報道発表資料

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1999年08月03日

平成10年度環境分析統一精度管理調査結果(ダイオキシン類)について

  1. 境庁では、近年のダイオキシン類をはじめとした超微量有害化学物質による環境汚染への関心の高まりを受けて、平成10年度にダイオキシン類を対象として、環境測定分析統一精度管理調査を行った。今般平成11年度環境測定分析検討会において、結果が取りまとめられた。

  2. 地方公共団体及び民間の分析機関計62機関の回答があり、ばいじん試料と底質試料を対象として調査を行った。その結果、両試料ともに統計的な異常値等を除外した後の各分析機関の間のTEQのばらつきは、過去に農薬等について実施した調査結果等と比べても相応なものであった。

  3. 環境庁としては、今後、各分析機関にこの結果をフィードバックするとともに、分析実施上の留意点を周知する予定。併せて平成11年度以降、ばいじん、底質以外の試料を用いた調査を行うことによりさらに分析精度の向上を図ることとしている。

(参考)環境測定分析統一精度管理調査:
 環境庁が昭和50年度より行っている調査で、環境測定分析に従事する諸機関が、均一に調製された環境試料を指定された方法等により分析することによって得られた結果を検討、評価することにより、環境測定分析の精度の向上を図るものである。

 TEQ

ダイオキシン類等の量をダイオキシン類の中で最強の毒性を有する2,3,7,8-四塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシンの量に換算した量として表していることを示す記号。
1.調査の経緯等

 環境庁では、昭和50年度より環境測定データの信頼性確保のために、環境測定分析検討会及び環境測定分析統一精度管理調査部会を設置して、様々な環境汚染物質を対象とした環境測定分析統一精度管理調査を行ってきた。
 近年注目の高いダイオキシン類は、低濃度での毒性が問題となっているにもかかわらず、その分析技術についての全国統一的な調査はこれまで行われていなかった現状がある。 このため、平成10年度に環境測定分析統一精度管理調査部会内に、ダイオキシン類に関する検討のため、「超微量有害化学物質検討分科会」を設置した。
 本検討会では、今般、平成10年度に実施したダイオキシン類の「ばいじん」、「底質(海底質)」試料に対する国内の公的及び民間分析機関の分析結果についての報告書を取りまとめた。

2.調査の目的

 本調査は、環境測定分析に従事する諸機関が、均一に調製された環境試料を指定された方法、又は任意の方法により分析することによって得られた結果から、前処理条件、測定機器の使用条件等によるデータの偏差その他分析実施上の具体的な問題点等を調査することにより、

  1. 全国の分析機関におけるデータの偏差に関する実態を把握する。

  2. 参加機関の分析者が自己の技術を客観的に認識して、環境測定分析技術の一層の向上を図る契機とする。

  3. 各分析法についての得失を明らかにして、分析手法、分析技術の改善を図る。

 これらを踏まえ、環境測定分析の精度の向上を図り、環境測定データの信頼性の確保に資することを目的とするものである。

3.調査の結果

 分析は実施の際に各分析機関に指定した方法注1)により行うこととした。
 参加申し込み機関は、公的、民間の分析機関合わせて75機関あり、このうち回答のあった機関は62機関であった(表1)。
 両試料のTEQ注2)のヒストグラムを示す(図1、2)。また、異常値を棄却後注3)、TEQについて基本的な統計量(平均値、室間精度(CV)注4)、最小値、最大値及び中央値)を算出した(表2、3)。
 まず各試料についての結果概要を以下に示す。

(1) ばいじん試料
  Grubbsの方法によって棄却される異常値はなく、平均値25.9ng-TEQ/g、室間精度(CV) 22.7%であり、相応のばらつきと考えられる。平均値と中央値はほぼ一致しており、ヒ ストグラムにおいてはほぼ平均値を中心とした分布となっていた(図1)。
(2) 底質試料
  異常値の5回答を除くと、平均値94.6pg-TEQ/g、室間精度(CV)19.2%であり、ばいじん試料より良好な精度であった。また、平均値と中央値はほぼ一致しており、概ね平均値を中心とした分布となっていた(図2)。
 注1)分析方法

ばいじん試料については、「有害大気汚染物質測定方法マニュアル」(平成9年10月、環境庁大気保全局大気規制課)等に準じて分析した。底質試料については、「ダイオキシン類に係る底質調査暫定マニュアル」(平成10年7月、環境庁水質保全局水質管理課)等に準じて分析した。
 注2)異常値等の棄却 両試料の結果とも、分析結果については次のように異常値を棄却した。((イ)、(ロ)合わせて「異常値等」とした)
(イ) 「ND」「○○以下」又は「0」で示されているもの(以下、「ND等」という)を除いた後、
(ロ) Grubbsの方法により、両側確率5%で棄却されるもの(以下、「異常値」という)を棄却した。
 注3)室間精度 同一試料の測定において、試験室が異なっている測定値の精度をいう。CVは、変動係数で精度を表す。
4.検討員名簿

(1)平成11年度環境測定分析検討会検討員

  (五十音順、敬称略、◎印は座長)
  氏 名 所 属
  大嶋 和雄 茨城大学教育学部教授
  大槻  晃 東京水産大学教授
  佐藤 寿邦 横浜国立大学工学部教授
  杉本 仁彦 社団法人 日本環境測定分析協会水質部会長
  滝澤 行雄 国立水俣病総合研究センター所長
  武田 明治 日本大学生物資源学部教授
  土屋 悦輝 東京都立衛生研究所環境保健部長
  中村 信也 静岡県環境衛生科学研究所長
  森田 昌敏 国立環境研究所地域環境研究グループ統括研究官
山崎 慎一 東北大学農学部教授

(2)平成11年度環境測定分析統一精度管理調査部会検討員

  (五十音順、敬称略、◎印は座長)
  氏 名 所 属
  伊藤 裕康 国立環境研究所化学環境部主任研究員
  稲葉 一穂 国立環境研究所水土壌圏環境部主任研究員
  今井  登 地質調査所地殻化学部地球化学研究室長
  織田 久男 農業環境技術研究所資材動態部肥料動態科微量要素動態研究室長
  冨永  衞 資源環境技術総合研究所統括研究調査官
  西村 哲治 国立医薬品食品衛生研究所環境衛生化学部第三室長
  牧野 和夫 国立環境研究所環境研修センター主任教官
山崎 慎一 東北大学農学部教授
  山本 貴士 国立環境研究所地域環境研究グループ研究員

(3)平成11年度環境測定分析統一精度管理調査部会超微量有害化学物質検討分科会検討員

  (五十音順、敬称略、◎印は座長)
  氏 名 所 属
  青笹  治 摂南大学薬学部助手
伊藤 裕康 国立環境研究所化学環境部主任研究員
  今川  隆 資源環境技術総合研究所水圏環境保全部主任研究官
  鈴木 規之 金沢工業大学工学部講師
  松田 秀明 愛媛大学農学部助手

添付資料

連絡先
環境庁企画調整局環境研究技術課
課       長 :勝又  宏(内6240)
 試験研究調整官 :松井 佳巳(内6241)
 主       査 :伊藤 恒之(内6244)
 担       当 :岸  正広(内6246)