして既に運転開始をしている最新鋭の発電技術」を超える高効率の発電設備を導入することとしているところ、引き続き高効率化を検討するとともに、当該発電設備の運用等を通じて送電端熱効率の適切な維持管理を図ること。
2) 省エネ法に基づくベンチマーク指標については、その目標達成に向けて計画的に取り組み、2030年度に向けて確実に遵守するとともに、現時点での当該取組内容について、可能な限り評価書に記載し、公表し続けること。また、その達成状況を毎年度自主的に公表するとともに、目標達成に向けた更なる取組が必要となる場合はその取組内容を検討し、当該内容に関しても自主的に公表すること。
さらに、ベンチマーク指標の目標を達成できないと判断した場合には、本事業の見直しを検討し、今後、電気事業分野における地球温暖化対策に関連する施策の見直しが行われた場合には、事業者として必要な対策を講ずること。
3) 高度化法では小売段階において低炭素化の取組が求められていることを理解し、自主的枠組み参加事業者の現状程度のカバー率の維持・向上が図られることを前提として、原則、自主的枠組みの参加事業者に電力を供給し、確実に二酸化炭素排出削減に取り組むこと。
4) 「2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減を目指す」との国の長期的な目標に鑑み、国の二酸化炭素回収・貯留等に関する検討結果や、二酸化炭素分離回収設備の実用化をはじめとした技術開発状況を踏まえ、今後の二酸化炭素排出削減対策について、所要の検討を行うこと。
5) 本事業を含め、事業者における長期的な二酸化炭素排出削減対策について、所要の検討を行い、事業者として適切な範囲で必要な措置を講ずること。
(2)大気環境
1) 本事業の工事の実施及び施設の稼働に伴う大気環境への環境影響の回避・低減が図られるよう、地元自治体との協定を遵守するとともに、施設の稼働に当たっては、排煙脱硝装置等の維持管理の徹底等、大気汚染物質排出削減対策を図ること。
2) 周辺には稼働中及び計画中の石炭火力発電所があり、大気環境に係る累積的な影響が懸念されることから、策定した環境監視計画に基づき継続的に大気環境の状況を把握し、必要に応じて、適切な環境保全措置を講ずること。
3) 微小粒子状物質(PM2.5)に係る最新の知見を踏まえ、追加の環境保全措置を含めた適切な対応を行うこと。
(3)水環境
温排水の状況について、策定した環境監視計画に基づき継続的に把握し、必要に応じて、適切な環境保全措置を講ずること。また、地元自治体との協定を遵守し、新設される排水処理設備等により水質汚濁物質排出量を抑制すること。
以上について、その旨を評価書に記載すること。
(参考)環境影響評価に係る手続き
【配慮書の手続き】
・公表 平成26年11月5日 ~ 平成26年12月4日(住民意見 0件※)
・福島県知事意見提出 平成27年1月9日
・環境大臣意見提出 平成26年12月19日
・経済産業大臣意見 平成26年12月26日
【方法書の手続き】
・縦覧 平成27年5月8日 ~ 平成27年6月8日(住民意見 0件※)
・福島県知事意見提出 平成27年9月18日
・経済産業大臣勧告 平成27年10月6日
【準備書の手続き】
・縦覧 平成28年9月16日 ~ 平成28年10月17日(住民意見 4件※)
・福島県知事意見提出 平成28年12月28日
・環境大臣意見提出 平成29年2月13日
※環境の保全の見地からの意見の件数
添付資料
- 連絡先
- 環境省総合環境政策局環境影響審査室
代表 03-3581-3351
直通 03-5521-8237
室長 :大井通博 (内6231)
室長補佐:伊藤史雄 (内6233)
審査官 :谷本昌敏 (内6253)
担当 :知名光太郎(内6209)