報道発表資料

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2016年12月22日
  • 保健対策

「平成27年度化学物質環境実態調査結果(概要)」について

 環境省では、昭和49年度から一般環境中における化学物質の残留状況を継続的に把握することを目的に化学物質環境実態調査(化学物質エコ調査)を実施し、その調査結果を各種化学物質対策に活用していますが、この度、「平成27年度化学物質環境実態調査結果(概要)」がまとまりましたので公表します。調査結果の詳細については、今後、「平成28年度版 化学物質と環境」として取りまとめ、公表する予定です。

1. 経緯

 昭和49年度に、「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」(以下「化審法」という。)制定時の附帯決議を踏まえ、一般環境中の既存化学物質の残留状況の把握を目的として「化学物質環境調査」が開始されました。昭和54年度からは、「プライオリティリスト」(優先的に調査に取り組む化学物質の一覧)に基づく「化学物質環境安全性総点検調査」の枠組みが確立され、調査内容が拡充されてきたところです。

 その後、「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」(以下「化管法」という。)の施行、「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」(以下「POPs条約」という。)の発効等を踏まえ、平成14年度より調査結果を施策により有効に活用されるよう、環境省内の化学物質管理施策等を所管している部署からの要望物質を中心に調査対象物質を選定する方式に変更し、平成18年度からは調査体系を「初期環境調査」、「詳細環境調査」及び「モニタリング調査」として実施しています。

 さらに、平成22年度より、排出に関する情報を考慮した調査地点の選定やモニタリング調査における調査頻度等を見直した調査を実施しています。

2. 調査の進め方

(1)調査対象物質の選定

 調査対象物質は、各担当部署から調査要望がなされた物質について、分析法開発の可能性やリスクの観点等を考慮して絞り込みを行った後、平成26年度に開催された中央環境審議会環境保健部会化学物質評価専門委員会(第20回)における評価等を経て選定されました。

(2)調査内容

ア.初期環境調査

 環境リスクが懸念される化学物質について、一般環境中で高濃度が予想される地域においてデータを取得することにより、化管法の指定化学物質の指定、その他化学物質による環境リスクに係る施策について検討する際の基礎資料等とすることを目的として調査を行い、「化学物質環境実態調査結果精査等検討会」及び「初期環境調査及び詳細環境調査の結果に関する解析検討会」においてデータの精査、解析等が行われました。

 平成27年度は15物質(群)を調査対象としました。なお、一部の物質においては、排出に関する情報を考慮した調査地点を含むものとなっています。

イ. 詳細環境調査

 化審法の優先評価化学物質のリスク評価等を行うため、一般環境中における全国的なばく露評価について検討するための資料とすることを目的として調査を行い、初期環境調査と同様、「化学物質環境実態調査結果精査等検討会」及び「初期環境調査及び詳細環境調査の結果に関する解析検討会」においてデータの精査、解析等が行われました。

 平成27年度は11物質を調査対象としました。なお、一部の物質においては、排出に関する情報を考慮した調査地点を含むものとなっています。

ウ. モニタリング調査

 化審法の特定化学物質等について一般環境中の残留状況を監視すること及びPOPs条約に対応するため条約対象物質等の一般環境中における残留状況の経年変化を把握することを目的として調査を行い、「化学物質環境実態調査結果精査等検討会」、「モニタリング調査の結果に関する解析検討会」及び「POPsモニタリング検討会」においてデータの精査や解析等が行われました。

 平成27年度は、POPs条約対象物質のうち総PCB等15物質(群)に、POPs条約対象物質とする必要性について検討されている1物質を加えた16物質(群)を調査対象としました。

3.調査結果

ア.初期環境調査(調査結果は別表1のとおり)

 水質については、11調査対象物質(群)中5物質(群)(銀及びその化合物(銀として)、2,4-ジクロロフェノール、N,N-ジメチルアセトアミド、1,2,3-トリメチルベンゼン並びに有機スズ化合物)が検出されました。

 大気については、5調査対象物質(群)中3物質(群)(1-アリルオキシ-2,3-エポキシプロパン、N-ニトロソジメチルアミン及び有機スズ化合物)が検出されました。

 なお、調査結果には、過去の調査においては不検出で今回初めて検出された物質が含まれていますが、これは検出下限値を下げて調査を行ったこと等によるものと考えられます。

イ.詳細環境調査(調査結果は別表2のとおり)

