報道発表資料

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2016年12月09日
  • 総合政策

(仮称)姉崎火力発電所新1~3号機建設計画に係る計画段階環境配慮書に対する環境大臣意見の提出について

 環境省は、9日、千葉県市原市で計画されている「(仮称)姉崎火力発電所新1~3号機建設計画に係る計画段階環境配慮書」(株式会社JERA)に対する環境大臣意見を経済産業大臣に提出した。
 本事業は、東京電力フュエル&パワー株式会社姉崎火力発電所構内において、同社が廃止する1~4号機に代えて、本事業者が新たにLNGを燃料とする新1~3号機(総出力約195万kW)を設置するものである。
 環境大臣意見では、省エネ法に基づくベンチマーク指標の目標達成、達成状況の毎年度の自主的公表、その達成に向けた取組内容の検討及び準備書への記載、達成できないと判断した場合の事業見直しの検討、原則、電力業界の自主的枠組み参加事業者への電力供給等を求めた。
 また、経済産業省に対して、全ての発電事業者に対する確実な省エネ法に基づくベンチマーク指標の目標遵守、電力業界に対する自主的枠組み参加事業者の拡大と目標達成の取組促進、小売電気事業者に対する高度化法の遵守、省エネ法及び高度化法の指導・助言、勧告・命令を含めた措置の適切な運用等を通じた、電力業界全体の取組の実効性の確保等を求めた。

1.背景

 環境影響評価法及び電気事業法は、出力11.25万kW以上の火力発電所の設置又は変更の工事を対象事業としており、環境大臣は、提出された計画段階環境配慮書※について、経済産業大臣からの照会に対して意見を述べることができるとされている。本件は、この手続きに沿って意見を提出するものである。
 今後、経済産業大臣から事業者である株式会社JERAに対して、環境大臣意見を勘案した意見が述べられ、事業者は、意見の内容を検討した上で事業計画を決定し、事業段階の環境影響評価(環境影響評価方法書、準備書、評価書)を行うこととなる。

※計画段階環境配慮書:配置・構造又は位置・規模に係る事業の計画段階において、重大な環境影響の回避・低減についての評価を記載した文書。

2.事業の概要

 ・事業者     株式会社JERA

 ・計画位置    姉崎火力発電所(千葉県市原市)構内

 ・燃料      液化天然ガス(LNG)

 ・発電方式    ガスタービン及び汽力(コンバインドサイクル発電方式)

 ・出力      約195万kW(約65万kW × 3基)

 ・工事開始時期  平成31年(予定)

 ・運転開始時期  平成35年(予定)

3.環境大臣意見の概要

[1]前文

 本事業は、千葉県市原市の東京電力フュエル&パワー株式会社姉崎火力発電所構内において、同社が廃止する1・2号機及び3・4号機に代えて、本事業者が新たにLNGを燃料とする新1~3号機(総出力約195万kW)を設置するものである。
 地球温暖化対策については、平成27年1212日に国連気候変動枠組条約第21回締結国会議において採択された「パリ協定」が平成2811月4日に発効した。我が国は、同年11月8日に同協定を締結している。同協定が掲げる長期的目標及び今世紀後半の温室効果ガスの人為的な排出と吸収のバランスを達成すること等に我が国としても取り組む必要がある。我が国は、同協定に基づく我が国の貢献としての2030年度に2013年度比26.0%減(2005年度比25.4%減)という温室効果ガス削減目標を掲げており、これを含む地球温暖化対策計画を平成28年5月13日に閣議決定している。この温室効果ガス削減目標を着実に達成するとともに、同計画に示されているとおり、地球温暖化対策と経済成長を両立させながら、長期的目標として2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減を目指して、戦略的に取り組んでいく必要がある。
 本事業者は、現状では省エネ法に基づくベンチマーク指標(火力発電効率A指標及びB指標)の目指すべき水準の達成が見込まれる状況である。
 なお、2017年春頃に東京電力フュエル&パワー株式会社及び中部電力株式会社の既存火力発電事業の本事業者への統合に係る判断が行われることとされている。現時点では検討段階であり、ベンチマーク指標の目標達成に向けた具体的な方策や行程は十分に示されていないものの、本事業者としては、LNG火力比率の高い電源構成により、当該目標を達成していくこととしている。
 いずれにしても、目標の達成に向けた不断の努力が必要である。
 また、本事業で発電した電力の供給先は現時点で未定であるが、自主的枠組みの参加事業者を通じて電力が小売りされる必要がある。
 経済産業省においては、全ての発電事業者に対し、2030年度に向けて、確実に省エネ法に基づくベンチマーク指標の目標を遵守させること。共同実施の評価の考え方を明確化すること。また、自主的枠組みに関し、電力業界に対して、参加事業者の拡大に取り組み、目標の達成に真摯に取り組むことを促すこと。さらに、小売電気事業者に対して、高度化法を遵守させること。省エネ法及び高度化法の指導・助言、勧告・命令を含めた措置を適切に運用すること等を通じて、電力業界全体の取組の実効性を確保すること。

