報道発表資料

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2016年12月27日
  • 総合政策

(仮称)葛巻ウィンドファームプロジェクトに係る環境影響評価準備書に対する環境大臣意見の提出について

 環境省は、27日、岩手県で実施予定の「(仮称)葛巻ウィンドファームプロジェクト環境影響準備書」(三菱商事パワー株式会社)に対する環境大臣意見を経済産業大臣に提出した。
 本事業は、岩手県葛巻町において、最大で総出力110,400kWの風力発電所を設置する事業である。
 環境大臣意見では、1)工事計画の見直しにより、切土高、盛土高を減じ、残土の発生を最小限に抑えること、2)工事用資材等の輸送に伴う騒音の低減に努めること、3)イヌワシ、クマタカ等のバードストライクの可能性を低減するため、ブレード塗装等視認性を高める措置を設備稼働前に講ずること等を求めている。

1.背景

 環境影響評価法及び電気事業法は、出力10,000kW以上の風力発電所の設置又は変更の工事を対象事業としており、環境大臣は、事業者から提出された環境影響評価準備書※について、経済産業大臣からの照会に対して意見を述べることができるとされている。
 本件は、岩手県の「(仮称)葛巻ウィンドファームプロジェクト」に係る環境影響評価準備書について、この手続きに沿って意見を提出するものである。
 今後、事業者は、環境大臣及び関係自治体の長の意見を受けた経済産業大臣勧告を踏まえ、法に基づく環境影響評価書の作成等の手続が求められる。

※環境影響評価準備書:環境影響評価の結果について環境の保全の見地からの意見を聴くための準備として、調査、予測及び評価、環境保全対策の検討を実施した結果等を示し、環境の保全に関する事業者自らの考え方を取りまとめた文書。

2.事業の概要

・事業者   三菱商事パワー株式会社
・計画位置  岩手県岩手郡葛巻町(敷地面積:約1,797ha)
・出力    総出力110,400kW(単機出力2,300kW級×48基)

3.環境大臣意見の概要

[1]総論

(1)工事計画の見直しについて
 本事業の工事計画は、風力発電設備の設置等により多くの土地の改変が行われ、発生する残土の処理のために土捨場を設置することで更なる土地の改変が行われることとなっており、水環境、動植物の生息・生育環境、生態系等への重大な影響が懸念される。
 このため、以下の事項を念頭に、風力発電設備等の位置や道路計画等を見直すとともに、改変区域の大幅な変更がある場合には、調査、予測及び評価を再度実施し、必要な環境保全措置を講ずること。

1) 切土高、盛土高を減じ、土地の改変面積の最小化を図ること。特に、風車位置の見直し等により風車ヤードの切土高を減ずるよう検討すること。
2) 残土の発生を最小限に抑えること。
3) やむを得ず残土が生じ、新たに土捨場を設けて残土を処理する場合には、盛土の安定性を確保できる場所、工法を選択すること。
4) 沈砂池等の配置及び流末処理等の濁水対策を十分に検討し、適切に講ずること。
5) 希少な動植物の生息地・生育地の改変を極力回避すること。
6) 1)から5)の措置を講じてもなお、大規模な土工量が発生する風力発電設備等については、これらの設置の取りやめや配置等の見直しを行うこと。

(2)事後調査等について
 上記の措置を講ずることを前提として、事業実施に当たっては、以下の取組を行うこと。

1) 事後調査及び環境監視を適切に実施し、追加的な環境保全措置を講ずること。
2) 追加的な環境保全措置の具体化に当たっては、客観的かつ科学的に検討すること。また、検討のスケジュールや方法、専門家等の助言、検討に当たっての主要な論点及びその対応方針等を公開し、透明性及び客観性を確保すること。
3) 事後調査及び環境監視等により環境影響を分析し、講ずる環境保全措置の内容、効果及び不確実性の程度について報告書として取りまとめ、公表すること。
4) 周辺の他事業者による風力発電所との累積的な影響が懸念されるため、周辺の他事業者と情報を共有し、地域全体で効果的な環境保全措置を講ずること。特に、鳥類に対する移動経路の阻害やバードストライク事故等の情報について、積極的に情報共有を図ること。

[2]各論

(1)騒音等に係る環境影響
 工事用資材等の搬出入に伴う騒音について、複数地点においてA及びBの地域類型における環境基準値を上回っており、騒音の増加量が最大で15デシベルと予測されていることから、工事用資材等の輸送効率化による車両台数の削減、搬出入ルートの分散化による車両台数の平準化及び低速走行等の追加的な環境保全措置により騒音を一層低減するよう努めるとともに、工事実施期間中には、追加的な環境保全措置の効果について確認すること。

(2)鳥類に対する影響
 対象事業実施区域及びその周辺は、イヌワシ等の生息環境となっているほか、対象事業実施区域の周辺には、イヌワシ、クマタカ等の希少猛禽類の営巣が確認されており、本事業によるこれらの希少猛禽類への重大な影響が懸念される。
 このため、本事業による希少猛禽類への影響を回避又は低減する観点から、以下の措置を講ずること。

1) バードストライクの発生の可能性を低減するために、ブレード塗装等鳥類からの視認性を高める措置を設備稼働前に講ずること。
2) 供用後のバードストライクの有無及びクマタカ等の飛翔経路の変化に係る事後調査を適切に実施するとともに、希少猛禽類等の重要な鳥類に対する重大な影響が認められた場合は、稼働制限等の追加的な環境保全措置を講ずること。
併せて、重要な鳥類の死亡・傷病個体が確認された場合は、確認位置や損傷状況等を記録するとともに、関係機関との連絡・調整、死亡・傷病個体の搬送、関係機関による原因分析及び傷病個体の救命への協力を行うこと。
特に、イヌワシに係るバードストライクが発生した場合には、当該風力発電設備及び同様に衝突する可能性が高い風力発電設備を停止するとともに、原因を解決するための追加的な措置を行った上で稼働再開とすること。


(参考)環境影響評価に係る手続き
【配慮書の手続き】
・縦覧         平成27年7月17日~平成27年8月17日(住民意見0件
・環境大臣意見提出   平成27年9月18日

【方法書の手続き】
・縦覧         平成27年12月16日~平成28年1月25日(住民意見0件
・岩手県知事意見提出  平成28年5月10日
・経済産業大臣勧告   平成28年5月25日

【準備書の手続き】
・縦覧         平成28年8月18日~平成28年9月20日(住民意見49件
・岩手県知事意見提出  平成28年11月30日
・環境大臣意見提出   平成28年12月27日
※環境の保全の見地からの意見の件数

添付資料

連絡先
環境省総合環境政策局環境影響審査室
代表    03-3581-3351
直通    03-5521-8237
室長    大井通博(内6231)
室長補佐  伊藤史雄(内6233)
審査官   生田雄一(内6239)

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