 水質については、10調査対象物質中8物質(2-(2-エトキシエトキシ)エタノール、クロロエタン、ジエタノールアミン、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(別名:2,6-ジ-tert-ブチル-4-クレゾール)、N,N-ジメチルドデシルアミン=N-オキシド、1,5,5-トリメチル-1-シクロヘキセン-3-オン(別名:イソホロン)、ヒドラジン及びメチルエチルケトン)が検出されました。

 底質については、2調査対象物質(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(別名:2,6-ジ-tert-ブチル-4-クレゾール)及びN,N-ジメチルドデシルアミン=N-オキシド)共に検出されました。

 生物については、1調査対象物質を調査(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(別名:2,6-ジ-tert-ブチル-4-クレゾール))し、検出されました。

 大気については、1調査対象物質を調査し、検出されませんでした。

 なお、調査結果には、過去の調査においては不検出で今回初めて検出された物質が含まれていますが、これは検出下限値を下げて調査を行ったこと等によるものと考えられます。

ウ.モニタリング調査(調査結果は別表3-1、3-2のとおり)

 平成27年度のモニタリング調査は、従前のPOPs条約対象物質のうち5物質(群)(PCB類、ヘキサクロロベンゼン、DDT類、ヘプタクロル類及びトキサフェン類)及び新規条約対象10物質(群)に、POPs条約対象物質とする必要性について検討されている1物質(ペルフルオロオクタン酸(PFOA))を加えた計16物質(群)について調査を実施しました。

※平成27年度調査では、同時分析の可能性及び過年度調査における検出状況等を考慮して、以下の10物質(群)について調査を実施しました。その際、条約対象でない一部の異性体又は同族体を加えて調査を実施しています。

・HCH類:α-HCH、β-HCH、γ-HCH(別名:リンデン)、δ-HCH

・ヘキサブロモビフェニル類

・ポリブロモジフェニルエーテル類(臭素数が4から10までのもの)

・ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)

・ペンタクロロベンゼン

・エンドスルファン類

・1,2,5,6,9,10-ヘキサブロモシクロドデカン類

・ポリ塩化ナフタレン類

・ヘキサクロロブタ-1,3-ジエン

・ペンタクロロフェノール

                                  (斜体はPOPs条約対象外の物質)

継続的に調査を実施している物質(従前のPOPs条約対象5物質(群)及びHCH類)(統計学的な手法による経年変化の解析結果は、別表3-3~3-5のとおり)

 調査を行った全媒体(水質、底質、生物及び大気)において、全調査対象物質(群)が検出されました。なお、以下の媒体別の比較については、環境濃度の比較であり、環境リスクの比較ではありません。

 水質及び底質について平成14~27年度のデータの推移をみると、水質及び底質中のPOPs濃度レベルは総じて横ばい又は漸減傾向にあると考えられます。水質及び底質中の濃度の地域分布を見ると、例年どおり、港湾、大都市圏沿岸の準閉鎖系海域等、人間活動の影響を受けやすい地域で相対的に高い傾向を示すものが比較的多く見られました。

 生物について平成14~27年度のデータの推移をみると、生物中のPOPs濃度レベルは総じて横ばい又は漸減傾向にあると考えられます。昨年度に引き続き、総PCB等が人口密集地帯近傍の沿岸域の魚で高めの傾向を示しました。

 大気について平成14~27年度のデータの推移をみると、大気中のPOPs濃度レベルは総じて横ばい又は漸減傾向にあると考えられます。

② その他の物質(HCH類を除く新規のPOPs条約対象9物質(群)及びPOPs条約対象物質とする必要性について検討されている1物質)

 ヘキサブロモビフェニル類が生物の全検体で不検出でしたが、その他の調査を行った全媒体(水質、底質、生物及び大気)において、全調査対象物質(群)が検出されました。

添付資料

連絡先
環境省総合環境政策局環境保健部環境安全課
直通    03-5521-8261
代表    03-3581-3351
課長    立川 裕隆(内線 6350)
保健専門官 藤井 哲朗(内線 6361)
担当    松本 純一(内線 6355)

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