報道発表資料
本事業は、JFEスチール株式会社東日本製鉄所(京浜地区)内に位置するJFE扇島火力発電所において、製鉄所で発生する副生ガスを主燃料とする自家発電設備のうち老朽化した既設1号機(13.5万kW)を廃止し、新1号機(19万kW級)に更新するものである。
環境大臣意見では、高効率コンバインドサイクル発電方式を採用した本発電設備の優先的な運用を通じて、二酸化炭素及び大気汚染物質の排出量を低減するよう取り組むこと、二酸化炭素排出量の削減に計画的に取り組み、取組内容等を可能な限り毎年度自主的に公表すること、余剰電力については、原則、電力業界の自主的枠組み参加事業者への電力供給すること等を求めた。
また、経済産業省に対して、国の目標と整合するよう、電力業界以外の所管事業者の自家発自家消費の電力に関しても各業界の実態に応じて、実効性・透明性を確保していく方策を検討すること、副生ガスを主燃料とした発電の位置づけの在り方を考慮しつつ、国の目標達成に向けて、省エネ法における共同実施の評価の考え方を明確化すること、電力業界に対する自主的枠組み参加事業者の拡大と目標達成の取組を促進すること、小売業者に対する高度化法の指導・助言、勧告・命令を含めた措置の適切な運用等を通じた、電力業界全体の取組の実効性を確保すること等を求めた。
1.背景
環境影響評価法及び電気事業法は、出力11.25万kW以上の火力発電所の設置又は変更の工事を対象事業としており、環境大臣は、提出された環境影響評価準備書※について、経済産業大臣からの照会に対して意見を述べることができるとされている。本件は、この手続に沿って意見を提出するものである。
今後、事業者であるJFEスチール株式会社には、環境大臣及び関係自治体の長の意見を受けた経済産業大臣勧告を踏まえ、法に基づく環境影響評価書の作成等の手続と環境保全措置の実施が求められる。
※環境影響評価準備書:環境影響評価の結果について環境の保全の見地からの意見を聴くための準備として、調査、予測、評価及び環境保全対策の検討を実施した結果等を示し、環境の保全に関する事業者自らの考え方を取りまとめた文書。
2.事業の概要
・名称 JFE扇島火力発電所更新計画
・事業者 JFEスチール株式会社
・計画位置 東日本製鉄所(京浜地区)内(神奈川県川崎市)
・燃料 主燃料:副生ガス、補助燃料:都市ガス
・発電方式 ガスタービン及び汽力(コンバインドサイクル発電方式)
・出力 19万kW級
・工事開始時期 平成28年(予定)
・運転開始時期 平成31年(予定)
なお、本事業は、製鉄所内で発生する副生ガスを主燃料とし、発電した電力により製鉄所内で必要とする電力の大部分を賄い、余剰電力を他事業者に供給する自家発電設備である。
3.環境大臣意見の概要
【1】前文
電気事業分野については、「日本の約束草案」等我が国の温室効果ガス削減の目標・計画を達成するため、電力業界の自主的枠組みに加え、省エネ法や高度化法等の政策的な対応措置に取り組んでいくことにより、電力業界全体の取組の実効性を確保し、温室効果ガス削減目標を達成する必要がある。
他方、自家発自家消費の電力については、「日本の約束草案」と整合的なエネルギーミックスにおける2030年度の総発電電力量及び電力由来二酸化炭素排出量(3.6億トン)には含まれているものの、電気事業分野の政策的な対応措置の対象にはなっていない。本事業者は、日本鉄鋼連盟が策定した低炭素社会実行計画の下で温室効果ガス排出削減に取り組むことを示しており、鉄鋼業界においても、自家発自家消費の電力に関し、エネルギーミックスとの整合性を確保しつつ、実効性・透明性を確保する取組が進められることが必要である。
本事業は、製鉄所から発生する副生ガスを燃焼放散せずにエネルギー資源として有効利用する発電設備であり、高効率のコンバインドサイクル発電方式の採用等により二酸化炭素及び大気汚染物質の排出量は、製鉄所の発電設備全体として現状と比べて低減すると見込まれており、BATの考え方に基づき確実に最大限の低減がなされるよう施設の運用・維持管理がなされる必要がある。
また、本事業者は自家発自家消費の発電所を多数保有していることから、地球温暖化対策計画に記載のある国の2030年度の電力由来二酸化炭素排出量の達成に向けて、高効率な発電設備の集中的な稼働と老朽化した設備の更なるリプレース等による発電効率の維持向上等により、二酸化炭素排出量の削減に努めることが求められる。