[2]総論

(1)本事業に伴う環境影響を回避・低減するため、必要に応じて専門家等の助言を受けた上で、適切に調査、予測及び評価並びに環境保全措置の検討を行うこと。

(2)地元自治体の意見を十分勘案し、環境影響評価において重要である住民関与についても十全を期すこと。

[3]各論

(1)温室効果ガス

1) 局長級取りまとめの「BATの参考表【平成26年4月時点】」に掲載されている「(B)商用プラントとして着工済み(試運転期間等を含む)の発電技術及び商用プラントとしての採用が決定し環境アセスメント手続に入っている発電技術」の効率を上回る高効率の発電設備を導入することとしているところ、当該発電設備の運用等を通じて送電端熱効率の適切な維持管理を図ること。

2) 省エネ法に基づくベンチマーク指標については、本設備の利用率をできる限り高くする運用を検討し、本事業者が所有する発電所全体の稼働分担を適切に行うこと等を含め、その目標達成に向けて計画的に取り組み、2030年度に向けて確実に遵守すること。その達成状況を毎年度自主的に公表するとともに、その取組内容を検討し、可能な限り、準備書に記載すること。
 ベンチマーク指標の目標を達成できないと判断した場合には、本事業の見直しを検討すること。また、今後、電気事業分野における地球温暖化対策に関連する施策の見直しが行われた場合には、事業者として必要な対策を講ずること。

3) 小売段階が調達する電力を通じて発電段階での低炭素化が確保されるよう、高度化法では小売段階において低炭素化の取組が求められていることを理解し、自主的枠組み参加事業者の現状程度のカバー率(販売電力ベースで99%超)の維持・向上が図られることを前提として、原則、自主的枠組みの参加事業者に電力を供給し、確実に二酸化炭素排出削減に取り組むこと。

4) 「2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減を目指す」との国の長期的な目標に鑑み、国の二酸化炭素回収・貯留等に関する検討結果や、二酸化炭素分離回収設備の実用化をはじめとした技術開発状況を踏まえ、今後の二酸化炭素排出削減対策について、所要の検討を行うこと。

5) 本事業を含め、事業者における長期的な二酸化炭素排出削減対策について、所要の検討を行い、事業者として適切な範囲で必要な措置を講ずること。

(2)大気環境   

1) 煙突の高さ及び配置等に関して、大気汚染物質の拡散状況、短期高濃度条件の影響について十分考慮した適切な環境保全措置を検討すること。

2) 今後、地元自治体と協議の上、公害防止協定が締結される場合にはそれを遵守するよう、最良の技術による環境対策設備を採用し、施設の適切な維持管理を図ること。

3) 微小粒子状物質(PM2.5)の予測手法及び対策に係る今後の動向を踏まえ、必要な調査、影響の予測及び評価並びに環境保全措置を検討すること。

(3)水環境

 本事業の放水口は、既存発電所の放水口を有効活用する計画としていることから、当該既存火力発電所との重畳を踏まえた予測に必要な情報の収集に努め、必要な調査、予測及び評価を行い、適切な環境保全措置を検討すること。
 また、今後、地元自治体と協議の上、公害防止協定が締結される場合にはそれを遵守すること。


(参考)環境影響評価に係る手続き

・平成28年10月25日  経済産業大臣から環境大臣への意見照会

・平成28年12月 9 日  環境大臣から経済産業大臣に意見提出 

添付資料

連絡先
環境省総合環境政策局環境影響審査室
代表   03-3581-3351
直通   03-5521-8237
室長  :大井通博 (内6231)
室長補佐:伊藤史雄 (内6233)
審査官 :谷本昌敏 (内6253)
担当  :知名光太郎(内6209)

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