経済産業省においては、地球温暖化対策計画に記載のある国の2030年度の電力由来二酸化炭素排出量及び地球温暖化対策計画と整合するよう、電力業界以外の所管事業者が行う自家発電設備も含めて、各業界の実態に応じて、実効性・透明性を確保していく方策を検討すること。また、副生ガスを主燃料とした発電の位置付けの在り方を考慮しつつ、省エネ法における共同実施の評価の考え方を明確化すること。自主的枠組みに関しては、電力業界に対して、参加事業者の拡大に取り組み、目標の達成に真摯に取り組むことを促すこと。さらに、本事業者の供給先を含む小売電気事業者に対して、高度化法を遵守させ、指導・助言、勧告・命令を含めた措置を適切に運用すること等を通じて、エネルギーミックスを達成するよう、電力業界全体の取組の実効性を確保すること。
【2】総論
本事業の工事の実施及び施設の供用に当たっては、温室効果ガスの排出削減対策をはじめ、大気環境及び水環境の保全対策、貴重種である植物の移植等の環境保全措置を適切に講ずること。
【3】各論
(1)温室効果ガス
1) 本事業の発電設備は、高効率コンバインドサイクル発電方式を採用することとしており、本発電設備の優先的な運用を通じて、最大限、現状と比べて二酸化炭素排出量を低減するよう取り組むこと。併せて、送電端熱効率の適切な維持管理を図ること。
2) 本事業の発電設備は自家発電設備であり、発電した電力は主に自家消費するため、省エネ法上の「電力供給業を行っている工場の火力発電設備」には該当しないことを鑑み、 1)を含めた二酸化炭素排出量の削減に向けた取組を計画的に進めるとともに、評価書以降もその取組内容及び状況を可能な限り毎年度自主的に公表すること。
また、本事業者全体で、副生ガスを更に有効利用することにより一層の二酸化炭素排出量削減を実現する対応を検討し、適切な範囲で実施するとともに、今後、地球温暖化対策に関連する施策の見直しが行われた場合には、必要な対策を講ずること。
3) 本事業の発電設備は省エネ法上の「電力供給業を行っている工場の火力発電設備」には該当しないが、売電割合の増加等により該当することとなった場合には、省エネ法の枠組みに従って適切に二酸化炭素排出量削減に取り組むこと。
4) 他事業者に供給する余剰電力について、高度化法では小売段階において低炭素化の取組が求められていることを理解し、原則、自主的枠組みの参加事業者に電力を供給し、確実に二酸化炭素排出削減に取り組むこと。
5) 「2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減を目指す」との国の長期的な目標に鑑み、国の検討結果や、二酸化炭素分離回収設備の実用化をはじめとした技術開発状況を踏まえ、今後の二酸化炭素排出削減対策について、所要の検討を行うこと。
6) 事業者における長期的な二酸化炭素排出削減対策について、所要の検討を行い、事業者として適切な範囲で必要な措置を講ずること。
(2)大気環境
1) 事業者の所属するかわさき自動車環境対策推進協議会における取組を推進するとともに、施設の稼働に当たっては、大気汚染物質排出量の少ない発電設備の優先的な稼働及び排煙脱硝装置等の維持管理の徹底等の大気汚染物質排出削減対策を図ること。
2) 微小粒子状物質(PM2.5)に係る最新の知見を踏まえ、追加の環境保全措置を含めた適切な対応を行うこと。水銀については、集じん装置の適切な維持管理により、可能な限り取り除くこと。
(3)水環境
新設される排水処理設備等により水質汚濁物質排出量を抑制するとともに、必要に応じて追加の環境保全措置を含めた適切な環境保全措置を講ずること。
(4)植物
発電設備計画地内に貴重種であるクゲヌマランが確認されたことから、移植及びモニタリングを行うとともに、必要に応じて追加の環境保全措置を含めた適切な対応を行うこと。
以上について、その旨を評価書に記載すること。
(参考)環境影響評価に係る手続き 【配慮書の手続き】 ・公表 平成26年9月5日 ~ 平成26年10月6日 ・神奈川県知事意見提出 平成26年11月7日 ・東京都知事意見提出 平成26年11月7日 ・経済産業大臣意見 平成26年11月5日 【方法書の手続き】 ・縦覧 平成27年3月10日 ~ 平成27年4月9日(住民意見 7件) ・神奈川県知事意見提出 平成27年8月12日 ・東京都知事意見提出 平成27年8月11日 ・経済産業大臣通知 平成27年8月26日 【準備書の手続き】 ・縦覧 平成28年2月12日 ~ 平成28年3月14日(住民意見 14件) ・神奈川県知事意見提出 平成28年8月17日 ・東京都知事意見提出 平成28年8月10日 |
添付資料
- 連絡先
- 環境省総合環境政策局環境影響審査室
電話 03-3581-3351(代表)
03-5521-8237(直通)
室長 :大井通博 (内6231)
室長補佐:伊藤史雄 (内6233)
審査官 :谷本昌敏 (内6253)
担当者 :知名光太郎(内6209)